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[m@p] Artists Interview
個展「 GUTIC i wa born」展示風景(2017, Gallery PARC)
─スタンダードプランについて  (取材日:2020.8.)

いろんなアプローチで「グチック」という存在を探すということをやっているので、各シリーズの小品で主要な作品を楽しんでもらおうと考えました。[m@p]は買ってくださる人とのやりとりがあるということから、最初はひとつの作品を描く過程で現れたグチックをスキャン・印刷したものを3回に分けてお送りし、最後にオリジナルをお渡しすることで、最終的なひとつの作品が持っていた変遷やプロセスを楽しんでいただこうというプランを考えていました。ただ、それで試作をしてみたら、良い作品ができちゃったんです。「この状態で止めておきたい」というのが出来てしまって、その状態の作品を持ってもらいたいという思いが出てきたんです。魅惑的なものが出来てしまって...しかもそれで新しいシリーズが出来てしまったんです。出来ちゃったんで、スタンダードは、やりとりの中で作品が仕上がっていくということをやってみようとした試みの結果として、やっぱり1点1点持ってもらいたいということになりました。

2回目封入内容 参考作品《GUTIC MORPHOLOGY sシリーズ》
─スタンダードはすべて新作?

参考写真として出しているのは、前につくったものですが、お送りするのは全部新作です。1回目をお選びいただいて、その後にお送りする作品の選択は、購入者のことを考えながら僕のこだわりで決めます。これが来て、次にこれが来たら楽しいかなと思って、押し売りのようですけど。2回目以降は「この作品いいでしょ?」という僕のレコメンドです。

「Unlimited Drawing Limited Edition」制作・撮影風景
─プレミアムについて

こちらについても、最初に送った作品を購入者の方に送り返してもらって、それに描き直していくということも考えたのですが、それだと作品が最後の1点しか残らないという矛盾があるので、途中経過はジークレープリントを毎回送ることにして、最後はジークレープリントと描いたものを消してしまった実物のキャンバスを送ります。イメージとして残る作品はジークレーと最後に送る映像だけで、実物のキャンバスにはイメージは残りません。ひとつの作品の過程を手にしていただくというものです。

─映像は買った人だけが見ることができるんですよね。

そうですね、買っていただいた方の許可がない限りは公開しないし、その人のためだけにつくったものになります。

3回目封入内容 参考作品《GUTIC MORPHOLOGY Fシリーズ》
─[m@p]には何が届くかわからないという「未知」の部分があるのですが、そういった要素についてはどう考えられていますか?

最初は作品を選ぶことができないというのが、不安にさせる要素になるのではないだろうかと思いました。ただ、それもまた考えが変わって、スタンダードについては、1回目は作品を選んでもらうので、2回目以降はレコメンドするというか、作品の選択は任せてもらえればと思っています。プレミアムについては自分でも何が出てくるかわからない作業がずっとあるので、まだ1回目のかたちも「今のやつどうかな、まだ描こうかな、どうしようかな」という状態なんで、自分の中でずっと未知でやっている部分を一緒に体験してもらえたらと思います。一本線を足すか、引くかでどうなるかわからないという緊張感が作品には常にあるので。最後に制作の過程を10秒単位で記録し、映像化したものも送ります。これにより大きく4回に分けた過程の追体験とともに、さらにその狭間にあった過程のすべてを10秒単位で見ることができる。その人だけがプロセスを所有してもらえます。普段の展示でも同じことを見せているつもりですが、やはり画面の向こう側の出来事として見えてくるということがあるので、それを今回のプレミアムに関しては、より強く、よりダイレクトに僕の作品を体験してもらえればと思っています。

4回目封入内容 参考作品《GUTIC MORPHOLOGY Umシリーズ》
─ 一年という時間がありますしね。

一年で4回送る中で、今こうなっているんだというもの、かたちが勝手に変わっていっていくのを見ていただき、1年後に実はその4回の間にもこれだけのことがあったんだというのを体験してもらえるのではないかと。実は、本来そういうかたちで発表することが正しい作品なんじゃないかと思うぐらいなんです。実際は、過程の中でいろんなかたちが現れては消えていくんで。たとえば展覧会では、結果・結論が展示されていて、そこから過程を想像してもらうことになるのですが、実際は途中でいっぱい出てくるんです。本来であれば6月に個展を開催する予定でしたが、1回の展示で一気に見せるよりも、ひとつひとつを手元で見てもらうことや、プロセスという時間を見てもらうであるとかは、もしかしたら本来の僕のつくりかたや出来てくるものに合ってる方法かもしれないと思います。もちろん、今後も展示はしたいですけど、今回は新シリーズも出来たし、良い作品が出来てきていると思います。

─他の作家さんで気になる人はいますか?

ヤマガミユキヒロさんはいいなと思いますね。徐々に描き重ねていくというのは、今回の[m@p]にはまっているなと。そして、みなさん、普段と違う小さい作品としての完成度が高いものが手にはいるので面白いなぁと思います。