Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2016年7月6日から8月14日にかけて「Gallery PARC Art Competition 2016」として3つの展覧会を連続開催いたします。本展は様々なクリエイション活動へのサポートの一環として、広く展覧会企画を公募 し、審査により採択された3名(組)のプランを実施するコンペティション「Gallery PARC Art Competition 2016」に応募された56 のプランから、平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)、山本麻友美(京都芸術センタープログラムディレクター)の2名の審査員を 交えた厳正な審査を経て採択された湯川 洋康・中安 恵一、寺脇 扶美、嶋 春香の3組による展覧会を実施するものです。
その第一弾として、湯川 洋康・中安 恵一「豊饒史のための考察 2016」を開催します。
会場撮影:麥生田兵吾
Gallery PARC Art Competition 2016 #01
豊饒史のための考察 2016
湯川洋康 ・ 中安恵一
私たちは「豊饒史」の構築を重要な制作テーマに据えている。それは我々の暮らしにおける「豊かさ」を再構築するための概念である。瞬く間に飽和した物質的な豊かさによって我々の暮らしは大きく変わった。過渡期だと思う。近未来にむけて、物質/精神の均衡についてより意識的になる必要があると思った。
私たちは歴史や習俗、習慣に目を向ける。日々の暮らしでは表立たない地層や歯車や血肉のようなもの。テーマに基づき入念なリサーチを重ねる。関係性を持つ物質を拾い集め、手に取り、組み合わせ、配置し、彫刻を形作る。 さて、近世の国学者・本居宣長は、十代の頃に架空の城主・端原氏を創造しその城下絵図と家系図を記している。私たちは制作活動を始めた当初、それらを見る機会を得た。二つの図は若年期宣長の「支配しうる世界の構築願望の現れ」と一般的に理解されているが、何よりもこの上ない精緻さが圧倒的だった。時間/空間軸の厳密な設定と描写。〈私は如何に存在しているか〉という〈いま・ここ〉の把握を目指す後の仕事へ続くこの精神性。
翻って私たちの表現、テーマや制作過程、そして「豊饒史」を作ろうとする姿勢。それは私たちが宣長の二つの図を眼前にした経験とは切り離せない気がしている。宣長はなぜあんなにも美しく-それは空想的にも、描写としても-描いたのか。この美的平衡をめぐる問いこそが、私たちが考察の名の下に彫刻化を行う動機といえる。
湯川洋康 ・ 中安恵一
習慣・歴史・習俗をはじめとした過去から現在にわたる人間の営為とその痕跡と向き合い、そのメディウムやコンテクストを通じて多様な関係性を彫刻化する作品を制作する。彫刻化した作品を対象の“平衡”状態と見なし、その“平衡”を空間に配置する。 鑑賞者が私たちの示す“平衡”と対峙するプロセスを通して現代社会に介入し、多様 な次元を持つ関係性を構築する。