2017年3月31日〜4月16日

 

田中秀介: ふて寝に晴天、平常の炸裂。

 田中秀介は2015年に開催した公募「Gallery PARC Art Competition 2015」の採択作家として開催した展覧会 「 私はここにいて、あなたは何処かにいます。」より、ギャラリー・パルクでは2年ぶり2回目の個展となります。


 田中秀介(たなか・しゅうすけ/1986年・和歌山生まれ)は、2009年に大阪芸術大学美術学科油画コースを卒業後、大阪・京都などで個展やグループ展を重ね、2016年にはトーキョーワンダーサイト渋谷にて個展『円転の節』を開催。また、2014年に「シェル美術賞」・「トーキョーワンダーウォール2014」・「FACE 2015 損保ジャパン日本興亜美術賞」入選、2015年に「 Tokyo wonder seeds 2015」入選、2016年の「トーキョーワンダーウォール2016」ではトーキョーワンダーウォール賞を受賞するなど、その評価は着実に高まっています。


 くたびれたスーツの男がトラックの荷台に肘をつく《 空っぽの突っぱり 》。日中の道路工事現場の作業風景《 道作り 》。夜半にダウンを着込んだ女性が自転車に乗る《 インフラストラクチャー 》。あるいは、壁に貼り付けられたビニール袋、闇夜の電柱、電球とデコポン。
 絵を描くにあたり田中は、身の回りにあるこうした他愛のない事物を材にします。しかし、絵に描く理由が特に無さそうな、この「ありふれた風景の絵」を目にするうち、鑑賞者はどこか言い知れぬ違和感を覚えはじめます。そして、その違和感の理由を求めて画面に目を凝らした時、そこに絵画上の様々な要素(明快な色彩と細やかな色調、面描と線描、刷毛目に任せた大きなストロークと筆先によって与えられた緻密なテクスチャ、西洋・東洋の描画テクニックの拝借など)を発見することができます。また、ともすれば画面上に矛盾や破綻を生じさせるかもしれないこうした要素が、絵として「ありふれた風景」を成り立たせていることは、それらが田中によって入念に選択され、調整されたものであることを感じさせます。では、そこにあるはずの田中の意図を知ろうと、それぞれの事物の意味や関係性を目と想像で追いかける時、目の前にはやはり「ありふれた風景の絵」しか存在しない。そしていつまでも残る(少しだけ更新された)違和感。
 田中の作品は、その主題・意味・目的・技法などにおいて「絵であること」の理由(正しさ)を不在にしたまま、「絵であること」の切実さを強く感じさせます。言い換えるなら田中は、「絵が絵以外の何かになることを周到に抑制する」かのように絵を仕立てていると言えます。そして、そのことが鑑賞者に認識の検証と更新、記憶や想像による物語の想起と放棄、主観の投影などを求め続け、決して腑に落ちることのない鑑賞を促し続けるのではないでしょうか。
 新作となる絵画およそ10点を中心に構成される本展において、その作品の魅力(違和感)を存分にお楽しみいただくとともに、私たちの暮らしの中に溢れる「当たり前さ」への認識を疑い、更新し、時に戯れることを促す機会となれば幸いです。
 なお、4月15日[土]17:00〜18:00には、会場にて田中秀介によるアーティスト・トーク(聞き手:武本彩子[Gallery PARC])を開催いたします。本展と合わせて、田中の作品や制作への眼差しをうかがい知る機会となるのではないでしょうか。

ステートメント

私はとある家庭に生まれ、気がつけば意識があり、たちまち外部の膨大な影響を否応なく受け、結果言わば出自のはっきりしない自覚、というものを明確に認識している状態である。しかし、外部からの影響もそれに伴った自覚も無限に続く訳でも無く、意識の消滅と共に歯止めが掛かる事は、何となく知っている。そうなると逆算的に考えてもあらゆる事物、それらとの接触も有限である事に気づく。ならば自覚の出自を探ろうと外部を見渡す。咄嗟に焦点を合わせれば、誰かがデザインした流線型の照明器具、途方も無い空と奇態な雲、積年の石、偉人の親戚、蜂蜜の流動、打ち捨てられたスウェット等、それらはけたたましく、かつ淡々と代謝の如く立ち代わり存在している 。すなわちこれら当然が身辺を満たし、また自身もそれに埋没している事に気づく。私の描き出す発端はこの当然を紐解き検証する事から生じる。
田中 秀介




作家略歴

田中 秀介|Tanaka Shusuke

2009年 大阪芸術大学 美術学科 油画コース 卒業

個展

2016年 ALLNIGHT HAPS 人と絵の間「こないだのここからあそこ」(京都 /HAPS)
円転の節(トーキョーワンダーサイト渋谷)
円転の節(奈良 / ギャルリ・サンク)
2015年 私はここにいて、あなたは何処かにいます。(京都 / Gallery PARC)
2013年 「回想と突発のわれわれ」  / Gallery Morning、京都
2012年 「節々の往来」  / Gallery Morning、京都
「破竹の集約」  / room.A、大阪
2011年 「香ばしい遜色 」  / room.A、大阪
「空回る傍観」  / Gallery Morning、京都
「Tanaka Shusuke solo exhibition」  / Alternative Space MARU、韓国
2010年 「華やかな隔たり」  / 2kw gallery、大阪
「差し出る誤解」  / room.A、大阪
「平穏のむきだし」  / Gallery&Cafe E・R・I+Y、奈良
2009年 「信じがたい部分」  / Gallery Den 58、大阪

グループ展

2017年 Big Sensation(京都 /Gallery Den Mym)
2016年 トーキョーワンダーウォール 2016 入選作品展(トーキョーワンダーサイト渋谷)
2015年 トーキョーワンダーウォール 2015 入選作品展(東京都現代美術館)
iquid section  / 2kw gallery、大阪
FACE 2015 損保ジャパン日本興亜美術賞展  / 損保ジャパン日本興亜美術館、東京
2014年 シェル美術賞展2014  / 国立新美術館
トーキョーワンダーウォール2014 入選作品展  / 東京都現代美術館
「まよわないために -not to stray-」 / the three konohana、大阪
CONSTELLATION 2014-星座的布置展- / 上野の森美術館
2013年 「夜水鏡みがかず見るよー死と詩ー」 / Gallery OUT of PLACE、奈良
有馬温泉路地裏アートプロジェクト2013 / 有馬温泉、兵庫
「5Artist」 / 阪急メンズ館、大阪
2012年 「アート街道」 / 神戸アートビレッジセンター
「Favorite Art view」  / Gallery Morning、京都
〔FUKUSHIMA ART プロジェクト〕 / 元・立誠小学校、京都
2011年 「Worldmaking」 / 2kw gallery、大阪
「Pilot Plant-昭和は遠くなりにけり」 / CAS room.A、大阪
2014年 「ART SAN DIEGO CONTEMPORARY ART FAIR 2010」 / Hilton Hotel、San Diego(America)
「TASTING ART EXHIBITION」(’10・’11) / 阪急メンズ館、大阪
2014年 「S.S.S.」 / 大阪、Gallery Den
「サントリー賞受賞特別展 薄い皮膚」 / サントリーミュージアム[天保山] 
「Art camp 2009」 / Gallery Yamaguchi Kunst Bau、大阪
「Tokyo wonder seeds」2009 / トーキョーワンダーサイト、東京
「Acryl Award 2008 巡回展」 / 東京・大阪・北海道

ライブペインティング

2012年 メンズ館ナイト(大阪 / 阪急メンズ館)

レジデンスプログラム

2010年 「Asia Art Program]  / Alternative Space MARU、韓国(昌原)

受賞・入選 等

2016年 トーキョーワンダーウォール 賞 受賞
2015年 トーキョーワンダーウォール 2015 入選
Tokyo wonder seeds 2015 入選
Gallery PARC Art Competition 2015 入選
2014年 FACE 2015 損保ジャパン日本興亜美術賞 入選
シェル美術賞 入選
トーキョーワンダーウォール2014 入選
2010年 第24回 ホルベイン・スカラシップ 奨学生 認定
「Art Camp 2009」 サントリー賞 受賞
Tokyo wonder seeds 2009 入選
Acryl Award 2008 入選
 
作品画像

《 空っぽの突っぱり 》
2017 70×90cm
木製パネルにキャンバス・油彩

作品画像

《 一刻の主役 》
2017 97×130cm
木製パネルにキャンバス・油彩

作品画像

《 いつまで体面 》
2017 145×106.5cm
木製パネルにキャンバス・油彩

《 イニシアチブ 》

《 イニシアチブ 》
2017 90×70cm
木製パネルにキャンバス・油彩

作品画像

《 道作り 》
2016 130×162 cm
木製パネルに紙・油彩

作品画像

《 次の日 》
2015 20×33cm 
木製パネルに紙・油彩

作品画像

《 インフラストラクチャー 》
2016 130.3×97 cm  
木製パネルに紙・油彩

 

 

空白