本展は様々なクリエイション活動へのサポートの一環として、広く展覧会企画を公募し、厳正な審査により選出されたプランを展覧会として実施するコンペティション「Gallery PARC Art Competition」の採択プランによる展覧会です。
2014年から毎年開催し、本年で5回目となる「Gallery PARC Art Competition 2018」は、応募された66プランから平田剛志(美術批評)、勝冶真美(京都芸術センタープログラムディレクター)の2名の審査員を交えた厳正な審査を経て採択された、森岡真央「ママ、きいてちょうだい」、平野泰子「呼びかけられる」の展覧会を7月~8月にかけて連続プログラムにより開催いたします。
本展覧会のタイトル『MAMA! KIITE CHOUDAI.』は、『きらきら星変奏曲』の副題『Ah, vous dirai-je maman』から引用したものです。この楽曲は主題のメロディの変奏を繰り返すことによって構成されています。その様は私の現在の制作(『Component of..』シリーズにおける展開)に近いものを感じました。おそらく私の主題は絵を描くことにあたり、今もその渦中にいます。
また、この「ママ、きいてちょうだい」のフレーズは、私がまだ子供であることを示唆した部分でもあります。初めて絵を描いた日のことは覚えてはいませんが、あの頃に感じた描くことの楽しさや喜びがずっと続いていて、私はまだその頃のままだということを指しています。
現在、画材や東洋美術の魅力に惹かれ、日本画を描くようになりました。日本画の画材は天然の岩や宝石、貝殻などを元に作られています。塗り重ねることによって現れてくる物質感は、元の素材に戻っていくような、近づいていくような感覚があります。また、接着剤に使われるのは動物の皮膚や骨、腱から抽出されたコラーゲンです。昔から変わらない素材や技法は、現代にある描画材に比べると煩わしいことが多いです。しかし、結果としてその煩わしさは制作行為の一部であり、表現に繋がっているように感じています。
本展覧会では近年制作を続けている『Component of..』シリーズの新旧作品を展示します。2Fには本シリーズの初期の作品を、4Fには新作にあたる作品を展示することで、作品と取り組みへの理解を促せればと考えています。
森岡 真央
近年制作を続けている《Component of..》シリーズは、ドローイングで描いた線と、線を始点にそこから着想される面によって制作しています。 「線から面・面から線」への変換を繰り返しながら、いつしか線とも面とも言える(言えない)“イメージ”が出来上がり、そこから必要なラインを転写します。
また、イメージはそのままに、転写後も線と面の往き来は続き、いつしか面は絵の具の厚みによる“マッス”に変換していきます。 私は行為の繰り返しと事象の転換に注目しながら、日本画を制作しています。