Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、京都の文化・創造活動の更なる活性化への支援のひとつとして、京都芸術センターなどとの恊働による展覧会やイベントの開催に取り組んでいます。
本展は7月21日から9月11日まで京都芸術センターで開催される夏休み企画展「sweet memory ─おとぎ話の王子でも」の関連展覧会として、その出品作家のひとりである瓜生祐子の作品を個展形式で展観するものです。
瓜生祐子(うりゅう・ゆうこ 京都・1983年~)は、これまでおもに「食べ物」をモチーフにした絵画を制作していますが、それらをまるで「風景画」のように描き出すことで、そこに独自の世界を提示する若手美術家です。
瓜生は「食べる」という行為によって、美しく盛り付けられた食べ物の形が、スプーンやフォークなどにより徐々に崩され、その姿を変化させていくプロセスに着目します。
そして、刻々と変化していく食べ物の形や輪郭・断面を捉え、その中にまるで「連なった山脈や急な渓谷」といった風景を見つけ出します。
《Koraku Bento》、《Mont Blanc》、《biscuit》などの作品は、まるで上空から見下ろしたどこかの風景のような、大きな視界を鑑賞者に与えます。
また、木製パネルと綿布の二重構造からなる作品の形状は、角に丸みを帯びたものや円形のものが多くあり、鑑賞者にお皿の上に載せられた食べ物を目の前にした時の視点を意識させ、顕微鏡や望遠鏡により異なる世界を覗き見る感覚を呼び起こします。
「お皿の上には新しい世界が誕生し、食べることで崩壊しながら、やがて消滅してしまうまでのドラマがある」と言うように、瓜生にとって「食べ物」を描くことは、「食べる」という行為の先にある、消えてなくなる「もの」の美しさや儚さを留めておく試みであるといえるでしょう。
身近な「食べ物」という存在を見つめ直し、日々繰り返す「食べる」という行為の中に、そんな美しくも儚い風景や瞬間が確かにあったのかもしれないと想像する。
鑑賞者は瓜生の作品を前に、新たな「食」への眼差しを発見できるのではないでしょうか。
本展では、おもにお菓子や甘いものをテーマにした京都芸術センター「sweet memory─おとぎ話の王子でも」への出品作品と異なる、よりバラエティー豊かな瓜生祐子作品およそ10点を展示いたします。
わたしにとって描くこととは、ひとつの世界をつくることです。
この世界が今あることを、当たり前に過ごしてしまう中でうつろいゆく小さな景色を拾い集めています。
世界を確かめ見つめるこの眼差しを、イメージの世界の中へ閉じ込めたいのです。
現在、食べ物の中に広がる風景を描いています。
お皿の上には新しい世界が誕生し、食べることで崩壊しながらやがて消滅してしまうドラマがあります。
その一瞬一瞬をかみしめながら、二度と出会うことのできない景色を見つめています。
この手の中で起こる小さな出来事が、手の届かない大きな世界につつまれるように、ここに今あることも、限りない世界の一部であるということを教えてくれるのです。
瓜生祐子