Gallery PARCでは、2012年7月3日(火)から 7月15日(日)まで、
「発散する点:Point of divergence 足髙 寛美 展」を開催いたします。
2002年に成安造形大学・ファイバーアートクラスを卒業した足髙寛美は、毛髪(人毛)を用いた「図」を提示する作品を制作・発表しています。「目の前にある、人のかけらのわずかな軌跡に、膨大な、無名の、生の続きを見る。連鎖し、内包されたその様相をかたちにしたい」として、ファイバーワークに見られる「編む・織る」などの行為はそのままに、その素材として毛髪という存在に着目した足高は、2008年に毛髪をかぎ針でレース編みした作品を「piece/one」展(ギャラリーマロニエ/京都)で発表して以降、現在までその作品を段階的に深めてきました。
毛髪をはじめて用いたその作品群は、「星の欠片で人体が出来、やがて土に還りまた別の生命体になる」という生の「円環」の提示が試みられたもので、装飾的・幾何学的な図はそれぞれが独立した「閉じたサークル」として描き出されています。また、2009年には、その「ひとつなぎの輪」である円環に存在するであろう極点(始点:終点、誕生:消滅)に着目し、図には「両極」が出現し、中心から外・内に開いた図はまるで貝殻の模様のような螺旋を描きはじめます。
2010年《北京の蝶、ニューヨークの嵐》の作品群は、連続的に動く点をある方向への「一連のベクトル」や「線」として捉えて、もはや中心は無く、独立した個々の作品すらもがひとつの大きな円環を描くかのように展開しました。また、「ランダム」の存在に注目し、それぞれの線の「ランダムな振る舞い」の視覚化に取り組まれています。
「有機(肉体)と無機(塵)の間」にある毛髪によって示されるその図は、「生:死」の対比による二極を描き出すのではなく、「生」の成り立ちに眼差しを向け、「生」の存在を縮小・拡大しながら図として切り取るかのようです。また、自然物(細胞の構成図、貝殻の螺旋模様)や、フラクタル図形をなぞるかのようなその「図」は、生の軌跡のマッピングであると言えるかもしれません。
本展では足髙がその新たな展開を模索する過程として、ひとつの「点」から複数の方向に線(ベクトル)が派生し、そこにより複雑で多様な「生:存在」を示すかのような作品を発表します。それは、これまでの生の軌跡を可能な限り忠実にカタチに還元する行為に加え、それらを超えてより連鎖的に・能動的に・ランダムに展開し続ける新たな「生」の振る舞いと、その「可能性」を探すものと言えます。
過去作・新作をあわせて展示する本展では、その変遷とともに、新たな展開への可能性をご覧いただけるのではないでしょうか。
足もとの塵と埃に混じって落ちていた毛髪に無名の存在を見る。
かつて宇宙の塵が集まって、地球が誕生したという。
その塵は寿命を終えた星のかけらであるらしい。
目の前にある、人のかけらのわずかな軌跡に、膨大な、無名の、生の続きを見る。
連鎖し、内包されたその様相をかたちにしたい。足髙 寛美
|
「leftward」 「left / 22.5°」 「北京の蝶、ニューヨークの嵐 4/0」 「北京の蝶、ニューヨークの嵐」 |