本公募企画は、今年から始まった展覧会プランを公募する新しいコンペティションである。だが、応募プランが「新しい」必要はなく、ましてや京都の土地柄を踏まえて「伝統」的である必要もない。今回選出された3名(組)のプランに共通する点があるとすれば、現象やアートの「新しさ」や「伝統」を問い直し、自身の世界(観)を固有の言葉や論理によって生みだそうとしていた点であった。
ASM実行委員会(企画:森川穣)のプランは、現代社会における地図感覚を美術作品に適用し、地図と美術の関係性を考察する企画内容が秀逸だった。また、プランにおいて明確に観客(他者)の存在が意識されていた点は特筆される。
薬師川千晴の「絵画碑」は、堂々と「絵画」をタイトルに掲げ、絵画史へと対峙する意志を感じた。会場で弓を射るという儀式めいた行為には不透明さが残るが、神話的な絵画の存在感に賭けてみたい。
むらたちひろは、ギャラリーのガラス窓と小上がりを用いて、染織表現の特徴を生かした展示プランに現実性があった。タイトルは内省的すぎるが、染織と絵画のボーダーを問う考察・実践の深化を期待したい。
平田剛志(京都国立近代美術館研究補佐員)
全体的に心惹かれる文章や作品も多く刺激を受けた。
ただ、資料を見ていて気になったのは、作品の完成度は高いが既視感のあるタイプが思った以上に多かったこと。自分の表現に似ている作品について、「知っている」ことは思った以上に重要であると思う。ただしこれは、鑑賞者側にも同じように知識がなければ意味をなさないことであると同時に、過度のオリジナリティ礼賛と歴史を学ぶ機会が少ない美術教育のあり方に問題があるとも言える。
更にもうひとつ、日常やありのままの姿をポジティブにとらえようとすることは、創作のモチベーションとしては希薄であり、それが作品の印象に直結していること。これは「共感は生むけれど感動はない」という現代美術の病かもしれない。
今回選んだ3つのプランはそこから抜け出してくるものであると期待している。
山本麻友美(京都芸術センタープログラム・ディレクター)