正直に言うと最初は「めんどくさい」なと思ったんですよ。石をやっている人間からすれば制約が多いので。でも、特別なこと、奇をてらうようなことはしたくないし、そういう時間もあまりなかったので、とりあえず(封筒の)厚み3センチ以内で出来ることといえば小品になるので、その方向で考えていきました。もともと、あまり小品を作らないタイプなんですよ。小品を作るとしたら大きい作品をつくるための試し、みたいなところがあるのと商売っ気がないものですから。その点でも、今回は商売っ気を多少出さなければいけない、つまり買ってもらうために、売るためにつくるというのが前提になってくるので、その点は、普段自分がやっていることとはズレるんですけど、あえて挑戦したいなと。
手のひらサイズの石彫の作品を4回に渡って送ります。3センチの厚みで手で持つことが出来るものを考えて、置物というよりは手で持って愛でるものになりました。その物と自分の関係、実際に持って重さを感じつつ撫で回す...そういう接し方が出来るものにしようと。実物をつくっていっている途中でそう考えました。
実は、それほど重くないですよ。1kgも無いと思う。物の重さの基準は先入観というか、「石 = 重い」と思ってるんですよね。量ったら思ってるより軽いはずです。むしろ厚み3センチという制限の方が難しかったですね。石の作品でいうと3センチというのはそれほど薄くなく、もっと薄くすることも出来るのですが、自分が今やっている「石を刻む」という仕事で3センチの厚みでしっくりくる感じに仕上げようというのが。でも、ものと自分との関係というところで、意外とその制限の中で遊べたかなぁと。普段、3センチの厚みでものを作ろうとは思わないですが、これはひとつ選択肢が増えたなと思っています。なんかいいですよ。これ。
参考写真として載せているものとは少し違うものが届きます。つくってみると他に気に入るものができたので。その時の気分で変わってしまうところはありますね。どれに対しても愛情はあるんですが。初回はこのタイプで。次回は売れてから考えようと思っています。同じ厚みの中で違うことをやろうかなと。今回は平たいタガネでつくったけれど、次回は違うものを使うなど、考えているところです。初回の作品も、2日以上かかってますからね。とりあえずつくってみて、なんか違うなと思ってまたいじって、何日か置いてまた見るというように。3個つくるのに1週間以上かかりました。全部ひとつひとつ違いますし。
分身みたいなものだと思います。もっと小さいものもつくることが出来るし、もちろん大きいものもつくることが出来る。ただ、これ以上大きいと部屋においた時に邪魔になってしまうかなと心配で。実際、買いやすい・売りやすい大きさを考えた時にこれぐらいがいいのかなと。
基本、手に持つとことはしないですよね。買ったら持てるけれど、それもある程度の大きさの作品が多いから手に持つという感じではない。これに関しては手に持ってひっくり返したりとか、いろいろ触ってみてほしいです。
道端に落ちている石とかあるじゃないですか。それとこれを持った時の違いはありますね。私が加工している・彫っている、彫られたものとしての石と、自然に落ちている石と、重さは一緒としても、全然、質が違う。それもまた楽しめるのではないかと思います。前から思っているのが、違和感があるけれど不自然じゃないものを作りたいということです。加工している以上、決して自然ではないけれど、不自然でもない。そういうものを小さくても大きくてもいいからつくりたいなぁと。
そうですね。最近知人の作家の方が亡くなったのですが、その方に作品を買っていただいたことがあるんです。それってどうなってしまうのかなぁと思っていて。本当に漬物石みたいな作品。
作品と思われずに捨てられてしまう可能性もありますよね。
石とドローイングはいつも並行してやっているので、それぞれを交互に送りたいと思っています。ドローイングは2種類あって、スクエアのものと、最近やっている放射線状に外側に広がっていくものと、それぞれ送ることで私の仕事を見ていただければと。それに、普通に「石を4つ」となると心配になってしまいますよね。自分の家にすら4つ置いてないので...
10センチぐらいでしょうか。それほど大きくないと思います。ですが、それなりに重いと思います。4キロぐらいはあるでしょうか。家に置くのは大変ですよね......。家に置くという尺度で石彫や石のことを考えることってほぼないですよね。これまではあくまでも展示というかたちでしか考えてこなかったけれど、今回は自分の実体験・実空間に即して考えざるをえない。「石がくる」、「石を(自分の生活の中に)置く」。そういう価値観で作品や物を見てこなかったので、面白いなと思います。