Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2019年10月11日(金)から27日(日)まで、菅かおるによる個展 「光と海」を開催いたします。 なお、「光と海」は10月5日(土)・6日(日)に長性院(京都)で開催される展示を第1期とし、本展はその第2期として開催いたします。
菅かおる(かん・かおる/1976年・大分生まれ)は、2000年に京都造形芸術大学日本画コースを卒業し、千住博に師事。これまでに多くの個展・グループ展などを開催するなど、積極的な活動を続けています。
菅は「水」をおもなモチーフに、伝統的な日本画の画材や技法を用いて「水に見る景色」を描き出します。しかし、その作品は日本画の写生に基づく精密な描画によるものだけでなく、自らの興味や好奇心を出発点とする絵画的な探求が重ねられた独自の世界として現れています。たとえば菅は偶然性を借りて画面に様々な色面を生じさせ、そこに見出した平面性・空間性を手がかりに線を描きますが、この線はいわゆる輪郭を描画するためだけのものではありません。運動の軌跡や光跡として伸びやかに、あるいは幾何学形態などとして描かれた線は、茫漠とした色面と前後左右に関係することで、そこに透明度や奥行きといった空間性を出現させています。
私たちが水面を覗くとき、そこに見えるものは光の届かない水底・水・水面・映る空・空気・降り注ぐ光の反射など、様々な要素であると言えます。これらはいわゆるレイヤーといったもので整理・整合されるものではなく、ひとつの塊(空間)としてすべて在り、私たちの目の焦点や動き、光の変化によって「見える・見えない」の狭間を揺らぎます。これは水をモチーフとして、そこに在る空間・事象を描こうとする菅にとって、周囲の光や鑑賞者の動きに呼応して浮かび・沈む日本画材の特性は、まさにこの感覚を再現するにあたり適切なものであったといえます。
古来より日本画は、自然光や蝋燭などの限られた光源のもとに鑑賞されることを前提として、その画材や技術を深化させてきました。菅もこれに倣い、かつて蝋燭の灯のみで作品を鑑賞する機会などに取り組んできましたが、本展はこうした探求をさらに進化させ、様々な光と空間に作品を展開することで、絵に内在する様々な魅力を発見する機会として取り組まれます。
2期構成となる「光と海」は、第1期に真宗佛光寺派長性院、第2期にギャラリー・パルク を会場に展開します。 宗教空間とギャラリーという属性の異なる空間に対して、作品はどのように作用し、空間は作品鑑賞にどのように作用するのでしょうか。またギャラリー・パルクでは通常の美術照明とは異なる光源を用いることで、作品と光の関係性についても考察を深めます。さらに、ギャラリー・パルクでの展示期間中、毎週金曜・土曜日の20時から22時まで「蝋燭の光による特別鑑賞」を開催します。また、本展企画:はがみちこ、出品作家:菅かおる、長性院副住職:佐々木暁一によるトークイベントを開催いたします。
【本展についての特設HP】
1期 真宗佛光寺派 ⻑性院
2期 ギャラリー・パルク
蝋燭の光による特別鑑賞
■会期中の[金]・[土]の20:00〜22:00
蝋燭の光による作品鑑賞により、光によって異なる様相を見せる菅かおる作品や日本画の魅力をお楽しみいただけます。(無料・予約不要)
トークイベント
■10月12日[土] 18:00〜19:30 → ■10月20日[日] 17:00〜18:30 (台風接近の影響に伴い変更になりました)
菅かおる(展示作家)・はがみちこ(本展企画者)・佐々木暁一(長性院副住職)によるトークイベント。 長性院での展示の様子をはじめ、作品や空間・時間、「光」にまつわるそれぞれのお話を伺います(無料・予約不要)
ひそかにおもんみれば
難思の弘誓は難度海を度する大船
無碍の光明は無明の闇を破する慧日なり
─親鸞『顕浄土真実教行証文類 序』
「光」と「海」は、浄土真宗の宗祖・親鸞にとって、ことさらに特別な意味を持ちます。遮られることのない不思議な光は、一切の生き物をあ まねく救う阿弥陀如来の願力の象徴です。「南無阿弥陀仏」は「南無不可思議光如来」であり「帰命尽十方無碍光如来」であり、あたかも光に 向けられた信仰かのようです。 流罪を経験した親鸞の海はさらに重層的です。「難度海(渡り難い海)」「群生海」「本願海」「大宝海」─無数に 群がり生きるこちらの世界と、救いの法の満ちるあちらの世界を同じ相に置くものが、海だといえるでしょう。
本展は、寺院という宗教空間とギャラリーという中立空間を会場に、菅かおるの二つの個展をおこなうものです。日本画の技法を用いる 菅は、古来からの絵画の受容に倣って蝋燭の灯りで展示をおこなうなど、これまでも、絵画と光の関係に注意を払って実験を続けてきまし た。特に、光の状況により大きく表情を変える金箔の扱いに意識を向けています。絵画や飾り、光の効果などで空間を異化し、意味性を付与 する効果を仏教では「荘厳」と呼びますが、菅の参照するような伝統的鑑賞における絵画は、空間作用の機能をともなうものでした。
信は荘厳なり。「光」と「海」をモチーフとして、試みに、絵画を荘厳のための「装置」としてみます。同じ絵を、別様の空間で、別様の光源で 展示するとき、どのような作用が働くでしょうか。揺らぐ炎の光、移ろう太陽の光。水面や深海を描く水の画家とともに、絵画を「作品」とし て照らし出す展示用照明から解放します。
はが みちこ(アート・メディエーター)
蝋燭の灯で絵を鑑賞するという個展をしたことがある。
日本画という伝統技法を使って作品を描いているからには、古来からの光で 自分の絵を見る試みをしてみたいというのが始まりだった。2014年の Gallery PARC での個展では、16曲の屏風に見立てた両面絵画を並べ、ギャラ リー空間のスポットライトで部分的にカラーフィルターをあてて展示した。
今回、長性院では蝋燭で2日間の展示。その日どのような天気になるかわから ないし、お寺という特別な空間が絵をどう見せるのか。昔の人にとってお寺はどういう場所だったのか、今よりもっと身近で救いを求める空間だったのか、など考えながら制作している。Gallery PARC では、長性院で展示した作品に新作を加えて展示する予定。Gallery PARC はギャラリーという、作品を展示する為にこしらえられた空間だが、4階では自然光の入る、面白い空間がある。そこで蝋燭、人工の光と 移り変わる自然光と様々な実験をしたいと思っている。私のアトリエで作っ た作品が、置かれる環境でどのような変化をみせるのか。
ひとつの展示が終わればそこで終わりではなく、その試みが新たな創作のアイデアを生む。そのような機会を与えて頂けることに感謝してこの個展に挑みたい。
菅かおる
【主 催】 うみをめぐる会
【共 催】 真宗佛光寺派 ⻑性院、Gallery PARC
【協 力】 ⼀般社団法⼈HAPS、有限会社中村ローソク
【助 成】 京都府⽂化⼒チャレンジ補助事業
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