* 本展は4月12日から5月12日まで京都市内を舞台に開催される[KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2019]のサテライトイベント「KG+2019」のスペシャルエキシビションとしても開催するもので、Gallery PARCでは4月12日から4月28日まで開催するヤマガミユキヒロによる個展「印象の遠近:Perspective of Impression」と合わせ、作品上の技法としてのみならず、自らの表現における思考や眼差しに、写真・映像を組み込む作家による連続展として開催いたします。
田中和人(たなか・かずひと/1973年・埼玉県生まれ)は、明治大学商学部卒業後、会社勤務を経て渡米。2004年にSchool of VISUAL ATRS(ニューヨーク)を卒業後に帰国。現在は京都・埼玉を拠点に活動しながら、「写真による抽象表現の探求」を主題に国内外で多くの個展やグループ展などに取り組んでいます。
本展「Self-Dual」は、田中が2015年から取り組む「pLastic_fLowers」シリーズの最新作となる「pLastic_fLowers Ⅲ」と、新たな取り組みとなる「PP」シリーズによる作品で構成いたします。
机上に置いた花瓶の花をモチーフに、様々な角度から見たその「印象」を手前に設置した透明な板に描き、最後にそのドローイング越しに花を撮影した「pLastic_fLowers Ⅲ」。これは「世界に在る(認識される)もの」を必ず写してしまう写真において、その「印象」を描いた絵画を同一のイメージ(写真)へと統合することで、私たちの認識にズレをつくり出し、写真を抽象化する試みです。
新作となる「PP」は、抽象絵画の歴史を視野に田中が描いたペインティングに、様々な色に露光した写真(印画紙)を貼ることで構成されています。その構成は十分に時間をかけて考慮されたもので、田中はここで、繊細な印画作業による写真と即興性を帯びた絵画を、それぞれのメディウムやプロセスを維持しながら、ひとつのイメージへと統合「しようと」しています。
絵画と写真を「同一」のイメージに統合することで、そこに生じるズレを顕在化させる「pLastic_fLowers」。絵画と写真を「異なる」ものとして扱いながら、その関係に重点を置くことでイメージを発生させる「PP」。対照的なアプローチによる二つのシリーズ作品により「絵画と写真の二重性」を探求する本展では、鑑賞者はそれぞれ作品の視点・視野の違いをお楽しみいただけるのではないでしょうか。
本展『Self-Dual』では、2019年に制作した新作を発表します。 ひとつは2015年より取り組んでいる「pLastic_fLowers」シリーズの延長線上にあたり、その最新作となる「pLastic_fLowers Ⅲ」。もうひとつはまったく新しいシリーズとなる「PP」からの作品です。
「pLastic_fLowers Ⅲ」は、机上に置いた花瓶に活けられた花とカメラとの間に透明な板を立て、そこに花の様々な角度からの「見た目」をドローイング(あるいはペインティング)し、最後にペイントされた透明 な板越しに花を重ねて撮影する手法によるものです。 花は視界に入った瞬間に、それが花であると認識されますが、ここでは、花の像と絵画(ドローイングやペインティング)を同一の写真表面上に提示することによって、その反射的な認識のプロセスを意識的に引き 延ばすことを試みています。
「PP」は、カンバスに描いたアブストラクトなペインティングの上に、様々な色に露光された写真(印画紙)を貼ったものです。 抽象絵画の歴史を視野に、色彩や構図を直感的に決定しながら描く絵画制作は、まるで即興的なスナップショット写真の撮影のような感覚を持つものでした。一方、その上に貼り付けられた写真は、暗室での手 作業により一枚一枚の色彩や露光時間を注意深く調整したもので、それはまるでカラーフィールドペインティングを描くような感覚を持つものでした。
色面となったそれらの写真は(しばしばカッティングされ)ペインティングによる像に呼応したり、抵抗したりしながら、慎重かつ意図的に配置していきます。この作品では、「絵画」「写真」というメディウムを維持 しながら同一の作品上に共存することで、それらが逆転と回復を繰り返すことで、同時に互いを解体していくことを試みています。
本展『Self-Dual』では、絵画と写真の二重性を探求する「pLastic_-fLowers Ⅲ」と「PP」シリーズをあわせて展示することで、それぞれの視点・視野の違いを検証する機会であるとともに、この二つのシリーズ自体が時に重なり合い、時にズレることで、そこに「二重性」という構造の構築を目論むものです。
田中 和人
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