2020年4月10日〜4月26日4月19日(日)

 

石場文子:zip_sign and still lifes(記号と静物)

* 新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、本展は、4月19日(日)をもって終了いたします。

  ご来廊を予定されていた皆さまにはご迷惑をおかけしますが、ご理解・ご了承いただきますようお願い申し上げます。

 


 2014年に京都嵯峨芸術大学造形学科版画分野を卒業、2016年に愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程を修了した石場文子(いしば・あやこ / 1991年・兵庫県生まれ)は、おもに写真を媒体とした作品を制作・発表し、2019年には「VOCA展2019 現代美術の展望 ─ 新しい平面の作家たち」での奨励賞受賞や「あいちトリエンナーレ2019」への参加など、目覚ましい活動を続けています。

 

 石場はこれまで、写真を媒体に日常的な風景を取材し、そこに実際の面や線によって介入することで、鑑賞者の「見る」と「認識する」の間にズレを生じさせ、私たちの視覚認識のあり様へと注意を向ける作品を制作しています。2014年ごろから制作をはじめた「ソファと□のある風景」シリーズは、赤や青の色面や、ストライプが印刷された四角形の紙をソファの上に並べて撮影した作品であり、同時期に制作された「Laundry」シリーズは、靴下などを撮影・印刷して切り抜き、物干し機に洗濯ばさみで吊りさげた様子を撮影したものです。これらはいずれも実際の空間では平面(2次元)であったものが、写真内の状況によってクッションや洗濯物といった立体(3次元)と錯視されることで、私たちの認識のあり方に触れるものといえます。また、近作である「2と3のあいだ」、「2と3、もしくはそれ以外」シリーズは、実際の被写体の輪郭線に見える部分を黒く塗りつぶして撮影することで、今度は実際の立体(3次元)を平面(2次元)へと錯視させています。

 

 石場は写真の中に「面」や「線」によって介入し、そこに錯視的な視覚をつくり出すことで(2次元)と(3次元)という概念を強く意識させます。これにより鑑賞者は視覚と概念のズレを認識し、そこを「往き来」するような鑑賞体験を得るといえます。そして、ここで、なにより興味深いのは、これらが「写真」の内に発生している点ではないでしょうか。写真といういわば平面(2次元)の上のイメージにおいて、私たちの「2次元⇄3次元」というこの錯視・認識のズレは、何に起因するのでしょうか。そもそもすべてのものに厚みや手触りがあるなかで「2次元」という存在はあり得るのでしょうか。では、私たちが石場の作品を見て感じる違和感はどこからやってくるのでしょうか。

 

 本展では石場の現時点での代表作となった「2.5」シリーズ作品と合わせて、これまでの作品の中でも幾度か思考されていた「パターンや記号」・「静物」といった要素を取り入れた作品を発表します。また、これまでの(2次元)と(3次元)という構造の中に「時間」という要素を扱った作品を組み込んだ構成として展開します。これにより、本展は今までの石場の作品を点検する機会であるとともに、現時点での作家の興味や、今後の作品展開を見とおす機会としてお楽しみいただけるのではないでしょうか。

 

展覧会の様子




ステートメント

 一見何もない、なんでもないことが「何もないことなんてない」と感じた時、自分の立っていた世界が脆く、目の前が一気に広がる気がしています。

 

例えば、ただの壁だと思っていたものにドアや窓が付いていたら、きっと私たちはその壁の向こうを想像すると思います。私の作品はそんなドアのような存在でありたい。 誰かがこうである、と決めたことに対して私は作品を通して笑ってやりたいのです。違う見方を提示したい、可能性を模索したい、自分の立っている場所を少しでも広げたいと思っています。

 

 


石場 文子



作家略歴

石場 文子|Ishiba Ayako

1991年 兵庫県生まれ
2014年 京都嵯峨芸術大学造形学科版画分野 卒業
2016年 愛知県立芸術大学美術研究科博士前期課程修了

個展

2019年 次元のあいだ(児玉画廊 / 東京)
2018年 たかが日日(山下ビル / 愛知)
2017年 2.5(KUNST ARZT / 京都)
2015年 しかく-Square/ Sight/Blind spot-(KUNST ARZT / 京都)
2013年 house(KUNST ARZT / 京都)

主なグループ展

2019年 さっぽろアートステージ2019 ART STREET 美術展『まなざしのスキップ』(札幌文化芸術交流センターSCARTS / 北海道)
ignore your perspective 52「思考のリアル Speculation ⇄ Real」(児玉画廊 / 東京)
LUMIX MEETS BEYOND2020 by Japanese Photographers #7(Gashouders / オランダ・アムステルダム)、(IMA Gallery / 東京)、(Galerie Nicolas Deman / フランス・パリ)
あいちトリエンナーレ2019「情の時代」(愛知芸術文化センター / 愛知)
IMA×Edition “STYLED IN PHOTOGRAPHY” vol. 1”「写真を着る、言葉を纏う~フォトグラファーと言葉によるTシャツコラボレーション~」(IMA Gallery / 東京)
VOCA展2019 現代美術の展望―新しい平面の作家たち(上野の森美術館 / 東京)
2018年 Pop-up Dimension 次元が壊れて漂う物体(児玉画廊/ 東京)
メソッドの考察(愛知県立芸術大学学食2次元 / 愛知)
ART NEXT NO.3「不透明なメディウムが透明になる時」石場文子×守本奈央「温かいベンチ」(電気文化会館 / 愛知)
石場文子×守本奈央「立てる」(Masayoshi Suzuki gallery / 愛知)
写真的曖昧(金沢アートグミ / 石川)
2016年 ギャラリー矢田パートナーシップ<Next#4>「見えないものをみる力」(市民ギャラリー矢田 / 愛知)
石場文子×中山絵梨「アワーモデルルーム」(愛知県立芸術大学サテライトギャラリー / 愛知)
2015年 Lagrangian point –パースペクティブカスタマイズ-(Gallery PARC / 京都)
 
作品画像

2と3のあいだ(トタンと植物)

2019
545×424mm

作品画像

2と3、もしくはそれ以外(わたしと彼女)-台所-

2019
728×1030mm

作品画像

laundry#1

2018
606×455mm

作品画像

laundry#2

2018
606×455mm

作品画像

laundry#3

2018
606×455mm

作品画像

2と3のあいだ(洗面台)

2017
1030×728mm

 

 

空白