ギャラリー・パルクでは、2013年6月8日[土]から6月23日[日]まで、吉原啓太による展覧会「squash domain(スカッシュ ドメイン)」を開催いたします。
吉原啓太(よしはら・けいた/大阪・1981~)は、「私の制作は、“個”をこれまで生きてきた経験や関係性の複合体として捉え、その複合体のその場で出会った状況においての現れ方の模索です。その模索の結果は、制作の過程で関わった記憶、関係性が明示的に現れるインスタレーションとして展示されます」として、2009年に京都精華大学洋画コースを卒業後、これまでに様々な場所・方法によって作品を発表しています。
「squash domain」に展示される作品群は、まず吉原によって用意された「箱(カーボン紙を巻き付け、内部にマイクを仕込んだもの)」を他者の家(テリトリー)に運び込む事に端を発するものです。その他者とはおもにアーティストやミュージシャンなどの固有の表現行為に携わる人々であり、彼らは「日常空間に突如運び込まれた大きな箱」という事実・体験、あるいはそれに由来する音や痕跡をきっかけに、個々に作品をつくりだします。そして、提出されたそれらは吉原によって編集され、また「吉原啓太による個展」の展示作品として会場に配されます。
本展では吉原により投げかけられたアクション(他者のテリトリーへの浸食)が、キスヒサタカ / 杉原尚樹 / DJハガケン / 那谷周平 / 三浦真琴 /水玉 / 三家総一郎 / メガネヤ(市川ヨウヘイ) / 安川雄基+飯坂拓也 / ヤマユウキ / 米子匡司により個々のリアクション(固有の表現)へと変換され、再び吉原によって編集・発表されます。
こうした他者とのリレーションと変換(読み換え)のプロセスにある、個々の領域(domain)への浸食(squash)から顕在化する要素を収集・編集し、そこから「個」の有り様を模索する方法論は、吉原によって近年に幾度か試みられているものであり、本展はその展開・発展を目指す機会ともなります。
「人」は日々、偶然もしくは意識的に何かを見たり、経験することにより、知識、技術、感性を変化させながら生きています。また、なにか自分一人では解決できない出来事に直面した時、「人」は「他の人」の助けを借りてそれを解決しようとします。そして、その経験や知識や技術、感性で成したり得たりした物事を、「私」の特有あるいは固有の物事として扱っています。
例えば、ある画家が絵画を作品(=仕事)として提示するとき。
使用されているカンヴァス、絵の具などその物体を構成する要素は、画材メーカーにより制作され、画材屋で購入している。また、その手に入れた画材を用いて、先人達が生み出したオイルオンカンヴァスという技法の上で、絵画作品の形に整形し提示しています。“私”は「人」が生きて活動する上で当たり前な事としている「私」や「所有」についての再考を試みます。
「人」をこれまで生きてきた経験や関係性の複合体として捉え、その場で出会った状況やプロセスにおいて編集された「私」という「様相」の現れ方を模索しています。“私”は過去に関わってきたあらゆる経験や関係性から、その場・その時に必要と思える情報・物質・人員などをたぐり寄せ、編集し、“私の仕事”として提示します。
吉原啓太
「squash domain」は、吉原が「他の人」の自宅やアトリエなど他者のテリトリー に、大きな箱を運びこむことから始まります。ここで箱をテリトリーに運び込まれるのは、美術作家、ミュージシャンなど、それぞれ固有の表現様式や視点をもつ作家達です。
そのテリトリーに運び込まれた大きな箱に起因するトピックは、新たなきっかけとなって後に他の作家によって展開・派生していきます。
そしてそれは、吉原により編集され、Gallery PARCにて「squash domain」として展示される。