2019年11月1日〜11月17日 

 

伊藤存、小川智彦、ニシジマ・アツシ :景風趣情 -自在の練習-

 

 

 本展は伊藤存(いとう・ぞん/1971年・大阪生まれ)、小川智彦(おがわ・ともひこ/1971年・北海道生まれ)、ニシジマ・アツシ(1965年・京都生まれ)の3名のアーティストと、企画者の安河内宏法(やすこうち・ひろのり/1980年・福岡生まれ)によるもので、2013年の『景風趣情-自在の手付き-』(京都芸術センター、京都市) 、『景風趣情 』(500m美術館、札幌市)に続く、「景風趣情」と題された展覧会シリーズの第3回目の展覧会にあたります。


 本展では、表現媒体や方法の異なる3名のアーティストがそれぞれ「世界の在りよう」を眼差し制作した作品を、3フロアからなるGallery PARCの空間に展示します。個(人)から成された作品は、それぞれに固有の意味やイメージを有する独立したものとして存在していますが、鑑賞者は個々の作品を見るうちに、次第にそれぞれに緩やかな連関を見い出します。ここで作品を個、いわば「語(文字)」のあり方に似たものとすると、それぞれの「語」の「間(あわい)」にはさらなる思考やイメージが生じます。また「語」はその他の「語」と組み合わされることで「熟語」ともなって、より多様な意味とイメージを描き出します。


 本展において鑑賞者の皆様には、個々の作品をお楽しみいただくとともに、その間に思考を巡らせ、あるいは個々の関係が紡ぐ多様なイメージを発見いただければ幸いです。

  

 

【主  催】
 「景 風 趣 情」プロジェクト

 

【企  画】
 安河内宏法

 

【DMデザイン】
 倉地宏幸

 

【協  力】
 ギャラリー・パルク

 

 

展覧会について

景 風 趣 情

 

 「景」「 風」「 趣」「 情」 という4つの文字。それらから作られる「風景」や「情趣」といった熟語。これらの文字や熟語は、仮に一般的に用いられることのない「趣景」や「情風」といった熟語を作ったとしても、それぞれに意味の広がりを感じさせます。


 その意味の広がりを粗描するのなら、それらは私たちと同じ時間・空間の中にある物や出来事に対して私たちが抱く感情や感触を表すものだと言えるでしょう。外界の世界とは隔たった場所で生じる私たちの主観的な心の動きでも、事物の客観的な描写でもなく、外界の対象とのつながりの中で私たちが抱く感覚。4つの文字やその熟語は、いくらかのニュアンスの違いを持ちつつも、私と世界との「間(あわい)」に生じる感覚を指し示すものであるのです。


 さて、いま記した「私と世界との間(あわい)に生じる感覚」こそ、本展の中心にあるものに他なりません。風景に触れているときの経験を分析的に取り扱うことや、風景の中にある言語化される以前の移ろいゆくイメージを捉えること、さらには日常的な事物や出来事を抽象化し、その本質を抜き出すこと。出品作家たちはそれぞれの仕方で世界の在りよう感知し、作品を制作します。そしてその上で、作風の異なった作品同士を緩やかに結びつけることを試みます。


 本展の出品作家たちの試みは、湯川秀樹(理論物理学者)の言葉『現実の根底にある自然法則に気付くのは達人で、現実の根底にある自然の調和に気付くのは詩人である』とつながるものであるでしょう。「景風趣情」という言葉をキーワードとし、「私と世界の間に生じる感覚」を手掛かりに制作される作品を組み合わせることで、伊藤存、小川智彦、ニシジマ・アツシは、湯川の言う「詩人」のように、「現実の根底にある自然の調和」を感取できる空間を作り出すことを目指します。

 


「景 風 趣 情」プロジェクト 


作家略歴

伊藤 存|Ito Zon


1971年大阪府生まれ。京都市在住。京都市立芸術大学美術学部卒業。刺繍の作品をはじめとして、アニメーション、粘土絵、小さな立体などを制作。主な個展に「ふしぎなおどり」(2016年、タカ・イシイギャラリー/東京)、「三つの個展:伊藤存×今村源×須田悦弘」(2006年、国立国際美術館/大阪)、「きんじょのはて」(2003年、ワタリウム美術館/東京)。グループ展に「Reborn-Art Festival2019」(2019年、網地島/宮城)、「六甲ミーツ・アート芸術散歩2019」(2019年、六甲山/兵庫)、「Now Japan Exhibition with 37 contemporary Japanese artists」(2013年、Kunsthal KAdE/オランダ)、「プライマリー・フィールドⅡ: 絵画の現在 ─ 七つの〈場〉との対話」(2010年、神奈川県立近代美術館葉山館/神奈川)、「Louisa Bufardeci & Zon Ito」(2009年、シドニー現代美術館/オーストラリア)など。

 
《浜と手と脳》

《浜と手と脳》

「Reborn-Art Festival2019」展示風景

石巻

2019年

撮影:松村康平

《粘土絵》

《粘土絵》

「椿会展2017 初心」展示風景

資生堂ギャラリー

2017年

撮影:畠山直哉

「ふしぎなおどり」

「ふしぎなおどり」

タカ・イシイギャラリー 

2016

撮影 高橋健治

 

小川 智彦|Ogawa Tomohiko


1971年北海道生まれ。京都市在住。北海道教育大学大学院修了。

風景をどのように見ることが出来るかを作品の制作を通し探求している。近年は、材料と工法に地域性が現れることに興味を持ち、木造和船の伝統的な工法の習得にも努めている。主な個展に、「景色の自由研究」(2014年、studio J/大阪)、「Full of emptiness」(2002年、Muury/フィンランド)。グループ展に、「ART CAMP TANGO 2017」(2017年、京丹後市網野町旧郷小学校/京都)、「Art Obulist 2016 急げ!ゆっくり!」(2016年、大府市勤労文化会館/大阪)、「Botão Exhibition vol.5 MOUNTAIN LINE / RYOSEN」(2016年、Botão gallery/名古屋)、「Silent Shadows」(2008年、Laboratoire Village Nomadレジデンス・プログラム/スイス)など。

 
《平らな稜線(日光・男体山の絵葉書)》

《平らな稜線(日光・男体山の絵葉書)》
 2010年

《2014年4月8日の周防灘の色見本帳》

《2014年4月8日の周防灘の色見本帳》
 2014年

《隅の風景「地面と壁」》

《隅の風景「地面と壁」》
 2016年

《卦の肖像》(部分)

《卦の肖像》(部分)
 2019年

 

ニシジマ・アツシ|Nishijima Atsushi


1965年京都市生まれ。京都市在住。大阪芸術大学音楽学科音楽工学専攻卒業。80年代半ばより実験音楽の制作、ライブ・エレクトロニック・ミュージックによる演奏を始める。その後、音が持つ様々な側面から発想したヴィジュアル作品の制作も始める。主な個展に、「Humor Identification/脱力と直観」(2017年、8/ART GALLERY/TOMIO KOYAMA GALLERY/東京)、グループ展に「Voice and Sound Waves: The Japanese Scene」(2019年、Galerie Felix Frachon/ベルギー)、「JAPANESE CONNECTIONS - CONTEMPORARY ART FROM JAPAN」(2017年、Nikolaj Kunsthal/デンマーク)など。2007年から2012年の間には、作曲家ジョン・ケージの生誕100周年イベント「John Cage Countdown Event2007-2012」を主宰。

 
《Turner Curtain "2-4-5-3-6-7-1-9-11-12-8-10" 》

《Turner Curtain "2-4-5-3-6-7-1-9-11-12-8-10" 》
 2019年

《little curtain》

《little curtain》
 2019年

《New-heterodyne layout》

《New-heterodyne layout》
 2019年

《Solid Scanning2》

《Solid Scanning2》
 2008年

撮影 高橋健治

 

本展企画者

安河内 宏法|Yasukochi Hironori


1980年福岡市生まれ。九州大学大学院修了。これまで京都市内の文化施設において現代美術を中心とした展覧会の企画運営やアウトリーチ事業を担 当してきたほか、芸術系大学の非常勤講師や執筆活動を行う。現在、公益財団法人京都市芸術文化協会に所属し、KYOTO STEAM-世界文化交流祭- 実行委員会に勤務。

 
 

 

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