2019年の個展が記憶に新しい山本聖子は、[m@p]で『White Air』という新しいシリーズを展開する。これは先の個展でアプローチした「社会の中に可視/不可視の状態で存在するフレーム化された空気」に焦点を充て、ここから山本の取り組む新シリーズとなるものです。制度としてのフレーム(=額)をマテリアルに展開するこのシリーズは、1年・4回に渡る発表ごとに、作家自身も予期しない進化を見せることになるだろう。それは、何よりこれからの1年が「変化する/しない」の狭間に私たち自身が揺らぐことになるだろうから。現在進行形だからこそ、購入者自身の体験が重ねられるこの新シリーズは、ギャラリーでの作品体験とは違った鑑賞の魅力を知ることができる。
ロット:1
販売価格:
¥253,000(税・送料込)受付終了
White Air
私が育ったのは1970年の大阪万博に前後して建設されたニュータウンだ。
あらゆるものが完備され人々が何不自由なく生活できる、いわば当時の理想都市でありながら、そこで感じていた空気は、なぜか漂白されたように白く、それによって私の身体はいつもどこか不自由だった。
この原体験から、私は訪れる先々で、自分の身体を取り巻く空気を、色によって直感的に捉えるようになり、これを「気配の色」と名付けた。そしてその色について、歴史や地理、文化、宗教など様々な角度から調査し思考することで、自分と異なる人々や社会の中の “潜在的な知覚”を探り、その背景にあるものの多様さを見つめている。
m@pプロジェクト・プレミアムの初回では、素材に“物件の間取り図”を用いたシリーズの新しい展開である「幾何学の倍音」というシリーズもしくはぬりえを素材に用いたシリーズのどちらかから1点をお届けする。「幾何学の倍音」はタテヨコの無機質な線の連なりとなった世界に、世界が多様なことで奏でられる「倍音」を感じられたらと思い、制作したものである。ぬりえのものは有機的な線ではあるが、フレーム化され、空洞化したイメージが連なったものである。
そして2回目以降は、今年から新たに取り組む「White Air」という新しいシリーズの習作を展開する予定である。これは “物件の間取り図”のシリーズと同様、社会の中に可視/不可視の状態で存在するフレーム化された空気に焦点を当てたもので、スタンダードコースとコンセプトは同じである。
■初回:15万円程度の間取り図もしくはぬりえの作品(ご購入者のご希望に応じてお送りします)
■2回目〜4回目: 《White Air》のための習作(サイズはスタンダードよりも少し大きいものになります)
『気配の色』
私が育ったのは1970年の大阪万博に前後して建設されたニュータウンだ。
あらゆるものが完備され人々が何不自由なく生活できる、いわば当時の理想都市でありながら、そこで感じていた空気は、なぜか漂白されたように白く、それによって私の身体はいつもどこか不自由だった。
この原体験から、私は訪れる先々で、自分の身体を取り巻く空気を、色によって直感的に捉えるようになり、これを「気配の色」と名付けた。そしてその色について、歴史や地理、文化、宗教など様々な角度から調査し思考することで、自分と異なる人々や社会の中の “潜在的な知覚”を探り、その背景にあるものの多様さを見つめている。
「気配の色」の背後には、いつもありとあらゆるものが複雑に絡まりあっている。そこには様々な人間の感受性が関わっているのだ。
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─[m@p]スタンダードについて
スタンダードは完全に新作で、1回目はフォトフレームの作品を送るのですが、2・3・4回目は写真を額縁に組み合わせていくものを送ります。ただ、まだ自分の中でもまだかたまっているわけではなくて。特に3・4回目はまだ自分の中で 全く想像がついていなくて、どんなものを入れるかはまだ決まっていません。日々のドローイングというか、これからの作品をつくるにあたっての習作的なものになると思うから、まだ結果が見えないというのがあるので。ただ、具体的には何もわかっていない状態の中で手を動かすというプロセスは、ほとんどの作家はやっていることで、今回はまだぐちゃぐちゃと何にもなっていない「プロセスそのもの」を見せるというものになるのかと思っています。内容としては白というものに私自身がこだわってきたというのがあって、そこからまず「White Air」という言葉が先に出てきました。これまでの制作の中で「気配の色」という言葉とかも見つけていたのですが、その中でも「白い空気」というのについて、 もう少し焦点を絞りながらやってみようと思いました。
─ White Air とは?
「白い空気」での白というのは、2019年のパルクでの個展で着目した本来の「素」という意味の「シロ」ではなくて、塗装されたような、プラスティック的な白であったり、死のイメージや人工的なイメージと結びつくような意味合いでの「白」 に焦点をあててやってみようと思っています。 元々はアクリルやガラスの板を使ったイメージが4枚送られてくるというものにしようかと思っていましたが、フォトフレームの形式にして写真の保護アクリルを加工したものに変更しました。そのフレームに写真を入れると、イメージ (写真)の前に必ず加工されたアクリルがくることになり、よく分からないイメージが邪魔してくる、上乗せされる、ということになるのでフォトフレームにしました。 これによりイメージのレイヤー構造をつくりやすいと思ったからです。また、フォトフレームの中に写真を入れるものだという認識もあるだろうし、言葉で説明しなくても想像や体感をしていただきやすいかなと思いました。
─「White Air」はこれまでの取り組みの中で、どのようなものと位置付けられますか?
個展「白いシロ」で発表した「塗り絵」シリーズに通じています。もともと「間取り図」は「閉ざされたフレーム」というのを 意識して用いていて、その代わりになるものを考えた時に、少女たちが描かれた塗り絵がフレーム化されていて、切り抜くことができるということに気づいてつくりはじめました。 日本的な平面性や閉じたフレームとか、そういうものが日本の社会の中で、何か外側からかたちを与える役割として潜在的に存在しているんじゃないかなと思っていて、例えば忖度とか同調意識とか、フレームからはみ出せない意識とか。そういうものの象徴としてフレームというものが気に なっています。 今回は日本の代表的なキャラクターから引用した線を使って構成しています。2回目以降は写真やドローイングなどを送りますが、写真は過去に撮っている写真もあるのでそこから選択するかもしれません。作品にできていないけれど気になって撮っている写真がいっぱいあるので。前面のアクリルにイメージ(キャラクター)がいるということを前提に組み合わせていく中で、自分のWhite Airというテーマに合いそうなものであったら新旧問わずに作品に組込むと思います。
─ 2 回目以降送られてくるものは入れ替えていく?重ねていく?
どちらでもいいと思います。重ねても入れ替えても、それは受け取った方が自由に組み合わせていただいても。
─ プレミアムについては?
初回は未発表の「間取り図」作品か、「塗り絵」作品の新作かを選択していただきます。2回目以降はスタンダードと同じように「WhiteAir」のシリーズをお送りすることになります。 ただ、スタンダードの方ではひとつのかたまりになっていて、全体でひとつの絵のようにもなっているけれど、それがもう少し大きい画面で、ずらされたりとか、配置されたりとかによって動きを持つような展開を考えています。
─[m@p]について
取り組みとして面白いと思いますが、作家としては難しいところもあります。封筒のサイズという制限もあるし、それを作品として実現させる上での難しさはあります。ただ、こんなに多くの作家の名前と作品が並んでいるのは、一覧でみてもすごく面白いなと思います。4回届くという仕組みは、受け取り側も2回目、3回目になった時に忘れてるのではないか...と思ったりするので、その時にふっとポストに届いて 「ああ、そういえば」と思い出してもらえたり、そういう時間を過ごしてもらえるというのは、本が届く経験とも違うし、 Amazonとかで注文する経験とも違うのではないかと。 1年を通してずっとやりとりができるし、少なくとも1年のお付き合いになるわけで、それを通じて知り合いになれたとしたら、それを機にまた話をしたりとかするかもしれなくて、SNSで交流しているような関係性とは違う、何か懐かしいやりとりが始まりそうな嬉しさがあります。