Gallery PARC[グランマーブルギャラリー・パルク]では、2月23日(火)から3月6日(日)まで、但馬摩衣子による個展「たらちね」を開催いたします。
2011年に成安造形大学芸術学部研究生を修了した但馬摩衣子(たじま・まいこ・1987年・兵庫県生まれ)は、手描きによる柔らかな線と木の風合いを持つ木版リトグラフの手法を用いた版画表現を手がけています。
『江戸春画を題材に、独自に物語を紐解き男女の情事、情念を描いてきました。作品を通して鑑賞者の体験と、作品の中の男女がリンクするように「無さそうでよくある話」をテーマに描いています。』とする但馬は、江戸の男女の恋愛・性愛・風俗を描いた「春画」を引用し、そこに今日的な恋愛観や倫理観、あるいは但馬自身の個人的な経験などを重ねることで、男と女にまつわる独自の物語(情景)を紡ぎだします。画中に描かれる複数の男女は、表情は無くともその仕草や位置関係からまるで何かの一場面でもあるかのような情景を思わせます。男女の狭間には不思議な生き物や食べ物、時になにかオドロオドロしく漂うイメージや記号などが漂いますが、それらは相まって男女の間の情念にも見えます。また、男女の間にある、こうした様々な綾は、鑑賞者にとって自身と重ねる拠り所ともなり、奇想の画面にどこか生々しいリアリティを覚えさせます。
女性の生き方が多様化する現代において、結婚・出産という個人的な経験の中で感じた「生きづらさ」を作品に昇華させたという但馬は、本展タイトルを「たらちね=垂乳根」としています。「母」「父」「親」の意を持つこの言葉には、「女性」であり「母」であり「親」であることの現在の自分の中にある葛藤や弱さとともに、それらを引き受けていく強さをも垣間見ることが出来るのではないでしょうか。
尚、本展会期中の2月27日(土)には、宗教考古学者・歴史学者・法制史家である小出一冨(こいで・かずとみ)氏による江戸春画の見方やその魅力についてのレクチャー『春画にみる人類の性と生と死』とともに、小出氏と但馬のギャラリートークをあわせて開催いたします。