2018年10月19日〜11月4日

 

前川紘士:drawings A, drawings B,

  Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2018年10月19日(金)から11月4日(日)まで、前川紘士による「drawings A, drawings B,」を開催いたします。


 前川紘士(まえかわ・こうじ/1980年大阪府生まれ)は、『個人の持つ異なる複数の関心をひとつの主題に還元するのではなく、個別の対象との関係の中でそれぞれの機会の構造を知り、そこからどのような実感や可能性を見いだす事が出来るか』という思考に基づき、これまでに様々な活動をおこなってきました。近年、前川はスタジオをベースとした制作において、おもに「大きさ かたち 数」への関心に基づく制作に取り組んでおり、2015年のGallery PARCでの個展『Scales, others』や、2016年の個展『雫と規格 / テレコラージュ』(momurag・京都)においては、「一滴の雫」を単位として、滴下した雫をペン先で引き伸ばすことで現れるかたちを操作し、そのまとまりや関連の在り方を探る《 Space of drops 》シリーズや、単位を「両手のひらの中の空間」に置き換え、手と物質との関わりを考察する《 Space of hands 》シリーズなどを展開させてきました。



 本展「drawings A, drawings B,」では、前川が断続的に展開・発展させてきたこれらの関心に、新たに「触れること」を制作の条件に含めたものを合わせた複数のドローイングを展示いたします。ここでの「ドローイング」とは一般的な「完成作品のための下絵」といった意味合いよりも、「試作の繰り返しと調整による思考や制作の展開」という側面に注目したものです。本展に向けた前川の制作は、あらかじめ設定した方向性や条件を元にドローイングを行い、そこから得た気づきや疑問・自身の反応を以降のドローイングへ持ち越し、制作したものの観察や設定の再調整を行なう、という一連を繰り返すことで進められています。

 『かたちを捉え、操作し、そのやりとりを行う、といった人間の基本的なちからを改めて捉え直す、身体を通した思考/試行の現状を提示します』とする本展は、《 Space of drops 》での条件や思考を国際工業規格から導き出された規律や制度と重ね合わせ、そこで即興的なかたちの配置をおこなう《 Drops and standards 》、ラインテープによる厚みを持った線に触れ(撫で)て捉えることと、見て捉えることの異同や関係を探る《 Line tape drawings 》、左右の手で握ったもののかたちを頭の中で合成させることで、両目ではなく両手でかたちを捉えることと、情報の合成の関係について考える《 Synthesis of form from hands 》などにより構成されます。ここでは前川が近年進めているそれぞれのドローイングを「drawings A」「drawings B」といった具合に並列に提示することで、個々の作品としてだけでなく、仕組みの異なる作品群がもつ、固有性や類似性、相関・補完関係などを捉える視点をつくります。

また、「触れること」を要素のひとつとする本展において、一部のドローイングは「見る」だけではなく「触れる」という鑑賞(体験)も可能なものとして提示されています。それは厚みを持った線により、実際に触れることのできる本展DMにおいても体験することができます。

 また本展では、前川がこうした制作と並行して行なっている活動の中から、「社会の様々な場で作られた作品群の比較」に関する資料をあわせて提示します。これは前川が複数の場でのワークショップ・プログラムに関わる中で生まれた課題から関心を持ち、近年派生的にリサーチを行なっている「作品群であり資料群でもあるもの同士の比較」についての現状報告であるとともに、他のドローイング作品と合わせて提示することで、『仕組みの異なる複数の絵を集合として見る視点』について考察する機会ともなります。
 前川は形式や分類などに関わらず、その活動の全般において、自らの関心や行為が「どのようなもので」「どのように作用し」「どのようなものが生まれるか」という因果の回路を見定め、確かめようとしているように思えます。また、そこに自らをも因子として関わることで回路の振る舞いを実感し、その可能性をも積極的に捉えようとしているかのようです。

 前川の複数の関心を起点とした作品や資料を並置する本展において、個別の取り組みをそれぞれに鑑賞するだけではなく、それらがまとまりとしてどのような関連性を持つか、あるいはそれぞれにどのような関係性を見出すかなどに興味を向けお楽しみいただければ幸いです。



なお、10月27日 (土) 15:00より【アーティスト・トーク】を開催します。
また、前川は会期中の金・土・日は在廊しております。(ただし、26日(金)は17:00以降の在廊)

・協力: DM・バナーデザイン / 藤本敏行

 

【アーティスト・トーク】
日 時 : 10月27日 (土) 15:00〜

 




作家略歴

前川 紘士|Maekawa Koji

https://maekoji.exblog.jp

 

1980年 大阪府生まれ
2004年 京都市立芸術大学美術学部美術科彫刻専攻卒業
2007年 京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了

個展

2016年 『雫と規格/テレコラージュ』 momurag、京都
2015年 『Scales, others』 Gallery PARC、京都
2012年 『風景に同期する』 トレジャーヒル・アーティストビレッジ、台北、台湾
2009年 『仕掛け景色|ramble point』 mograg garage、東京

主なグループ展

2018年 『mograg 10th Anniversary Exhibition "てん"』mograg Gallery
2017年 『HAPPY SPOT FUTURE』奈良県文化会館、奈良
『むこうスタジオのオープンスタジオ 6』むこうスタジオ、京都 
2016年 『movements2016 1st』ARTZONE、京都
『さんかく工房展△』奈良市美術館、奈良 
『むこうスタジオのオープンスタジオ5』むこうスタジオ、京都
『ART1:Stepping into fresh snow』アートコートギャラリー、大阪
2015年 『GOOD BYE garage EXHIBITION』 mograg garage、東京 
『むこうスタジオのオープンスタジオ4』 むこうスタジオ、京都 
2014年 『雲の建物』 Q2、神戸
『むこうスタジオのオープンスタジオ 3』 むこうスタジオ、京都
2013年 『オープンスタジオ』 トーキョーワンダーサイト青山、東京
『京芸 Transmit program#04 KYOTO STUDIO』 @KCUA、京都
『むこうスタジオのオープンスタジオ 2』 むこうスタジオ、京都
2011〜12年 『奈良県障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA 2011-12 アートリンクプロジェクト』 奈良県文化会館、奈良
2011年 『むこうスタジオのオープンスタジオ』 むこうスタジオ、京都
2010年 『びっくり道場』 @KCUA、京都
『京芸 Transmit program#1 きょう・せい 第 2 期』 @KCUA、京都
2009年 『京都オープンスタジオ 4 つのアトリエ』 陀里、京都
2007年 『醜悪展』 陀里、京都
『FLY』 IAMAS、岐阜
『note.』 むろまちアートコート、京都
2006年 『pers』 同時代ギャラリー、京都

プロジェクト

2013年〜 『西成区単身高齢生活保護受給者の社会的つながりづくり事業 ひと花プロジ ェクト 表現プログラム 美術の時間』ひと花センター、大阪(センター登録者を対象に した月 1 回のワークショッププログラム)
2013〜14年 『CITY IN MEMORY -記憶の街-』 堀川団地、京都
2013年〜 『Basic Income Kyoto』 ソーシャルキッチン、京都
2012年 『奈良県障害者芸術祭 HAPPY SPOT NARA 2011-12 アートリンクプロジェク ト』 奈良県文化会館・オープンスペースAYUMI、奈良
2010年〜 『オープンキーホルダー』 @KCUA、京都/三条商店街、京都/super delux、 東京/GURA、京都/FLOAT、大阪など
『半外プロジェクト P&I』
2008年〜 『半外プロジェクト@KMiCH』 京都民医連中央病院、京都

その他

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2018年 『CREATIVE LOUNGE #01 隣の芝生は青いのか』MTRL KYOTO、京都
2017-18年 『アーティスト・サポート・プログラム enoco[study?]#5』大阪府江之子島文化芸術創造センター/enoco、大阪
2017年 『ひと花 かまがさき芸術資料庵』ひと花センター、大阪(プロジェクトの作品・ 資料公開企画)
『前川紘士と那須大輔によるアートワークショップ(ペンギンの合成)』奈良県文化 会館、奈良(ワークショップ)
『Kyoto Basic Income Weekend』本町エスコーラ/同志社大学 (ワークショップイベントとゲストを招いてのレクチャー企画の共同運営)
『3331 ART FAIR 2017 Various Collectors Prizes』アーツ千代田 3331、東京(アートフェア)
2016年 『アートミーツケア学会 2016 年度総会』札幌市立大学、札幌(プレゼンテーション)
『透明なキャッチボール』大阪成蹊大学、大阪(2週連続のゲストレクチャー)
『釜ヶ崎芸術大学 指示を回して大きな絵を描く』西成高校、大阪(ワークショップ)
2015年 『トークセッション 報告「障害とアートの相談室から」』東大寺総合文化センタ ー 小ホール、奈良
2014年 『奈良県における障害のある人の芸術活動に関する調査』 たんぽぽの家、奈良 (奈良県内の福祉施設・個人宅へ調査員として同行、報告)
『Hello! Bear』Banana Villa Residency、嘉義、台湾(2 日間の地域の子供と保護 者を対象にしたワークショップ)
『松を描く会』 釜ヶ崎狂言会、大阪(ワークショップ)
『Tokyo Wonder Site Art Cafe WINDOWS V ol.9 風景に同期する』(ASIA ANARCHY ALLIANCE 関連企画)
『the Basic Income Game COWRY』 ソーシャルキッチン、京都(カードゲーム を用いたワークショップ。Basic Income Kyoto のメンバーとして共同で開催)
2013年 『金沢彫刻芸術祭 2013 美術系大学彫刻シンポジウム』 金沢学生のまち市民交 流館、金沢(パネリストとして参加)
『トレジャーヒルアーティストビレッジでの滞在制作報告会』 NPO 法人こえと ことばとこころの部屋、大阪
『トーキョーワンダーサイト 二国間交流事業 帰国報告会/展示』トーキョー ワンダーサイト、東京
『what(n)ever トークイベント』コーポ北加賀屋、大阪(グループ展「what(n)ever」 のトークイベントにゲストとして参加)
『アーティストインレジデンス帰国報告会』京都市立芸術大学、京都(プレゼンテ ーション)
2012年 『ものまね関係』 トレジャーヒル・アーティストビレッジ、台北(ワークショッ プ)
『レクチャー』 修平科学技術大学、台中、台湾(レクチャー)
『日本ボランティア学会 2012 年度北浦和大会』 北浦和ふれあい商店街、埼玉(プレゼンテーション)
『ハンソトニテ』ボランティア学会 2012 年度学会誌への寄稿 『ART INTERVIEW』Antenna MEDIA、京都(プレゼンテーション)
『野良人類学会 不確かさを生きる技法 ̶ コミュニティー難民という視座』 GURA、京都(勉強会)
2011年 『アートミーツケア学会 2011 年度総会』 京都造形芸術大学、京都(プレゼン テーション)
『巨大ペーパークラフトを組てよう』FLOAT、大阪(「第1回 DIY OSAKA ZINE FAIR」というイベント内ワークショップ)
『3D スキャンワークショップ』GURA、京都(共同スタジオGURAでのイベン ト「G祭」内での大喜多智宏とのワークショップ)
『@KCUA サマーワークショップ 「びっくり道場」ドキュメント』@KCUA、京都 (ワークショップに関する記録集共同編集)
2010年 『アートミーツケア学会 2010年度総会』 せんだいメディアテーク、宮城(プレゼンテーション)
『THE NY ART BOOK FAIR』 MoMA PS1、New York、アメリカ(ZINEの展示)
『連続ワークショップ企画 びっくり道場 ウォーキング・ウィズ・ベアー』@KCUA /三条大宮児童公園、京都(ワークショップ)
『連続ワークショップ企画 びっくり道場 巨大ペーパークラフトを組み立てよ う!』@KCUA、京都(ワークショップ)
2009-10年 『ForGAZA(vol.1~3&映画館)』Urbanguild、京都(moro2のメンバーとし てパレスチナへの空爆に関する勉強会/チャリティーイベントの恊働企画・運営を計4回)
2004-06年 『発達障害を含む児童との関わり』発達支援センター結崎アカデミー、奈良 (2ヶ月に1度のペースのワークショップ企画・運営)

アーティスト・イン・レジデンス

2014年 Banana Villa Residency 嘉義、台湾(14 日間)
2012年 トレジャーヒル・ アーティストビレッジ 台北、台湾(90 日間) 東京ワンダーサイト、東京-トレジャーヒル・アーティストビレッジ、台北 二国間交 流事業プログラム(招聘)

受賞

2006年 京都市立大学制作展奨励賞

 

 

「Scales, others」展示風景

個展「Scales, others」展示風景
2015 / Gallery PARC、京都
撮影:守屋友樹
©Gallery PARC

「Scales, others」展示風景

個展「Scales, others」展示風景
2015 / Gallery PARC、京都
撮影:守屋友樹
©Gallery PARC

《Hands projection_models of scale connectors》 2015  Gallery PARC撮影:守屋友樹©Gallery PARC

《Hands projection_models of scale connectors》

2015  Gallery PARC

撮影:守屋友樹

©Gallery PARC

《Hands projection_models of scale connectors》 2015  Gallery PARC撮影:守屋友樹©Gallery PARC

《Hands projection_models of scale connectors》

2015  Gallery PARC

撮影:守屋友樹

©Gallery PARC

「雫と規格/テレコラージュ」展示風景

個展「雫と規格/テレコラージュ」展示風景
2016 momurag、京都
撮影:夏池風冴
©Maekawa Koji

「雫と規格/テレコラージュ」展示風景

個展「雫と規格/テレコラージュ」展示風景
2016 momurag、京都
撮影:夏池風冴
©Maekawa Koji

《50 twice_Space of hands》

《50 twice_Space of hands》
2016  ART COURT GALLERY、大阪
撮影:来田猛
©Maekawa Koji

《D50の時間 remix》

《D50の時間 remix》
2017   奈良文化会館、奈良
撮影:夏池風冴
©Maekawa Koji

《D50の時間 remix》

《D50の時間 remix》
2017   奈良文化会館、奈良
撮影:夏池風冴
©Maekawa Koji

ひと花かまがさき芸術資料庵 2017

ひと花かまがさき芸術資料庵 2017
2017 ひと花センター、大阪
撮影:夏池風冴
©Maekawa Koji

「ecoco[study?]#5」アトリエ

「ecoco[study?]#5」アトリエ=資料室風景
2017~2018 大阪府立江之子島芸術文化創造センター enoco、大阪
撮影:麥生田兵吾
©Maekawa Koji

 

 

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