Gallery PARC[グランマーブル ギャラリー・パルク]では、3月26日(土)から4月10日(日)まで、迎英里子による展覧会「 アプローチ2 [石油] 」を開催いたします。
2015年に京都市立芸術大学大学院生美術研究科彫刻専攻を修了した迎 英里子(むかい・えりこ・1990年・兵庫県生まれ)は、「物事の理解に近づく方法を模索しています」として、身の周りにある自然や社会の現象(仕組み)などをシステム(装置)に変換します。そして、それは分かりにくい現象や可視化出来ない事象を簡潔に表すことが目的ではなく、その過程にある「理解へのアプローチ」に主眼があるものといえます。
京都市立芸術大学在学中の制作に見られる、DNA螺旋構造をモチーフとした鉄の彫刻《DNAが開くモデル》(2012)※1 や、植物の開花のメカニズムから発想された《細胞の数の増加による開花》(2013)※2 などは、ある現象や仕組みをモチーフとして、それを手によって再構築するプロセスを持つものです。思考と素材を手によって介在し、制作を通じてモチーフをより身体的に理解しようとするこの行為は、その後、ある現象から抜き出した動作を実際に自身でおこなう「実践(パフォーマンス)」によって、より積極的に身体を介入させるものへと進められています。
《食肉の流通経路》(2014)※3 や《水蒸気のための舞台》(2015)※4 では、この「無関係と思われた現象に直接的に関わる状況をつくる」こととして、パフォーマンスに取り組んでいます。これは現象を「動作」として取り出し、それを身体によってトレースすることで、対象への「実感」を伴った理解に近づくことができるのではないか、との考えによるものです。これは、ともすれば「無関係」でもある現象への介入により、そこに主体的な関
係を持つことであり、「わからない」ことを「完全にわからない状態ではない」とする、「理解」に近づく方法のひとつとして取り組まれています。
タイトルを「アプローチ[石油]」とする本展では、迎によって会場に設置されたシステム(装置)を用い、会期中の土曜・日曜・火曜と合計20回の実践(パフォーマンス)がおこなわれます。また、それ以外の時間帯には、実践のおこなわれた装置とともに、その記録映像を展示するものです。
会場撮影:麥生田 兵吾
【作品資料】
※1 DNAが開くモデル 2012
※2 細胞の数の増加による開花 2013
https://www.youtube.com/watch?v=DxqNqjijivs&list=PL5sWPNtetsCWpx1uvTgNVAdqCuiKsdy_6&index=4
※3食肉の流通経路 2014
https://www.youtube.com/watch?v=7ylOlc8WjEg
※4 水蒸気のための舞台 2015
https://www.youtube.com/watch?v=1iwYN4q7KsI
私の作品は世の中にある様々な現象をモチーフに、大幅に手を加えて別のシステムに変換しています。
新しく作られたシステムは一見すると何をしているのか、意味がある行為なのかどうかわからない。しかし行われている動作を感覚的にトレースできるため、完全な思考の放棄はされない。観客は宙ぶらりんの状態で、直接的な説明のないまま想像を巡らせます。
実践が終わった時、元になったモチーフの仕組みと観客が体感した動作を重ねあわせると、モチーフに対して知識だけでなく、身体的な実感がほんの部分的にでも得られるのではないかと考えます。
迎 英里子