ギャラリー・パルクでは、2012年の最後となる12月14日から27日まで、「row ── thickness:KIM Mitsuo works 金 光男 展」を開催いたします。
2012年に京都市立芸術大学大学院・版画科を修了した金 光男(KIM Mitsuo / 大阪・1987~)は、白く不透明なパラフィンワックス(蝋=ロウ)にシルクスクリーンによってイメージ(写真)を刷り込み、そこに熱を加えることで、個体から液体へと変容する支持体とともに定着したインクをも動かし、コントロール不能なイメージの崩壊を画面上にもたらす《row》シリーズを中心に、勢力的に発表を続けています。
「支持体とイメージ」がその関係性を失い、「蝋:インク」という等価な「物質」となって融解した後、冷えたロウが再び個体に戻るなかで、秩序を失ったインクは新たなイメージとなってそこに再定着していきます。これにより、刷り込まれた無機的で静謐なモノクロームのイメージは、ざわめくような有機的なノイズを帯びた様相を呈します。また、それはイメージ(写真)を物質の集合体へと置換・還元するとともに、総体としての「物質(=イメージ)」の姿を維持するかのようで、その矛盾が結んだ新たな「像」を見せています。
不透明から透明に、透明から不透明に変容する蝋、情報量(=ドット)はそのままに位置を変化させるインクの有り様など、金 光男はイメージを構成する要素である支持体(蝋)や情報量(インク)などを一切加減すること無く、ただそこにある秩序を奪い、イメージと物質をよりシームレスな関わりへと置くことで、常にイメージとしての総体を維持させます。そして、それは鑑賞者にとっての「見るべき対象=イメージ」としての秩序をも奪うものであり、イメージ:物質、平面:立体、高い:低い、薄い:厚い、ミクロ:マクロ・・・など、その視点の定まることのない視覚体験をもたらします。
初個展ともなる本展では、金光男がこれまでに取り組んできたこれら《row》シリーズの平面作品とともに、会場空間を活かしたインスタレーションをあわせて発表します。支持体とイメージの関わりに空間や鑑賞者からの偶発的な介入を呼び込み、さらにコントロール不能なイメージの融解を目論みます。また額やパネルから空間へと作品を解放することで、「イメージ:支持体:空間」の関係性をよりシームレスな結びつきをへと還元し、そこに様々な視覚体験を呼び起こします。
昨日僕は髭を剃りました。
2.3ヶ月ほったらかした髭を剃ったのは、伸びてしまったからです。 別に髭を伸ばして威張ろう、格好をつけようという考えは無かったので、剃りました。 僕の髭であったモノは今は僕のモノでは無くなり、排水溝を流れ、泡や、得体の知れないモノと混ざり、別のナニかになっていて、僕の考えを遥かに超えた場所で浮遊しているでしょう。 昨日まであった髭を剃ったのは伸びて邪魔だったからです。不安定な素材であるパラフィンワックスの上に、シルクスクリーンプリントでイメージを刷り、パラフィンワックスを熱で溶かす。 コントロールできずにイメージが崩れ、再定着する。 立ち位置が定まる事で自身が明確になるのか? 常に矛盾を抱えながら流動的でいたい自分と、立ち位置を定めたい自身が、せめぎ合うこと。
金 光男
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row - ude 2009 row - hon 2012 row - hane 2012 row - the kiss 2011 row - syatsu(左) |