ベリーマキコ(Makiko Berry・1975年京都府生まれ)は、京都府亀岡市に生まれ、自然児として里山を謳歌する暮らしの中で自然への観察眼や好奇心を育んだと言います。1998年に成安造形大学日本画クラス研究生修了後に渡米し、メトロポリタン美術館東洋美術修復室に勤務。2008年の帰国まで、彫刻を含む油絵絵画の修復を手がける傍、版画作品の制作・発表、絵本の出版などに取り組む。帰国後に本格的に作家活動を再開し、2012年には『第4回京都日本画新展』にて大賞を、2016年の『第2回藝文京展~現代の平面~』では優秀賞を受賞。また、亀岡では現在も幼児~高校生の感性を磨く「のびなびあーと」の開講や日本習字の支部開設のほか、こども放課後活用プロジェクト「なないろのアトリエ」絵画指導、「文化を未来に伝える次世代育み事業 なないろのアトリエ」アート制作指導など、作家活動だけでなくアートを通じた教育にも力を注いでいます。
ベリーは絵の構想やモチーフを持たずに画面に向かい、まず自身の内から生じてくる何かを待つといいます。想うこと、思い出すこと、考えること、感じること。そうした意識と無意識の中で生じたイメージは、次第に筆と絵の具によって画面に現れます。瞬間的な作家の感性や内面だけではなく、現在に至るまでの経験や人生といった時間の厚みをともなうイメージは、画面内に広がりだけでなく奥行きとなって現れてくるようです。
ベリーはいつも自分自身を出発点に絵を描き、そこに現れた絵に自身を含めた様々なものを発見します。それはいわば自分への旅であり、絵はその旅先で彼女の目に映り、心に留められたイメージを私たちに伝えるものでもあります。
国内外を問わず活動し、「描くこと」について多様な素材や技法などを探求してきたベリーマキコの新作・近作およそ20点で構成する本展『日常という旅路』は、彼女の現在までの「遠く、外へ、未知へ」の旅の軌跡であるとともに、その旅は「日常」への真摯な眼差しからはじまるものであることをも感じさせてくれるのではないでしょうか。
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