藤永覚耶が2016年より取り組む「Transit」シリーズ作品は、丸太の片側にシルクスクリーンで刷ったイメージが、浸透圧と毛細管現象により木の内部を経て反対側に像として現れるものです。[m@p]では購入者の皆様とのやりとりにより最初のイメージを決定して制作した作品を制作し、お送りします。プレミアムでは浸透する過程が記録された映像もお届けします。
ロット:1
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¥297,000(税・送料込み)受付終了
「m@pプレミアムプラン」では、《Transit》シリーズの作品を「実物と映像をセットにしたもの」で2点分お届けします。初回と2回目では《Transit 》シリーズから1点をお届けし、3回目と4回目では購入者の協力のもと制作した作品をお届けいたします。
近年、私は作品に引用するイメージに「映画」を用いています。なぜ映画なのかと問われるとすっきりと答えられないのですが、受動的に見る経験や鑑賞者にとって見たことがあるかもしれないという可能性が大事なように感じています。今回は自分ではなく購入者に選んでもらった映画から制作する《Transit - m@p ver. -》(仮)を通して、作品について考えてみることにしました。「イメージの可能性の範囲」を購入者と私で共有したいと思います。
《Transit》シリーズの制作過程では作品にならなかった多数の端材が出ます(木の性質など複雑な要素に影響を受けるため、複数の中から色や像のバランスをみて作品になるモノを選びます)。作品にならなかったものの中には色や細部が気に入り、廃棄できずにとってあるものがあります。制作活動を支援頂いたしるしに、そのような作品のエッセンスを含んだ端材もお送りします。あえてこちらで用途は意図していませんが、”飾る”、”使う”など購入頂いた方が役割を与えてやって頂ければ幸いです。
プレミアムプランでは、4回の送付を通して、《Transit》シリーズの端材、紙に刷られたシルクスクリーン小作品、《Transit》シリーズ 実物作品、インクが滲み出てくるプロセスを撮影・編集した映像作品をお届けします。
*「映像」はプレミアムプランのみの添付となり、作品サイズもスタンダードプランより大きくなります。
*プレミアムプランでは、《Transit 》シリーズから1点と購入者に選んでもらった映画から制作する《Transit - m@p ver. -》(仮)の両方を実物と映像のセットでお届けします。
■初回封入内容
・《Transit 》シリーズから1点の映像作品(5~10分程度)
・《Transit》シリーズの端材 複数点 (長辺150~250mm程度)
・映画に関する質問と返信用封筒
■2回目封入内容
・《Transit 》実物作品
(直径200~250mm程度 厚み20~40mm程度 / 素材・技法 インク、白樺 / シルクスクリーン、毛細管現象)*初回にお届けする映像・端材にひもづく作品です
・「《Transit - m@p ver. -》(仮)」 のエスキース(A4程度 / 紙にシルクスクリーン)
*最終的にお届けする作品のイメージとは限りません
■3回目封入内容
・「《Transit - m@p ver. -》(仮)」映像作品:5分~10分程度
・「《Transit - m@p ver. -》(仮)」 の端材
■4回目封入内容
・「《Transit - m@p ver. -》(仮)」 実物作品
(長辺250~300mm程度、厚み20~40mm程度 / 素材・技法 インク、白樺(仮) / シルクスクリーン、毛細管現象)
私の作品には、現象による偶然性が含まれている。
私たちが”偶然”と呼ぶもの、それは一体何を指しているのだろう。
偶然とは、私たちが身を置く世界の中での未知の領域でもある。そして、そのような未知の領域は、私たちの意識の内側にも存在するのではないだろうか。
私は絵画・版画・写真・染色の形式や技法を横断的に用いながら、「私」の外と内にある「未知の領域」への興味を、現象とイメージの関係に置き換え、作品を制作している。
《 Transit 》シリーズについて
《 Transit 》シリーズは、厚さ3cmほどの木の丸太の片面に3色のインクでイメージを刷る。インクは木の毛細管現象により、木の内部を混ざり合いながら通過し、反対側に多様な色による「像」を浮かび上がらせる。反対側に現れる「像」は木の性質や状態などの複雑な要素の影響を受け、元のイメージからは離れたものになる。だがそれゆえに、その「像」を通して私たちの内に新たなイメージが結ばれる。
私たちはこの作品の表面しか見ることができず、中で何が起こっているか見ることができない。
《 Stain 》シリーズについて
《 Stain 》シリーズは、写真から得たイメージを元に、まず手で綿布の上に色彩のインクの点を置いてゆく。点を描いた後、アルコールを吹き付け、任意の形の”しみ”を作り、数時間という時間をかけアルコールを継ぎ足して”しみ”を広げていく。
単なるインクの点は浸透圧により運ばれ、混ざり合い、全体としての「像」を浮かび上がらせる。意図的なしみの形と偶然性のバランスの中で新たなイメージとなる。
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《 Transit [ stone ] 》 |
─ [m@p]について
2020年はコロナで中止になった展示もあり、また自身の環境の変化など、思うように制作と発表ができていませんでした。コロナで外との繋がりも希薄な感じが続いている中で声をかけて頂いたので、作品を通して何かしら繋がれる機会を嬉しく思いました。
ただ、プランとして最近に取り組んでいる「Transit」シリーズをと考えていましたが、この作品はすぐに思う材料を用意できないという面や、出来てみないと分からない部分があり、考えるのにちょっと悩みました。
─ スタンダードプランについて
4回のお届けを通して1作品と考えてやってみようと思いました。展覧会では展示空間での構成を考えていますが、[m@p]ではお届けする順番を意識して構成しました。
「Transit」シリーズは、木の片面にまずシルクスクリーンでイメージを刷り、そのインクが木の毛細管現象によって吸い上げられ、もう片面に現れてくるというものです。
用いるイメージは「どこかで見ているかもしれない」という可能性や「受動的に見る経験」を得られるものであることが大事なように思っていて、これまでもテレビ画面を撮影したものなどを用いてきましたが今回は「映画」と括ってやってみようと思いました。なので、購入者の方に映画に関する質問をして、それを元にやってみたいなと。また、「あの映画のこの部分かもしれない」といった可能性が生まれたら、購入者の方のイメージに対する親密さも生まれるんじゃないかとも思いました。また、この作品は特にプロセスも大事だと思っているので、そのプロセスも含めて展開してみようと考えました。
あと、「Transit」シリーズでは作品未満の端材がたくさん出ます。中には気に入っているものもあり、何か作品とは違う形で還元できないかなと考えてました。[m@p]プロジェクトは、作家への支援としても捉えられているので、その“印”としてお届けしようと思いました。
─ 「Transit」シリーズについて
2016年頃までは綿布を支持体にした平面作品「Stain」シリーズを制作していました。これは最終的に、時間をかけて滲みを広げて像を作っていくような作り方になったのですが、その制作プロセスにある現象や時間といったものに強く魅力を感じていました。ただ、そこに起こる現象や、滲みでインクが動いていく時間に魅力を感じているのに、最終的な平面の形式だとそのプロセス部分が見えにくくなっている気がして、なんとかならないものかと悶々としていました。
そんな中で、気分転換にちょっとした家具や棚を作るのが好きなのですが、ある時に木のテーブルを制作していて、「木ってめっちゃ塗料吸うよな」って思ってホームセンターで小さな輪切りの端材をなんとなく買いました。木は水を吸い上げる導管が縦に走っていますよね。だから、今までの平面上でのインクの移動を、木なら“奥”へと向けてできるんじゃないかと、色々な種類のインクや木を使って1年くらい試行錯誤しました。
─ どのようなプロセスで試作を重ねてこられたのですか?
最初にホームセンターで買った端材の中で白樺が見込みがありそうで、ネットで白樺の輪切りを探しましたが、マイナーな樹種でしかも輪切りとなると全然ないんですよね。自分で作ろうにも、白樺はよほどの高地か北海道くらいでないと生えてませんし。そんな中、たまたま見つけた北海道の小さな木材屋さんが少し持っておられたので、そこの在庫を全部を購入しました。それで色々と実験できたのが大きかったです。
まずはどうしたらインクが吸い上げられ、どのようなイメージとして出るかというのを1年くらい試していましたね。
それまでの平面作品の支持体だった紙や布にも厚みがありますが、せいぜい1~2ミリで、それに比べると数センチという木の厚みは途方もないように思いました。だけど、うまくいかない中で木の中という見えない領域を魅力的にも感じてました。
それと並行して、杉やヒノキなど手に入りやすい木でも試しましたがうまくいかなかったです。桜や銀杏・椿など手に入った樹をとりあえず試して行きましたがダメでした。それに、同じ白樺でも福井で仕入れた木はあまりうまくいきませんでした。同じ樹種でも産地や乾燥過程など色々と影響しているようです。
最近になって、伐採から乾燥までをお願いできる北海道の木材店が見つかり、作品用に特別に作ってもらっています。また、伐採したてのものを送ってもらい、自分で材料作りもやっています。チェーンソーやカンナなど、いつの間にか木材加工の道具が充実してきました。(笑)
木は乾燥に時間がかかり、伐採できる時期も決まっていたりするので、先読みして仕込んでおかないといけないのがこの作品の難しいところです。
─ 材料を手に入れるだけでも大変なんですね。適したものが見つかれば制作はスムーズに進むのですか?
ある程度、これなら出るだろうという木で制作を行ないます。それでも個体差があってインクが通りにくいものや、反対側に出る像や色の出方にかなり違いがあります。あまりイメージが明瞭すぎても“それ”でしかないし、「受け手にとっての自由度」や「色や像のバランス」を主観的に見て作品になるかどうかを決めています。なので一発で作品になるということは稀で、いくつも制作して、その中から選ぶということになります。作品にはならないけど、色はとても気に入っているから残しておいたり、そういう作品未満のものがたくさんあります。今回はそういうものの中からカットした端材を、購入作品とあわせてお届けしようと思いました。
─ 「 紙に刷られたシルクスクリーン小作品」について
「Transit」シリーズでは、木の片面にまずシルクスクリーンという技法で、イメージを刷ります。これは元の画像を自分なりの方法で3色のドットに分解したもので、このイメージを紙に刷ったものを小作品として2回目にお届けします。ただこれは最終的にお届けするイメージとは限りませんが。
制作プロセスとしてイメージを選ぶ際のエスキースの役割もあるのですが、それ以上に見えていない部分、木の中で起こっていることを想像するきっかけにして欲しいなと思っています。
─ プレミアムについて
プレミアムは「木の実物作品」と、そのプロセスである「インクが滲み出てくる様子を撮影・編集した映像作品」がセットで2作品分が届きます。映像はプレミアムにしかつきません。
プレミアムでもお届けする順番は意識しました。まずはどのようなイメージか分からない真っ新な状態で映像をお届けし、その後に木の実物作品をお届けします。
また、スタンダード版より作品サイズも大きくなります。後半にお届けする作品は、スタンダード同様購入者の方への質問を元に制作します。
─ ほかの作家のプランで気になるものはありますか?
林 葵衣さんのプランはコロナ禍の状況で訴えるものがあるなと思いました。
あと、山岡さんの作品が結構好きなのですが、スタンダード版めちゃお買い得だなと思います。