Gallery PARCでは、2012年6月19日(火)から7月1日(日)まで、「目を凝らす:よく見えない 岡本里栄 個展」を開催いたします。
岡本里栄(おかもと・りえ / 1988~)は、2012年に成安造形大学洋画コース研究生を修了後、現在は京都精華大学大学院に在籍しながら、制作・発表を続けています。
岡本はこれまでおもに人物(人物と確認できる身体の一部も含む)を描きながら、絵と鑑賞者との間に交わされる「目線」を主題の一つとしてきました。しかし、近年になってそれは、「目を凝らしても見えない、触れて確かめたくなるような存在を絵画によって立ち現すことで、作品と鑑賞者との間によりアクティブな関係を成立させる」として、画面内の人物のフォルムはより曖昧となり、空間の構成は色面にまで融解したかのような作品を提示しています。
岡本の絵画制作のプロセスは、その人物の特徴(外見や仕草など)を写真で捉えたのち、独自のルールや色彩感覚を基にした線や色によって絵画へと変換していきます。それは抑制と自由のせめぎ合いの間にありながら、筆の流れや絵具の重なりといったアクシデントを取り込み、やがてそこに「はっきりとした朧げな存在」を留めるにいたります。
鑑賞者は、色や線をたよりに画面に目を凝らすなかで、いつしかそこに人物の輪郭、頬のふくらみや骨格、表情や視線までもを認識し、朧げな中に岡本が描き出した「存在」を感じることが出来るのではないでしょうか。
岡本にとってGallery PARCでの展示は昨年のグループ展「See Here!」に続き2回目となります。
本展では、過去展で発表した2作品とともに、およそ10点以上の新作やドローイング作品を展示いたします。
今、この日々を過ごしていると全てが失われていくように感じる。
信じられるもの、頼るもの、自分自身さえも存在しなくなる様な拠り所の無さがある。
世界の存在を物語る情報量は膨大となる一方、自己の存在はより希薄となって、日常へのリアリティーの欠如を感じる。わたしがいる世界。
全てにピントが合って見えすぎる世界。まったく暗闇のように見えない世界。私はひと(もの)の存在のあり様を絵画制作によって再考し、作品を通じてリアリティーの回復を目指している。
初めから何も無かったかのように認識しづらくなっている様々を、いかに捉え、絵画によって繋ぎ止めてゆくか。
現実とは異なる次元で表現を可能にする絵画は、日常から抜け落ちてしまったものを掬い上げてみせることが出来る。目で見るだけでは了解し得ない身体で知覚する様な感覚。
目を凝らしても見えない触れて確かめたくなるような存在をそこに立ち現す。
そこに確かといえるものが生まれるように。岡本 里栄
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