ギャラリー・パルクでは、2013年11月15日[金]から12月01日[日]まで「35°0'31.7" N 135°45'58.74"E 国谷隆志展」を開催いたします。 京都を拠点に活動を続ける国谷隆志(くにたに・たかし / 京都・1974〜)は、これまでおもにオブジェや彫刻を中心としたインスタレーションにより、作品の在る空間の性質を顕在化させるサイト・スペシフィックな作品展開を続けており、とりわけネオンを用いた一連の作品は、作品と鑑賞者を取り巻く空間を変容させるとともに、そこに内包される鑑賞者の身体感覚により強く働きかける試みとしてこれまでに多くの注目を集めています。
2011年の個展「Mars」、2012年の個展「make a mistake in choosing」に続き、PARCでは3回目の個展となる本展は、そのタイトルを Gallery PARCの座標である「35°0' 31.7"N 135°45' 58.74"E」としています。
『人間の空間への関わりにおいて、自分を取り巻く世界、物事についてのあり方を問うこと、さらに人はそれらとどのように向き合うのか』に関心を寄せている国谷は、これまでの一連の個展で展示空間(ギャラリー)において、鑑賞者に「身体(肉体)」と「その位置」への自覚を促すことに主眼を置いて展開させてきました。国谷作品を前に鑑賞者は、そこに「身体(私)が、今、ここ(空間)にある」ことへの自覚を促され、「自身」と「世界」 を「構造と対象」として主体的に捉えなおすことで、世界への再認識を迫られるのではないでしょうか。
本展ではこれまでのネオンによる作品の構成から離れた異なるアプローチにより、「作品・空間・身体(=オブジェクト・世界・鑑賞者)」のそれぞれを顕在化(対象化)させることにより、世界を認識・解体・再構築する一瞬の体験を提示します。
タイトルである「35°0'31.7" N 135°45'58.74"E」は、会場となるギャラリーを「座標」に置き換えたものであり、これまで国谷が提示してきた 「認識」の範囲を、空間内からさらにマクロ的視点に広げようとする意志が込められています。また、国谷は本展会期中にあたる10月29日[火]か ら12月1日[日]まで、成安造形大学(滋賀)で個展「35°6'29.15" N 135°54'9.63"E」を開催しており、この二つの展示は一部が連動した内容となっています。
「空間」の存在を考える上で「身体」を抜きにすることは難しいだろう。それは、私たち人間の身体が常に空間の中に置かれているのと同時に空間を 自らのものとすることによって環境を捉えているためだ。作品が身体の感覚に働き掛けるとき私たちは思考によってそれを把握し、統合する。
作品は単なる物質として捉えられるのみではなく、場として身体の一部となる。それは論理や認識のレヴェルではなく、内面的な領域へと思考を拡 大していくことである。
私は、私の作品が観客の意識の中で新たな意味や世界観を創りだす装置のような機能をはたすことができればよいと考えている。
観客が作品によって示される空間に立ったとき、身体を通じて観客自身の意識の中に起こる出来事は主体的であるために客観性に欠け、あまりに不確かなものかもしれない。しかし、このような場の感覚によって、「身体が、今、ここにある」ということを強く自覚する事ができると私は考えている。
私は、人間の空間への関わりにおいて、自分を取り巻く世界、物事についてのあり方を問うこと、さらに人はそれらとどのように向き合うのか、といったことに関心がある。
人が占めている位置、身体、空間、時間、物の配置による人の視点や移動。これらは身体を起点とした観客自身の位置であり、場の感覚によって示 されるものは、自らの存在を示すことに繋がる。作品の意味は観客の体験によって成立し、観客の参加そのものによって完成する。
あなたの存在と私の存在によって作品を完成へと導くことを、あなたの存在と私の存在の証明とする。
国谷隆志