Competition
タイトル画像

プランタイトル「Body temperature 38℃の記憶から」

出展作家:鯨虎じょう  
形式:個展(彫刻・インスタレーション)
開催:2020年 7月3日(金)~7月19日(日)

【ステートメント】
記憶を進化させていく行為を私は作品にしています。現代人にとって記憶の保存媒体は簡便になりました。スマートフォン1台あれば、文字も写真も音声も映像も常に大量に持ち歩くことが出来ますし、反対に削除することも簡単に出来ます。また、ネット上に半永久的に残すことも可能です。手軽に性能の高い質で過去の時間や出来事を残すことが出来る術の獲得は喜ばしいことでもあります。
しかし、なんてことないメモ、重要な思い出 身体の代わりのデータの中に、なにもかもを同じように身近に大量に保存したり消したりできることは、記憶と人との距離が近くなったというよりも、むしろ遠くなったのではないかと私は感じています。
記憶には人に過去を思い返させ、考えさせながら、その先に繋げていかせる力があると思います。その力を活用する為には、あえて簡単にしないこと、時間や手間をかけることも必要なのではないでしょうか。
私には焼き物を元にした熱で焼いて固くするという原始的な行為が、ある面ではスマートフォンよりも、もっともリアリティに記憶を昇華させる行為に感じられるので温度変化を用いた方法で作品を制作しています。ファンデーションの材料や骨の粉を素材にして、時間をかけてすり鉢で調合し、成形し、窯で焼いていくのですが、窯とはタイムマシーンのようなもので圧縮された時間を可視化させることが出来ます。それゆえに、温度や物質の変化といった作者以外の外部的な作用が大きく働き、それが形に視覚的に反映されるのですが私はそれを好意的に捉えています。それは、作者という人間1人の力で作品を完結させるのではなく、外部的要因に影響されて進化した軌跡を可視化できるからです。

【展覧会プランのコンセプトやテーマ】
「Body temperature 38℃の記憶から」という展覧会タイトルについて
Body temperatureは体温
38℃ は猫の平熱の体温です。

生物が記憶から 何を得てきたのか
生物の記憶は  何に変わっていくのか
記憶から進化へ発展させるということがこの展覧会のテーマです。

愛猫が急病にこの世を去った1月、私は今年2年ぶりに個展を開催したいと思いました。
日常的に窯で焼く行為をしている私にとって、1番大切な者の身体全てを焼く火葬の体験はとても衝撃的なことでした。
まだ生きている者にとって、本当の死の実感とは心臓が止まった時ではなく、焼かれて身体という入れ物がなくなった時に湧いてくると私は感じました。
愛しい何かの喪失、それは毎日世界のどこかで繰り返されるありふれたことかもしれません。しかし、自分が当事者になった時、特別なことに感じられることに気がつきます。

死の実感を境にして、その者に関する全ての記憶が過去のものになっていきます。
忘れたくないと思っていても、過去を忘れるという作用からは完全には抗えません。
忘れる ということは生きている者がこれからを生きる為に必要なことでもあるからです。
ですが、忘れられていく記憶という概念はその先どうなっていくのでしょう。

記憶のその後のゆくえとして、私は唯一残った愛猫の骨を使用して、進化の為の作品を死後の時間から作り始めます。
死後から始まる制作 それは過去生きていた時に記録した写真や映像や音声よりも、ある面でリアリティのあるものになると思います。
また、この制作と作品は、過去の記憶や過去の時間が消えて無くなり去っていくのではなく、新しい何かへと進化するための糧になるということの証明でもあります。

【プラン採択・実施にあたってのコメント】
2年ぶりの個展を開催させていただくことになりました。愛猫が急病にこの世を去り、遺骨を今後どうするかというきっかけから今回の展覧会プランを考えました。まず、ペットには戸籍がないので飼い主が忘れてしまったら彼らが生きていた痕跡が消えてしまうということ。それから、賃貸マンション1人暮らしで遺骨をどう供養するかの問題。それらを解決する生き方を考え練った展覧会にしたいと思います。

作家略歴

 

鯨虎 じょう|Isanako Joe

1994年 東京都生まれ
2015年 「鯨虎じょう」名義で本格的に発表活動を始める
2016年 多摩美術大学 美術学部 工芸学科 陶プログラム 卒業
2018年 多摩美術大学 大学院 美術研究科 修士課程 工芸専攻 陶研究領域 修了
2018〜2019年 すいどーばた美術学院 映像科・先端芸術表現科・建築科・芸術学科 助手
2019年〜現在 多摩美術大学 工芸学科 陶研究室 副手

主な展覧会

2019年 「鯨虎じょう・安田萌音」展(艸居 / 京都)
Open to Art. Ceramic Award (イタリア)
Design Miami(マイアミ)
2018年 ナンセンス陶芸(ヴァニラ画廊 / 東京)
アジア現代陶芸展2018(弘益大学 現代美術館 HOMA /韓国)
2017年 鯨虎じょう展( GALLERYなつか / 東京 )
2016年 言葉なんていらない(GALLERYなつか / 東京)
 
《719081》

《719081》

2018

陶 / 独自技法

W8.5×D9.5×H9.0cm

 

《51,73,2》

《51,73,2》

2018

陶 / 独自技法

W6.5×D10.5×H7.0cm

 

《orange.blue.ptpt-4》

《orange.blue.ptpt-4》

2019

釉薬 / 独自技法

 

 

《orange.blue.ptpt-3》

《orange.blue.ptpt-3》

2019

陶 / 独自技法

W5.8×D4.0×H10cm

 

《ChuCo☆Deco-3 ,ChuCo☆Deco-1, ChuCo☆Deco-2》

《ChuCo☆Deco-3 ,ChuCo☆Deco-1, ChuCo☆Deco-2》

2020

陶 / 独自技法

W8.0×D17.0×H6.5cm W8.0×D7.0×H14.0cm W10.0×D13.5×H5.5cm

 

 
空白