Top

Previous page

[m@p] Artists Interview
ヤマガミユキヒロArtist Info[m@p]meet @ post
「遠近の印象 Perspective of Impression」展示風景 (2019年, Gallery PARC)
─[m@p]のプランを考えるにあたり考えたことは?  (取材日:2020.8.)

僕たちはつくることはできるんです。ライブや興業がひとつの完成形であるような音楽や舞台系の人たちとは少し違って、造形美術の場合は作品の完成はアトリエでもできる。となるとほとんどの人が、大きく制作スタイルは変わっていないのかなと思います。ただ、僕たちにとって一番大事なアウトプットである展示・展覧会をすることができない。つくることはできるけれど見せられない、という中で、どのように新しい発表のスタイルや機会をつくるかということを考えてました。その中で[m@p]の話を聞いた時、最適解だなと思いました。現状ですぐ出来るし、オンラインビューイングよりも作品鑑賞の体験に近いのではないかと。もちろん規模が小さいし、インスタレーションにはしづらいけれど、見たときの感動は、オンラインよりもはるかに情報量が多いので、いいなと思いました。

スタンダード 参考画像
─[m@p]のプランについて

自分が今までやってきた作品というのは、絵画に映像プロジェクションを使っていろんな風景の移ろいを見せるというものなのですが、それは、朝昼晩、春夏秋冬全部描きたいということからなんです。でも描けないから映像を使っています。そこからの展開で、[m@p]では映像は使えないけど1年間という時間があるので、それだったら1年を通して加筆しながら、いろいろな光景をお見せすることができるのではないかと思いました。

スタンダード 参考画像
─ スタンダードの内容は?

最初の3ヶ月間、まずは鉛筆画だけの状態を見ていただき、3ヶ月後には僕のところに返信用封筒で戻していただきます。それにどのようにするのかはまだ思案中ですが、アトリエで加筆してまたお送りして、最終的にどうなるかは僕もまだわかりませんが、一枚の絵が変化していく過程を楽しんでもらえたら。これは通常の作品販売だと絶対にできないことですが、[m@p]だとそれができます。加筆の方法は今の時点では色鉛筆でしようかなと思っています。

プレミアム 参考画像
─プレミアムの内容は?

スタンダードと同じく加筆していくプランですが大きな違いがあります。僕が主にやっている「キャンバス・プロジェクション」のシリーズでは、移り変わらないものを僕が描いて、移り変わるものを映像にするというように分けてやっていたのだけれど、今回のプレミアムでは移り変わるものを描きます。プランでは一番綺麗な状態の花から、それが枯れるまでを僕が描く、一枚のキャンバスに加筆して行きます。ジャコメッティみたいに油彩で下の絵を覆いながら加筆するというやり方ではなくて、あくまでも鉛筆で上に上に重ねていくという形で描いていきます。絵画は通常、一番最後(表面)に乗った絵具が見られるのですが、今回はその途中段階を誰かに見てもらうことができます。

─ どのぐらいの時間で加筆するのですか?

スタンダードは上から重ねるので、実験しながら、戻ってくる時に向けて用意ができるけれど、プレミアムは大変で、少なくとも1週間は加筆の時間をもらいたいなと。もちろん戻ってくるまでに練習はしますが。描く時にならないとどうなるかわからないので。

─ 花が枯れていく様子はすでに撮ってあるのですか?

実物の花が枯れていく様子をすでに撮影していて、一番綺麗な段階のものはすでに描いていてそこで止めています。水を入れてお花が枯れるまでだいたい1ヶ月ぐらいかかったので、膨大な量の写真があります。

個展「鴨川の印象」(2020年, 京都府立文化芸術会館 / 京都)
─ 展示作品とは違い、一人だけがその変化を見れるということ?

はい。ただ買ってもらった人にはSNSにアップしてもらってもいいと思っています。「あの時の方が良かったのに」とその人から言われるかもしれないけれど、それでもいいのかなと思います。そんな感じで真面目に、楽しみながらやっています。

個展「air scape/location hunting」(2017年, Gallery PARC, 京都)
─ スタンダードは購入者それぞれに別の作品が届くんですよね?

そうです。京都、佐賀県、オーストラリアとこれまで僕が仕事で訪れた場所で、描いたけれど発表できていないものばかりです。そういうものをこの[m@p]の中で発表できたらと思いました。京都のよく知られた鴨川の風景も、佐賀やオーストラリアという行ったことがないかもしれない場所も、絵葉書の旅のように散歩したり、旅行しているような感覚になってもらえればと。

「遠近の印象 Perspective of Impression」展示風景 (2019年, Gallery PARC)
─ 現在とこれからについては?

これまで、割と大きなサイズの作品をつくってきたのですが、今回の[m@p]のA4サイズはそれはそれでいいなと思いました。額に入れてみたけれどとても良いし、デスクの横に置いておきたいと思いました。また、ちょうど今、これまでの作品の中で一番大きい8m以上の作品を同時に制作していて、一番大きいものと一番小さいものを同時にやっているのも面白いです。大きい方は身体感覚としては絵画というか壁画のようなんです。[m@p]の方はこちらが、小さくなっていくようなバーチャルな世界観。今まで自分が小さくなってその世界に飛び込むというような感覚を考えたことがなくてつくっていなかったけれど、それがまた楽しい。大きな作品を毎日眺めて「まだまだ全然描けていない」とため息ついては、A4のスケッチブックに描いていくのが楽しくて、気晴らしになっています。

─[m@p]の他の参加作家で気になる作品はありますか?

田中秀介さんの作品です。山添潤さんのも気になるけれど、僕は平面をやっているので平面の作家が気になります。