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山下和也

Yamashita Kazuya

作家インタビューを掲載しました。>>こちら

m@p standard
  • 初回封入内容は4種類の中から1点先着でお選びください。 上段左から《世以書 彩書経A》《世以書 彩書経B》下段左から《世以書 金銀混書経A》《世以書 金銀混書経B》

  • 角度や光と影の変化で金や銀の輝きが変化し、文字と絵の画面上の関係性や見え方が変化します。《世以書 金銀混書経B》

  • 初回お届けイメージ|光筆切 題箋付きタトウ ※作品1点につき1枚。題箋は作品と同じ手製の料紙を使用しています。

  • 光筆切《世以書 金銀混書経B》127×116㎜    中国雁皮紙、手漉き楮紙、金箔(砂子、切箔、ちぎり箔)、金属泥、本銀泥、墨、天然岩群青、紙染

  • 光筆切《世以書 金銀混書経》部分

  • 光筆切《世以書 彩書経A》127×116㎜   中国雁皮紙、手漉き楮紙、金箔(砂子、切箔、ちぎり箔)、金属泥、墨、天然岩絵具、棒絵具、紙染

  • タトウ、合紙、作品、台紙で1セットになります。

  • 初回作品サイズは各127×116㎜。台紙には四つ角の差し込みのみで糊付けしていません。

  • 光筆切《世以書 彩書経》 部分

日本画家であり東洋絵画修理技術者として活動する山下は、平安~鎌倉時代の優れた和様・かな書の筆跡を観賞用に仕立てた古筆切(こひつぎれ)から着想を得て、「光」をテーマとした「光筆切(こうひつぎれ)」のシリーズをお届けします。初回は平家納経などの装飾経から着想し、旧約聖書の創世記第1章冒頭「天地創造」を万葉仮名混じりで写経した「世以書 彩書経」と「世以書 金銀混書経」の2種類の中からお選びいただけます。

 

ロット:3

販売価格:¥55,000(税・送料込み)


古筆切(こひつぎれ)から着想した作品を制作します。

 

古筆とは一般的には古人の筆跡や画のこと。また日本書法史では平安~鎌倉時代にかけて書かれた、優れた和様、かな書の筆跡を言います。それを観賞用に手鑑や掛物に仕立てるために切断したものが古筆切(こひつぎれ)です。

 

今回、「光」をテーマとした「光筆切(こうひつぎれ)」と名付けたシリーズをm@pで試みます。

 

 

■初回封入内容

・古筆切から着想した作品「光筆切」  《世以書 彩書経》または《世以書 金銀混書経》 1点

 

初回は平家納経などの装飾経から着想を得た作品をお届けします。旧約聖書の創世記第1章冒頭「天地創造」を万葉仮名混じりで写経しました。染色や金箔、金属泥で加飾した料紙を作成し、芦手絵を施しています。

文字を金属泥や天然岩絵具で書いた華やかな「世以書 彩書経」と、文字を本銀泥で書き、経年で輝きが変化してゆく「世以書 金銀混書経」の中から1点お選びください。

 

 

■2回目封入内容

・古筆切から着想した作品「光筆切」  1点

・初回作品に対するテクスト

 

■3回目封入内容

・古筆切から着想した作品「光筆切」  1点

・2回目お届け作品に対するテクスト

 

■4回目封入内容

・古筆切から着想した作品「光筆切」  1点

・3回目、4回目お届け作品に対するテクスト

 

*作品は手漉楮紙で2層裏打しています。

*シート作品です。  *額装は別途ご相談ください。

*作品1点毎に台紙、合紙、題箋付きタトウが付きます。

 

m@p premium
  • 初回お届け作品 参考画像《松風》300×985㎜(作品サイズはシートのサイズではありません。)   罔両画、手漉き三椏紙、手漉き楮紙、松煙墨、油煙墨

  • 2回目お届け作品 参考画像《須磨》300×985㎜(額装1)   罔両画、手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨

  • 3回目お届け作品 参考画像《松風(弐)》300×985㎜(額装2)   罔両画、手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨

  • 4回目お届け作品 参考画像《玄象》300×985㎜(作品サイズはシートのサイズではありません。)   罔両画、手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨

これまでに山下が取り組んできた罔両画(もうりょうが)の作品の中から、《松風》 《松風(弐)》 《須磨》 《玄象》 の4点を新たに描き下ろします。極度に薄い墨と僅かな筆致で描かれた罔両画は、狩野派をはじめ、長谷川等伯、俵屋宗達など、日本の水墨画史上に多大な影響を与えたものです。和紙の上の消え入りそうな画は、自然の風景がそうであるように、外光の変化に応じてその在り方を変容させます。

 

ロット:1

販売価格:¥440,000(税・送料込み)

 

罔両画(もうりょうが)の作品の中から、《松風》 《松風(弐)》 《須磨》 《玄象》 の4点の作品をお届けします。

現行のサイズ300×985㎜とは異なり、300×480㎜のサイズであらたに描き下ろします。

 

*参考画像の作品はすべて300×985㎜のサイズです。表記は本紙サイズで裏打紙や額のサイズを含んでいません。画像のシートのサイズは本紙サイズ+縦横100~150㎜程あります。

 

─罔両画(もうりょうが) ─

罔両画(Ghost style painting)は、中国南宋時代に禅僧の余技として生まれた絵画のひとつであり、極度に薄い墨と僅かな筆致で描かれた消え入るような見え方から罔両(魑魅魍魎、精霊)と名付けられるものです。罔両画やその系譜にある牧谿(もっけい/生没年不詳。13世紀後半、中国南宋末元初の僧)の作品は、室町時代の足利将軍のコレクションである東山御物に多く所蔵されるなど、狩野派をはじめ、長谷川等伯、俵屋宗達など、日本の水墨画史上に多大な影響をあたえたものですが、以降600年に渡って主に取り組む作家はいないとされています。私は罔両画を『「幽玄」や「余白」といった日本の美意識を感じることが出来るものであり、東アジアや日本美術史、室町文化やその美意識を再考するうえで、とても重要な絵画』と考え、水や素材の持つ性質や現象を活用して描くオリジナル技法へと展開しています。

 


作家情報

山下 和也|Yamashita Kazuya

日本、中国の古典絵画の模写と文化財修復で培った技術と経験をもとに、日本の歴史、文化、思想を顧みながら、伝統芸術と現代芸術を捉えなおすことを主眼に作品、絵画を制作する。

 

kazuyayamashita.com

 

作家略歴

 

1978年 大阪生まれ
2002年 京都嵯峨芸術大学専攻科二次元表現コース古画研究工房修了
2003年 京都嵯峨芸術大学附属芸術文化研究所 研究生
2003年~2016年 国宝修理装潢師連盟、㈱坂田墨珠堂にて文化財修復に従事
2016年 SunSui.設立 神戸に移住
2018年 破墨プロジェクト* 開始
現在 国宝修理装潢師連盟外部技術登録者(専門:東洋絵画)
C.A.P.(芸術と計画会議)メンバー。2017年~KOBE STUDIO Y3(オープンスタジオ)に参加

*破墨プロジェクト

日本画家の山下和也、俳優・神楽舞手の高安美帆、ファッションデザイナーの隅野由征、美術家の柴山水咲の4名を中心に、8世紀に行なわれていた、現在でいう「アクション」や「パフォーマンス」を横断する墨を用いた芸術表現「破墨」について考察し、現代において再構築しようと試みる異分野共同プロジェクト。

 

facebook:https://www.facebook.com/habokuproject/

 

 

おもな個展

2019年 私たち behind our perspective(Gallery PARC /京都)
*アーティスト・トーク:聞き手=はがみちこ(アート・メディエーター)
うつろう光、しずかな影(LightsGallery / 愛知)
2018年 Ink landscape 2008-2017(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
2017年 水墨画ー淡墨と余白の美(無印良品グランフロント大阪店 / 大阪)
2016年 松風(雅景錐 / 京都)
2015年 松風(雅景錐 / 東京・雅景錐 / 京都)
2013年 Relation(雅景錐 / 京都)
2012年 寒山拾得(雅景錐 / 京都)
2011年 山下和也展 絹に描く3(数寄和 / 東京、数寄和大津 / 滋賀)
2010年 mirror image(名芳洞blank / 愛知)

おもなグループ展

2020年 六甲ミーツアート2020 (旧六甲スカイヴィラ迎賓館/兵庫)*C.A.P.として参加
破墨プロジェクト ONE DAY(KOBE STUDIO Y3別館/兵庫)
「バインド!」(KOBE STUDIO Y3 /兵庫)*「絵画のひみつ/三つのアリア」を企画・展示
2019年 C.A.P.25周年記念 私と私たち(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫) 
アーティスロングの魔法 (Gallery ARTISLONG / 京都)
See Saw Seeds Documents (KOBE STUDIO Y3 / 兵庫) 
C.A.P.サロン (KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫)
破墨プロジェクトExhibition (KOBE STUDIO Y3 / 兵庫) 
小丸屋住井 京うちわの世界展 (銀座三越 / 東京)
KAVCアートジャック (神戸アートビレッジセンター / 兵庫) *破墨プロジェクトで参加
2018年 日本水墨画大賞展2018 (尼信会館 / 兵庫) *推薦者/村田隆志(大阪国際大学准教授)
Open Studio monthly YYY3 (KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
C.A.P.サロン (KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫)
See Saw Seas Effect “Moi Moi Konnichiwa”(Titanik gallery/フィンランド)
2017年 OPEN STUDIO⇔OPEN ARTIST (KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
2016年 感錐2016 (アートスペース感 / 京都)
2015年 速度の表面 (雅景錐 / 東京)
2013年 mujikobo contemporary×gimlet contemporary (mujikobo / 神奈川)
黒の美学-前衛と寫実 (雅景錐 / 京都)
2012年 錐十字 (雅景錐 / 京都)
2010年 春のお花見づくし (榎邸 / 滋賀)
2007年 日本画滅亡論 (中京大学アートギャラリー・Cスクエア / 愛知)
2005年 日本画ジャック (京都文化博物館 / 京都)

イベント / ワークショップ

2020年 トークイベント「破墨プロジェクトってどうですかね?」(KOBE STUDIO Y3別館/兵庫)
2019年 ヒトコマパルク「破墨プロジェクトってなんですかね?」(Gallery PARC / 京都)*ゲスト/大槻晃実(芦屋市立美術博物館)
2018年 国際研修『ワークショップ「紙本・絹本文化財の保存と修復2018」 』(ベルリンアジア美術館 / ドイツ)
ワークショップ「日本画をモノマネする 」(神戸アートビレッジセンター / 神戸)
2017年 トークイベント「表現者たちのまなざし」 (無印良品グランフロント大阪店 / 大阪)
トークイベント「水墨表現の魅力ー画家と美術史家」 (無印良品グランフロント大阪店 / 大阪)
国際研修『ワークショップ「紙本・絹本文化財の保存と修復2017」 』
ワークショップ「日本画の修復家に弟子入り!」 (KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
2016年 講演「日本画の古典からつくられる未来」 (京都紫野ロータリークラブ例会 / 京都)
ワークショップ「玉堂に倣うー模写で知る浦上玉堂の魅力」 (千葉市美術館 / 千葉)
2015年 国際研修「JAICA 大エジプト博物館保存修復センタープロジェクト フェーズ2 」
2002年 ワークショップ「にほん画に挑戦!」 (京都市学校歴史博物館 / 京都)
2002年〜2008年 ワークショップ「日本画運筆教室」 (京都市学校歴史博物館 / 京都)

レジデンス

2018年 See Saw Seas Effect “Moi Moi Konnichiwa”(ARTE ry/フィンランド)

受賞 / 助成

2020年 神戸市民文化振興財団 「頑張るアーティスト!チャレンジ事業」補助金(破墨プロジェクトPublish #1)
2019年 神戸文化支援基金助成(破墨プロジェクト記録誌作成事業)
2018年 UNKNOWN ASIA 2018 Reviewer Prize / 鈴木結加里賞、松尾惠賞
日本水墨画大賞展2018年  サントリー賞
2003年 嵯峨美術短期大学(現・嵯峨美術大学)卒業制作展  教育後援会奨励賞

おもな執筆

2020年 冊子「破墨プロジェクト」 発行/破墨プロジェクト 編集/櫻井拓 デザイン・印刷設計/芝野健太
2018年 報告書『ワークショップ 「紙本・絹本文化財の保存と修復2018」 』
紙本・絹本文化財の材料と技法ー水墨画ーpp.18-23 発行 / 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
2017年 報告書『ワークショップ 「紙本・絹本文化財の保存と修復2017」 』
紙本・絹本文化財の材料と技法ー水墨画ーpp.18-31、水墨画pp.32-37 発行 / 独立行政法人国立文化財機構 東京文化財研究所
2009年 寄稿「日本画のいろは」 美術屋百兵衛第9号 pp.126-137 発行 / 麗人社

パフォーマンス

2019年 shibayamashitakayasu.1~4(KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫) *破墨プロジェクト
yamashitakayasumimo(KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫) *破墨プロジェクト
yamashitakayasumino.5(KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫) *破墨プロジェクト
2018年 yamashitakayasumino.1~4(KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫) *破墨プロジェクト
Moi Moi Konnichiwa Live drawing(Titanik Gallery / トゥルク) *美術家・池原悠太と共作
LIVE DRAWING DAY (KOBE STUDIO Y3 / 兵庫) *美術家・池原悠太と共作
2005年 Live Ink painting(京都文化博物館/京都) *日本画ジャック展イベント

おもな企画

2020年 破墨プロジェクトPublish #1 *印刷物の作成を起点とした活動
2019年 公募企画ヒトコマパルク「破墨プロジェクトStudyシリーズ8.9『破墨プロジェクトって何ですかね?』」(Gallery PARC /京都)*ゲスト=大槻晃実(芦屋市美術博物館)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.10「篠田桃紅-伝統的美意識の現在形」(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.10「篠田桃紅-伝統的美意識の現在形」(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー「破墨プロジェクトstudyシリーズ.9〈演劇のつくり方―「少年王國記」から〉(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.8「奈良の墨運堂(墨)と博文堂本舗(筆)をたずねて」(株式会社墨運堂 / 奈良)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.7「書画芸術を支えるもの-文房四宝の底力」(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.6〈戦後前衛書から探る「美術」の周縁〉(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)yamashitakayasumimo(KOBE STUDIO Y3 別館 / 兵庫) *破墨プロジェクト
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.5「神楽」(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
2018年 ワークショップ『破墨プロジェクトstudyシリーズ.4「カットソー 』(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.3〈「具体 ー東洋と西洋のはざまに〉』(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー『破墨プロジェクトstudyシリーズ.2「破墨の表現力ー現代芸術へのサジェスチョン 』(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)
レクチャー&ワークショップ『破墨プロジェクトstudyシリーズ.1「水墨画材料のレクチャーと体験 』(KOBE STUDIO Y3 / 兵庫)

クライアントワーク

2019年 「小丸屋住井うちわ」掲載用うちわ絵制作(小丸屋住井/京都)
2017年 花曼荼羅天井画板絵プロジェクト(大覚寺蓮華院/京都)
株式会社箔一40周年記念あぶらとり紙美人画原画制作(株式会社箔一/石川)
*本店店舗デザイン、ふるや紙パッケージ、40周年キャンペーンイベント、Web広告に使用”
Pampshade 制作工程イラスト原画(Pampshade/兵庫)
2005年 店舗用墨画制作(Café Branche /滋賀)
いけばな稽古場襖絵十二面(榎邸/滋賀)
 

個展「私たち behind our perspective」展示風景

個展「私たち behind our perspective」展示風景

個展「私たち behind our perspective」展示風景

個展「私たち behind our perspective」展示風景個展「私たち behind our perspective」展示風景

(2019, Gallery PARC)

作品画像

《普賢新生菩薩》
2007
手織絵絹、墨染楮紙裏打、天然岩絵具、金銀箔、金銀泥、裏彩色、裏箔、切箔 他 
1380x600㎜

作品画像

《Relation》
2007
手織絹、松煙墨、油煙墨、天然岩絵具、金銀泥 他
1400x705㎜

作品画像

《拾得》
2007
老灰紙、松煙墨、油煙墨
680x350㎜ 
撮影:佐藤昌也

作品画像

《寒山拾得》
2007
罔両画、老灰紙、松煙墨、油煙墨
680x350㎜ 
撮影:佐藤昌也

作品画像

《玄象》
2019
罔両画、手漉三椏紙、松煙墨、油煙墨
302x985㎜
撮影:麥生田兵吾

作品画像

《Valo》
2019
中国雁皮紙、松煙墨、油煙墨、特殊インク
360x1400㎜

 

 

作家インタビュー

 

─[m@p]について

封筒で、4回に分けて時間をおいて届くというプロセスが、展覧会とは違ったかたちであり、アーティスト側としても、それを体験する側としても、ひとつの体験として面白いですよね。封筒が届いて、それを開けて、手にしてみるという一連の動きがあり、そこに3ヶ月おきという時間軸もある。そういった流れの中で何ができるのかということは、今のような状況下での一つの興味深い取り組みだと思います。 ただ、難しいと思うこともありましたね。買うとしても実物を見ることができない、言ってみれば先行投資です。作品のひとつひとつの値段で考えるとお得感はあるけれど、見てもいないものを買うというリスクがあります。ただ、私は、ものを買うということだけではなくて、その体験を買うというように捉えたいと思っています。だから、何かそういった体験、手に取れるというサイズやその小ささということが、プランを考える上でのポイントにはなりましたね。

 

 

─ サイズを制限と感じられる作家もいらっしゃいましたが、その点はいかがですか?

私はどちらかというと制限や制約は、それを機に「では何をしよう」といろんなものを結びつけていくので。むしろこういう条件がある中で何ができるかを楽しんでいます。

 

 

─ スタンダードプランにある「古筆切」というのは?

古筆切はコレクターアイテムとも言えるかもしれません。いわゆる書や手紙を鑑賞するというのがありますよね。昔の人は、「古筆切帖」というように折本に貼り付けて楽しんでいたんです。「切」とあるように、切断されたものなので数も限られています。例えば元々巻物だったものやお経の中の数行を切り取ったものです。字を読むというよりは文字を鑑賞したり、様々な技法で装飾が施された紙を見て楽しむというもので、掛け軸にするなど、様々な種類があります。

 


─ 書かれている文字の意味などに重点を置くわけではなく、視覚的なものや手触りといったものを楽しむものですか?

だいたいは数が限られているので、例えば「ここの文字や文章の内容がいい」と選ぶことができる人は幸運なのではないでしょうか。文字を読むのではなく見て楽しむ、そして料紙装飾など美しいものがたくさんあるので、単に文字を愛でるというよりは、文字と紙の装飾技法やその組み合わせを楽しむものでもあります。

 

─ 今回は光をテーマとした「光筆切」というシリーズです。

普段の作品でも、影や光をモチーフとして描いているということもあれば、現象的に生かすこともあります。元々コロナ以前から光というテーマを扱いたいと思っていたこともあります。

 

ポストに投函されるというプロジェクトなので、ふと和歌を送るとか、かな書や料紙装飾のことを思い起こしたんです。昔の人は、かな書で和歌を書いて送るということをやっていたので。 そこから、サイズの小ささも含めて、美しい紙が送られてくるというのがいいなと思ったんですよね。通常の展覧会での鑑賞だと壁にかけてある作品をみることになりますが、[m@p]の場合は手に持ってみるという鑑賞体験なので、封筒を開けて、開いた時に、そこにふわっと光が入ったりする、そういった行為や時間をイメージしながら考えました。

 

そして、4回に分けて、それぞれ違うタイプの光を描こうと思いました。初回は「世以書」です。これは聖書を万葉仮名で書いています。旧約聖書の天地創造の場面は冒頭の「光あれ」という言葉が有名ですよね。初回なので、その始まりをモチーフにしました。料紙装飾をする際、モチーフとしては平家納経などの装飾経を参考にしたんですけど、平家納経はいわゆる仏教ですが、今回は文章の内容がキリスト教。一生懸命書いているうちに隠れキリシタンのような気持ちになりましたね。以前、興味があって調べていたこともあり、隠れキリシタンの美術、例えば仏像の裏を見るとキリスト像があるといったものなどを思い起こしていました。

 

2回目以降は、光というテーマは変わりませんが、別のモチーフになります。使う素材も色合いも変わります。宗教的な光の世界から続いていく中でもう少し日常の中にある光であるとか、光自体も表現として変化していきます。料紙装飾技法を起点としていますが、文字や書画という題材は、自分の取り組みの中でも気になっているので、小さいサイズの中ですがいろいろと展開していきたいと考えています。

 

作品にまつわるテキストも時差をつくって、回をずらして送ります。私の作品は背景に様々な日本美術のコンテクストを含めているのですが、情報で人はものを見たり判断したりするので同時に送らず、しばらく見て「これなんだろうな」というように向き合ったりぼーっとみたり考えたり触ったりしていただきたいですね。触れるというのが今回のプロジェクトの良さだと思いますし、手のひらサイズなので色々な角度で、色々な光のもとでみると表情も変化します。手のうちに作品があるという体験と状況がいいなと思っています。日本画は複合的なマテリアルがあるので、光や影の状況で見え方が変化します。初回のものも金銀泥や箔を使っているので、文字が前に出てきたり、絵が前に出てきたり、状況によって変化します。そういった楽しみ方もできますよね。触覚的なものやマテリアルは画像だとなかなか伝わりにくく難しいところもありますが、距離が発生することも、[m@p]のひとつの特徴だと思います。

 

 

─ プレミアムについては罔両画の作品ですが、既存の作品ではなく描き下ろしになるのですね。

そうです。使っている紙の素材はいつもと同じ手漉きの紙ですが、それを4分割したサイズで描きます。その経験があまりなくて実は難しくもあります。いつも余白の質を考えているので、余白が狭まってくると。どういうものをつくるかが大きく変わりますね。

 

4点とも自分が住んでいる地域の須磨を舞台とする能の世界、古典文学がひとつのモチーフになっています。ただ、古典の世界でありながら、今僕が日常で生活している世界とつながっています。それぞれのシリーズは何回もモチーフとして描いていますが、その時その時の体験を経たり、ものの感じ方や見え方が変わると、空間や線や色々なことが変化していくんです。 今こういう状況になって外に出られない時に、近くの海であるとか、まさにそのモチーフでもある v風景を散歩する時間がいつもより多くなるんですが、そういった中で海を見ていても違う気持ちが起こってきます。ですので、古典の世界と自分の日常を反映する景色だと思っているんですよ。
今この時期に描き下ろすので、4点まとめて持つことでつながってくる景色や見えてくるものも多いと思います。また4点ですので、春夏秋冬といった季節もめぐるようになっています。

 

実物は、日によって、ものすごく見える日と今日は全然見えない日というのがあると思います。こんなところに線があったかなと思う時もあると思います。スタジオだと日中は自然光で見ているので、どんどん変化します。同じように見えることはほぼないですね。見方がひらかれているというか、その時々で気になるところの見え方が変わってくるというか。光の状況や見る距離で変化するので、家の中でもどのような状況で見るかによって全然違うと思います。楽しみですね。

 

 

─ 気になる作家について

林葵衣さんは、購入者と制作者がやりとりをするという、この企画でないとなかなかできないことを考えていることと、この非接触・ソーシャルディスタンスという時代に、接触型の作品を送るということが面白いなと思いました。あとは来田広大さん。外出自粛中に山や海に行っていたこともあり、山に登った体験をどういうふうにアウトプットするのかというのは個人的には興味深いですね。[m@p]の面白さのひとつに、購入者との関係が1年に渡って繋がっていることがあると思います。お二人とも、移動や接触という今難しいことがテーマになっているというのが面白いですね。

 

 

 

空白