Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、2016年最初の展覧会として1月8日(金)から1月24日(日)まで、泉 洋平による個展「意識のスペクトル」を開催いたします。
2006年に京都精華大学芸術学部造形学科洋画専攻卒業、2008年に同大学大学院芸術研究科博士前期課程洋画専攻修了した泉 洋平(いずみ・ようへい/1983年・京都府生まれ)は、2005年ごろより個展などでの発表に取り組んでいます。
泉は私(鑑賞者)の外(可視・認識される世界)と内(不可視・認識やイメージの生成のための意識や記憶)との間に起こる相互の作用や変化について、ささやかな気付きをもたらすかのような作品を創出します。そのため、泉は「身体(内)を規定する空間(空間)」を設定し、その接点としての「視る」に着目した作品を制作します。
当初は「視覚」を主題に絵画による作品制作に取り組んでいた泉は、2010年ごろより作品の性質をインスタレーション的な方向へと変化させています。日常の空間に無数の糸(ミシン糸やテグス)が張られ、糸の交錯や重なり、光の入射と鑑賞者の視点との関係において、そこに実体を持たない「存在」が浮かび上がるインスタレーションは、その体験を作品として提示されたものといえます。たとえば、自らも運営者のひとりであったstudio90(京都)での2012年の個展「いくばくの繭」では、展示室内に、ある法則に従い無数の糸を張り、空間の中心部分に繭型の存在が現われるもので、窓からの自然光と鑑賞者との位置関係により屈折した光によって、そこに「確かに無くて、確かに在る」という存在を描き出しています。
ここでは鑑賞者は空間の中で身体を揺さぶり、視点と視線を変えながらこの「存在」を見ようとします。そして、この「視覚」を通じた体験の中で、『「在る」を前に「無」を考え』、『「無」を前に「在る」を考える』かのような思考の揺れ動きをも体験することになります。
本展は時間帯によって様々な光が射す半面ガラス張りのギャラリー・パルクの空間に、およそ1400本ものテグスを放射状に差し込む大型のインスタレーションです。無数のテグスはあたかも大きなプリズムとして機能し、普段は意識の外に置かれている「空間に溶け込んだ光」の存在や振る舞いを表出させます。そして、これは観賞者の身体を接点あるいは境界として、外(空間)と内(意識)への自覚や、相互に起こる変化と作用への気付きを促す視覚体験となるのではないでしょうか。
瞬く間に起こることや極めて小さなことを引き延ばして体験したいと私は思う。
それは目の前に起こる変化と、それを前にして自分の内側に起こる変化とをつぶさに観察したいためだ。
しかし世界は複雑に絡まったり、滑らかに溶けあったりと観察しやすいとは言い難い。紐解いていくことが必要だ。
今作ではギャラリー空間に放射状のプリズムとしてテグス糸を差し込み、空間に溶け込んでいる光と観賞者の身体を引き剥がし観察しやすくすることを試みた。
「日常の中に溶け込んで、意識の外に置かれているものは何なのか」これらを考えるきっかけになればと思う。
泉 洋平