Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、現在活躍する・またこれから注目を集める様々なクリエーターを取り上げ、発表の機会を提供することで、その活動をサポートする「PARC_ Creator Support Project 」に取り組んでいます。
昨年のヤマガミユキヒロによる#01「Sampling Your Memory」 展に引き続き、#02となる今回は国谷隆志をご紹介いたします。
京都を拠点に活動を続ける国谷隆志(くにたに・たかし / 京都・1974~)は、これまでおもにオブジェや彫刻を核に、設置空間を巧みに取り込み、空間そのものを変容させるインスタレーションによる発表を続け、その幅広い作品展開は多くの注目を集めています。
とりわけネオンを用いた一連の作品は、作品と鑑賞者の間となる空間に「ある環境や状態」を創出することで、空間そのものの特質を変容させるとともに、内包される鑑賞者の身体感覚により強く働きかける試みとして、興味深い展開を見せています。
私たちが毎日のように目にするネオン(サイン)。しかし、多くの人にとってネオン(管)そのものを間近で見る事はあまり無く、その鮮やかで鮮烈な光の正体(真実)を知らないままに、ただ「それら」を一律にネオンとして認識し続けているのではないでしょうか?
国谷によって息を吹き込まれ制作されたネオンは、その呼吸の痕跡として表面に有機的な起伏を持ち、ひとつとして同じ形状のものはありません。また、設置空間の特性を見極めて配置された無数のネオンは、空間そのものを大きく変容させながらも、相互の光や外光の干渉、鑑賞者の視点によって、常にその様相を変化させます。
その有機的なうつろいを見せる空間の中で、鑑賞者はネオンを見つめ、それぞれを目で追い、全体の揺らぎを眺めて過ごす「体験」を通じて、空間との間に様々な関係を持つ事になるでしょう。
「Mars」(=火星)と題された本展は、火星の存在について言及するものでもなく、また火星を「再現」するものではありません。
ただ、私たちは変容する空間を眺め、個々の作品を見つめ、時に自身の感覚に問いかけながら「Mars」と名付けられた作品空間を「体験」することで、「なぜMarsなのか?」「 なにがMarsなのか?」「 Marsとはなにか?」といった疑問から、いつしか空間との間に多様な対話を重ねているのではないでしょうか。
本展はギャラリー・パルクの空間にあわせて、新たに構築された30本以上ものネオンによる《Spaceless Space 2011》をはじめ、あわせて制作された《Untitled (Yellow)》、ガラスによるオブジェクト《Breath History》などの作品により構成いたします。 また、《Spaceless Space 2011》は会期中にその構成・配置を変える展示を予定しております。 刻々とその印象が変化する作品・空間・時間をお楽しみください。
また、10月25日(火)19:00~より、ダンスカンパニーMonochrome Circus主宰の坂本公成さんをゲストに迎え、アーティストトークを開催します。あわせてご参加ください。
人間と空間は、深く複雑に絡み合った関係である。
人間と空間は、深く複雑に絡み合った関係である。空間というものの存在を考える上で、身体を抜きにすることは難しいだろう。
それは、私たち人間の身体が常に空間の中に置かれているのと同時に空間を自らのものとすることによって環境を捉えているためだ。作品が身体の感覚に働き掛けるとき私たちは思考によってそれを把握し、統合する。
作品は単なる物質として捉えられるのみではなく、場として身体の一部となる。それは論理や認識のレヴェルではなく、内面的な領域へと思考を拡大していくことである。
私は、私の作品が観客の意識の中で新たな意味や世界観を創りだす装置のような機能をはたすことができればよいと考えている。
観客が作品によって示される空間に立ったとき、身体を通じて観客自身の意識の中に起こる出来事は主体的であるために客観性に欠け、あまりに不確かなものかもしれない。
しかし、このような場の感覚によって、「身体が、今、ここにある」ということを強く自覚する事ができると私は考えている。
私は、人間の空間への関わりにおいて、自分を取り巻く世界、物事についてのあり方を問うこと、さらに人はそれらとどのように向き合うのか、といったことに関心がある。
人が占めている位置、身体、空間、時間、物の配置による人の視点や移動。
これらは身体を起点とした観客自身の位置であり、場の感覚によって示されるものは、自らの存在を示すことに繋がる。作品の意味は観客の体験によって成立し、観客の参加そのものによって完成する。
あなたの存在と私の存在によって作品を完成へと導くことを、あなたの存在と私の存在の証明とする。
国谷隆志
展覧会タイトルの「Mars」に関して「なぜMarsなのか?」という疑問を抱かれるかもしれません。
そして、本展覧会は火星の存在について言及するものではありません。
私たちは科学技術の進歩により、遥か遠くの火星の大気の構成要素や大地の成分、地表の様子やその変遷など、火星についてのある程度の「知識」を得て、その存在を知ることができるようになってきました。
しかし、本当の意味で火星を「知る」には、火星という状況・状態と接触し、それを経験する必要があるのではないでしょうか。
そして、私たちの知識の中にある火星は、自らの手で触れる事、ましてやその上に立つ事などできるはずもない、つまり火星はまるで未知の存在のままではないでしょうか。
本展覧会はギャラリーをサイトスペシフィックな空間として、ある状況や状態を設定し、鑑賞者と作品・空間との間に様々な関係性が生まれることを促す試みです。
自らを包み込む空間を経験することで、鑑賞者の意識は作品・空間・身体との関係についてなど、様々なものに向けられるのではないでしょうか。
そして、「なぜMarsなのか?」といった疑問は、「Marsとは何なのか?」という疑問に変わっていくでしょう。
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Sign #1-7 Sand Sculpture Yellow Light and Blue Signs Objective Code |
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【関連イベント:アーティストトーク】
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