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─[m@p]について、どのように取り組まれましたか?
面白そうだと思ったんですけど、4回で5万円という設定が絶妙に難しいなと思いました。普段の価格の設定があるからそれとの兼ね合いもあるし。だから、せっかくなので、普段の作品を出すのではなく、少しひねった作品を出して、自分の今後のヒントになるようなことをやろうと思いました。もちろん5万円という価格は安いものではないので、購入者の方に満足感を持ってもらえるように...と考えると、価格設定はそれほど考えずに、普段の作品制作のプロセスからこぼれ落ちた、実験的な要素を入れようということになりました。そこで、これまで色々なシリーズをつくってきた中から代表的なものをピックアップして、「今考えたら作品の構造や要素はこうだったかもしれない」という別の展開を実験的にやってみることにしました。購入者だけでなく、自分にとっても新しい発見があるようにしたら、おのずとモチベーションも上がりますし。そうしたことから、普段の展覧会で出す作品とは違うけれども、ちゃんと自分にとっても新しい発見があることができたと思います。
─それが”Self-Remix 2020”ということですね。
そうです。自分の作品を後から自分でいじるということ。
─Self-Remix ということなのであれば、届く順番は、例えばリミックスアルバムの曲順のような具合で考えられていますか?
そういう部分はあるかもしれないですね。例えばこれが10回だったらアルバムみたいになるかもしれないけれど、アルバムというと新作をレコーディングするようなイメージになるから、どちらかといえばコンサートやライブかもしれません。コンサートだと新旧の曲を混ぜるし、アレンジもするじゃないですか。今回は4回なのでミニコンサート、ミニライブという感じでしょうか。
─4回に分けてお届けするという構造や時間軸についてはどう捉えられていますか?
「4回に分ける」という必然性は自分のコンセプトにはあてはまらないのであまり考えていなくて。たとえば日本画の作家であれば4回で四季をめぐるというようなことがあるのかもしれないけれど、僕の場合は大きく関わりません。それが4回ではなく10回だったら、扱うシリーズが10シリーズになるという具合です。実際、3作目まではもうつくっています。4回目はまだ何も考えていないですが。
─“Self-Remix 2020”は、どのようなプロセスになりましたか?
今回、制作するロットを10にしtますが、ひとつひとつはユニークピースです。写真だから同じようにはできるけれど、わざとひとつひとつ違う感じにしています。エディションだけどユニークピースみたいにしようと思ったので。暗室で自分で写真を焼くということから、すでにユニークピースではあるのですが、たとえば1回目に発送を予定している作品《 pLastic_fLowers(Self-Remix 2020)》の場合は、印画紙に実際にスクラッチを入れて、表面が削れている状態というものもやっていて、それぞれの個体差が出ています。はじめは写真の上にドローイング、と思ってやっていたけど面白くなくて、色々やっているうちにたまたま削れていたのが面白かったんです。元になった本来の作品ではそういうことやっていないのですけれど。
《 blocks(Self-Remix 2020)》は暗室に入るまでは何も決めてなくて、全く違う色で焼いてみるとか、複数のネガを多重露光にして焼こうかとか、色々やっていたけれどあまり面白くなくて。それで、元々は撮っているときにフォーカスをズラしていて、それをただプリントしているだけなんだけど、それを焼く時にもう一回ピントをずらす、二重にずらすということをやってみようと思って。それをやってみたら面白かったんです。
─プレミアムのプランについて
新作が1点ずつ4回届きます。まぁ、こちらも実際のところ難しいなと思いました。今まだこの世にないものをつくりたいなと考えたり、やりたいこともあるのだけれど、できるまでに10年かかるかもしれないので、それを出すのも難しいなと思いますし。実際は、価格やサイズなどの条件(制限)があるほうが考えられるんですが、自由と言われると難しいなと思っていました。
─作家の多くは、スタンダードの制限が難しいと言われるので、制限があったほうがいいというのは田中さんぐらいですね...
これがあったからやった、これがなきゃ生まれなかったな、というのが自分にとってもいいなと思っているので、制限があったほうが色々とできるなと思います。実際に注文があったならば、それをきっかけに何かを考えるかもしれませんが。