ギャラリー・パルクでは、2013年6月25日[火]から7月7日[日]まで、瓜生祐子による個展「collected mountain」を開催いたします。本展は2011年に開催した瓜生祐子個展「plate journey」に引き続き、2回目となるものです。
瓜生祐子(うりゅう・ゆうこ/1983年~)は2005年に成安造形大学を卒業して以降も関西を拠点に活動を続ける作家で、現在はおもに「食べ物」と「風景」が併存したような絵画を制作しています。
例えば瓜生は日々おこなわれる食事にあって、スプーンやフォークによって「食べ進める」という当たり前の行為の中から、そこに「山や谷のある情景」を見出し、その形を捉えます。このように瓜生の絵画制作は、自身が実際に「見える」情景を起点としてはじまります。雄大な風景の鳥瞰図のようにも見えるその絵画は、瓜生がお皿を覗き見る視点であり、望遠鏡や顕微鏡で異なる世界を覗くような不思議な視覚感覚を呼び起こします。
また、作品全体の淡い色彩は、パネルにアクリル絵具によって鮮やかな色面で描かれた画面を薄い綿布で覆うことで生じています。これによって絵具の物質感や本来の色彩を曖昧にし、その上から鉛筆で色の輪郭を捉え、山の稜線をなぞるように自由な線を加えていきます。この二重構造ともいえる独自の手法は、目に見える(見えた)であろう「ありのままの情景」を、自由な想像による「イメージの世界」に変換させるもので、これによって鑑賞者は、「食べ物」といった身近で小さな世界と、「風景」といった大きなスケールの世界を軽快に行き来するかのような視覚体験が出来るのではないでしょうか。
瓜生自身が体験した富士山登山からの眺望と、食べ崩されたカレーライスから発想を得た《curry and rice》(上野の森美術館「VOCA展 2013」出品作品)や、「京都美術ビエンナーレ2013」(京都文化博物館)にて毎日新聞社賞受賞作品《shokado bento》を中心に展示する本展では、様々な「食べ物」あるいは「山々の風景」を見る事ができます。
取るに足らない小さな出来事が、大きな世界の糸口となるように、作品を通して、大きな「山」の存在を小さな日常に見ることができるのかもしれません。
わたしにとって描くこととは、ひとつの世界をつくることです。
この世界が今あることを、当たり前に過ごしてしまう中でうつろいゆく小さな景色を拾い集めています。
世界を確かめ見つめるこの眼差しを、イメージの世界の中へ閉じ込めたいのです。現在、食べ物の中に広がる風景を描いています。
お皿の上には新しい世界が誕生し、食べることで崩壊しながらやがて消滅してしまうドラマがあります。その一瞬一瞬をかみしめながら、二度と出会うことのできない景色を見つめています。
この手の中で起こる小さな出来事が、手の届かない大きな世界につつまれるように、ここに今あることも、限りない世界の一部であるということを教えてくれるのです。
瓜生祐子