2020年1月31日〜2月16日

 

朴 善化:結ぶ

 朴 善化(ぱく・そな)は、2000年に京都市立芸術大学美術研究科修士課程研究留学生として来日、2005年同美術研究科修士課程保存修復専攻修了、2009年同博士課程美術専攻(保存修復)領域修了、以後もおもに日本・韓国で仏教絵画の制作・保存修復に携わっています。

 

 仏教の教義や思想・世界観を物語る、あるいは信仰の場において人々が祈りや想いを捧げる対象としてあらわされた仏教絵画は、貴重な素材や高い技術が用いられて表現されています。しかし膠をはじめ、顔料や紙や布などの自然由来の材料の多くは、その物質的な性質から経年変化するものでもあり、仏教絵画は、そこに託された祈りや想いを永く未来に伝え・残すため、表現する技術のみならず、保存・修復の技術とともに発展してきたともいえます。つまり、永い歴史の中で表現として深められた仏教絵画は、同時に高められてきた保存・修復の技術によって現在にまでその姿をとどめ、今と往時の人々の想いを結ぶ役割をも果たしているといえます。

 

 朴 善化はおよそ20年前に日本を訪れて以降、韓国高麗時代から朝鮮時代に至る仏教絵画の模写に取り組むなかで、描画技法の研究だけではなく、和紙や藍などの素材、保存・修復の技術や社会で果たす役割などについて熱意を持って研究してきました。朴は、かつて描かれた線を筆で辿り、往時の材料や技術を知るなかで、描いた人やその表現だけではなく、絵や素材に託された多くの人の想いを受け取り、共有しようとしている自分に気付くようになったと言います。朴にとって模写や制作に取り組む時間は、作品だけでなく、自身をも深く見つめるための「想い」の時間でもあるともいえ、その思いは、2018年のGallery PARCでの個展『想い』をはじめ、これまでに幾度となく作品に託されて私たちに示されてきました。

 

 Gallery PARCでは2年ぶりとなる本展『結ぶ』は、その想いをさらに深め、伝えるための機会として開催いたします。来日から20年目を数え、今も日本・韓国を往き来しながら仏教絵画の模写・研究に取り組む朴は、自身の体験として両国の文化的な結びつきを強く意識するようになったといいます。また、現在、自身が学んだ修復の技術や思いを、韓国の若者へと伝えることにも積極的に取り組む朴は、そこに国だけでなく、人の縁や結びの連なりをも感じているのではないでしょうか。


 2000年以降、現在まで朴の取り組んできた仏教絵画の模写による作品およそ50点あまりを展示する本展では、その試行錯誤の変遷を見ると共に、日本・韓国の文化の足跡をも見ることができるのではないでしょうか。

展覧会について

「結ぶ」朴 善化 展 開催にあたって

 

 2000年から今日まで、生まれ育った国の文化財である韓国高麗時代から朝鮮時代に至る仏教絵画の材料や技法に興味関心を持ち、その技を読み解く模写にこだわり制作を続けています。


 留学で来日した当初、隣国でありながら韓国の文化と日本の文化の違いに翻弄され、故郷の生活を懐かしむ毎日でした。しかし、生活に慣れるにしたがい、太古からの韓国と日本の結びつきについて、強く意識するようになるとともに、日本の文化と縁を結ぶことによって、祖国の文化をより深く見つめることができるようになりました。


 今、日本で学んだ修復の技能と文化財に対する思いを、韓国の若者達に伝えるとともに研究を進めております。 今回の展覧会では、私がこれまで試行錯誤しながら結んできた韓国と日本の文化の足跡として作品を展示致しますので、是非ご高覧下さい。

 


 朴 善化



作家略歴

朴 善化|Sunhwa Park

2000年 京都市立芸術大学 研究留学生(日本画・模写)入学
2002年 京都市立芸術大学 研究留学生(日本画・模写)修了
2003年 京都市立芸術大学 美術研究科修士課程保存修復専攻 入学
2005年 京都市立芸術大学 美術研究科修士課程保存修復専攻 修了
2005年 京都市立芸術大学 美術研究科博士(後期)課程美術専攻(保存修復)領域入学
2009年 京都市立芸術大学 美術研究科博士(後期)課程美術専攻(保存修復)領域修了 博士号 芸術 取得
2013年 京都市立芸術大学 美術研究科 特任研究員

展覧会出品

2019年 個展 廻・めぐる 朴善化 展(同時代ギャラリー/京都)
2018年 個展 想い 朴善化 展 ( Gallery PARC/京都)
2017年 ART FAIR SAPPORO(CROSS HOTEL SAPPORO/札幌)
時・시간 朴善化 展(同時代ギャラリーコラージュ/京都)
2016年 同時代・アンデパンダン展 -同時代ギャラリー開廊20周年記念-(同時代ギャラリー/京都)
風・바람(同時代ギャラリー/京都)
2015年 紡ぐ(同時代ギャラリー/京都)
神戸アートマルシェ・2016年(オリエンタルホテル/神戸)
ART BUSAN・2016年(ART BUSAN/韓国)
2014年 個展(同時代ギャラリーコラージュ/京都)
2013年 ARTSHOW釜山・2014年(ARTSHOW釜山/韓国)
継・전승(同時代ギャラリー/京都)
2012年 藍の会 展(津田画廊/京都)
2011年 記憶 朴 善化 展(同時代ギャラリー/京都)
2009年 同時代ギャラリー企画展〔もの〕〔こと〕〔わざ〕の眞/또다른 眞 模写作品展(同時代ギャラリー/京都)
韓国ソウル佛教中央博物館 招待展 또다른 /眞 模写作品展(韓国ソウル佛教中央博物館/韓国)
韓国通度寺博物館 招待展 또다른 /眞 模写作品展(韓国通度寺博物館/韓国)
2002年 アルン展(京都市立美術館/京都)
『六号観音部分図』(法隆寺金堂壁画)模写

受賞

2005年 京都市立芸術大学制作展(同窓会賞)
『楊柳観音図』「水月観音図」(大和文華館所蔵)模写
2004年 京都市立芸術大学制作展(奨励賞)
『五色鸚鵡図巻』(ボストン美術館所蔵)模写

パブリックコレクション

2019年 堀金箔粉株式会社
大方広仏華厳経第40 復元模写
2018年 Gallery PARC/GRANMDMARBLE 株式会社 グランマーブル
大方廣佛華厳経 世主妙厳品 五三善知識 ・ 世主妙厳品 変相図 模写
妙法連華経巻第1 部分 模写
京都王藝際美術館  文殊菩薩・普賢菩薩
2017年 順天市 松廣寺聖寶博物館 
『松廣寺 十六祖師眞影』模写
2013年 向日市 向日神社
『雲龍図』
2009年 韓国ソウル 佛教中央博物館 
『紺紙銀泥不空羂索神変真言経 巻十三変相図』模写
2008年 韓国 廣徳寺
『白紙墨書妙法蓮華経 巻三変相図』模写
2005年 株式会社・京都銀行
『紺紙銀泥大方広仏華厳経貞元本巻三十四変相図』模写
 
作品画像

龍王

31.5cm×23.5cm

2019年

作品画像

龍女

32.3cm×23.5cm

2019年

作品画像

毘盧遮那仏

60×48cm 

2019年

 

作品画像妙法蓮華経巻第11

21.9cm×58.8cm

2019年

作品画像

大方広仏華厳経第40.

38cm×38cm

2018年

作品画像

大方広仏華厳経貞元本巻三十四変相図

33.4cm×70cm

2019年

作品画像
作品画像

『平治物語絵巻』 六波羅行幸巻 模写. 部分

41cm ×166cm

2001年

 

 

空白