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[m@p] Artists Interview
ふるさかはるかArtist Info[m@p]meet @ post
個展「トナカイ山のドゥオッジ」展示風景(2014, Gallery PARC)
─[m@p]について

Gallery PARCがスペースとして6月末で一旦閉じるというのを知ってから、割とすぐに[m@p]というプロジェクトを開始するというアナウンスをみて、『次のアクションとして、このスピードで、こういうことを考えているんや』と思いました。また、プロジェクトの「ポストで未知と出会う」というコンセプトについては、木版画でも戦前に「創作版画誌」というものがあって、郵便を使ってポストで作品をやりとりするという歴史があったので、私も何かできそうと思っていて、[m@p]参加の打診をいただいた時は、水を得た魚ではないですが、すごくいい機会もらったと嬉しかったです。

個展「トナカイ山のドゥオッジ」展示作品
─参加についても即答で、プランもかなり早い段階から出していただきました。

2014年のPARCでの個展の後、2017年に国際芸術センター青森で展覧会やワークショップをしたのですが、その時に取材したことをもとに、それを反芻しながら作品構想をずっと練っていて、去年の暮れあたりからかたちになり始めていたんです。実は、それが固まってきたので、どこかで展覧会の話をしにPARCに行こうと思っていた矢先のコロナ、閉鎖だったんですが。いずれにせよ、青森でやってきたリサーチの断片みたいなものをアウトプットしたいと考え、助走していた部分があったので、[m@p]には取り組みやすかったです。スタンダードとプレミアムでできることも違うから、そこでリサーチしてきたことの違いを出したいなとも思いました。自分がやってきたことがもともと重層的で、いろいろ調べたり、想像したり。フィクションとノンフィクションを同時並行でやっている感覚があるので、それをスタンダードとプレミアムで分けて扱おうかなと思いました。

スタンダード 初回お届け作品 《Leaving》
─ふるさかさんの仕事の重層的な部分が「4回に分けて発送する」という構造の中で整理され、活かされているような印象があります。

そうですね、すごく整理できたんです。一つひとつの絵は脈絡がなかったりするんですけど、時間軸も4回に分かれているということで、ひとつのシークエンスみたいなものがあると考えています。本を読み進めるようなページの展開としても捉えられるし、版画のレイヤーのようにも捉えられる。絵画はやはりレイヤーでつくっていくという点でも、仕組みと絵がフィットしやすかったというのがあるかもしれないです。私が作品を物質的側面でも扱っている作家だからそう思うのかもしれませんが。スタンダードは予算も限られているので材料費を絞らないといけないということもあり、今回はひとつの木を割っていくというコンセプトになっているのですが、材料を一つに限ってみるとか紙のサイズをA4に限ってみるとか、コンパクトにできることを考えてみました。

この版木を木目に従って割り、その割れた形に沿って2作目以降の作品が展開します。
─スタンダードについて

スタンダードでは、4回とも同じひとつの版木を使います。参考写真で出ているのは割る前の木ですが、次は割ったかたちと私が書いているエッセイと自分の考えをすりあわせて、絵を描いて、刷って、その次も割って…だから徐々に木が小さくなっていくんですけど、そこから一本の木が変化していく様を観察してもらえるような絵にしたいと思っています。

《Leaving》部分
─イメージは小さくなっていくけれど、シートサイズは全部同じ?

版画を売る時に「額どうしよう」と聞かれることも多いし、額装して売ることもありますが、角2の封筒で送ろうとするとシートになってしまうので、額をご自分で用意いただかないといけません。一番小さい「インチサイズ」という額があるので、その額でおさまりがいいサイズで考えました。ひとつ額を買ったら届くたびに入れ替えてもいいし、同じ額を4つ買って全部並べてもいいし。

4回目に送られるテキストのイメージ
─ スタンダードの構成内容について、エッセイとあるのは?

一つひとつに対してエッセイを書こうと思っています。そのエッセイは2年前に書いたものもありますが、これまでに聞いたこと、面白いなと思ったことを短い文章でメモしておいて、それを並べて、この並びなら繋がるかなと断片的に聞いたことを文章化して、シークエンスとして並べていきます。最後にそのフィクションのような、私の妄想のようなショートエッセイをお届けします。私の制作は聞き書きした言葉とかを作品に起こしていくのですが、鑑賞の時に言葉があると絵が言葉の説明になっていると思われてしまうこともあったりして、絵を純粋に楽しめない。なので、絵と文章を見せるタイミングをずらして、テキストは未知のものとして一番最後に見せるということにしました。

初回お届け作品《夜営》
─プレミアムについてはいかがですか?

私は版木を見せたり、絵具自体の素材を見せたりということもよくあるので、ドローイングから、木版画、版木があって、テキストがあるというような、ひとまとまりの空間として捉えてもらえるようなセットにしたいなと。額もつけて、すぐに展示してもらえるようにして。4回に分けて作品の過程をお見せしながら、ひとつの小さな展覧会というかたちで見ることができるパッケージにしてみました。プレミアムは自分が青森で足を使って聞いた話を交えたノンフィクションのようなエッセイを最後にお届けします。

藍と土の絵具
─土絵の具は前から使われていましたが、最近は藍の葉も使われているんですね。

藍を使うようになったのは青森に行ってからなんです。青森でこぎん刺しという刺繍の手工芸があるのですが、ベースになる麻の布を藍で染めたところにこぎんを刺していくんです。土絵の具では青い色がないので、自然のもので青ができないかなと思っていたところだったので、藍を絵の具にする方法を調べて、育てて、実験を繰り返して、青い絵の具をつくれるようになったんです。藍を使うようになってよかったと思ったのが土と違って植物なので、季節がすごくはっきりしていることです。今日も育てた藍の葉を採っていたんですが、おそらく気温としても最後じゃないかなと思って『今日やらなくては』と。そうすると農家のように、1年の制作にまつわるサイクルができそうだなと思っています。 9月半ばでほぼ収穫は終わりでしたが、来年の種をとるために少し残したり。そういう季節ごとのサイクルに関わりながら制作が進められるというのも、この年齢になるとちょうどいいなと。また、庭には桜の丸太がごろごろ転がっていたりするのですが、今年、北軽井沢で展示した時にチェーンソーの使い方を教えてもらったので、この秋は丸太をチェーンソーで切り続けるという作業をします。冬は刷るのに向いているので刷る、ということを考えています。

─他の作家のプランで気になるものはありますか?

『なるほど、いいアイデア』と思ったのはヤマガミさんです。4回でやっていることの意味もわかるし、言葉からも想像できるなと。山岡さんのプレミアムも面白いと思います。そもそも[m@p]はアーティストが考えたことがフラットに並んでいますよね。買う人と提供する人もリスクや楽しみにおいてフラットですし。このラインナップの自由さ、フラットさが関西っぽいし、その自由さがちゃんと担保されているのがすごいと思います。私は大阪にいますが、このフラットな自由さ、ある種のカオスな感じが減っているなと思っていて。こういった「楽しいことやろう」というのも必要だと思うんです。また、コロナの影響は自分にも色々あるんですが、もっと若い人たちは大丈夫だろうかと考えたりします。その点では私たちの世代が「なんか面白いことやろう」というゆるい気持ちでできることをやっておかないと、と思うんです。 [m@p]はそのひとつだなと思いますし、3rd以降も楽しみです。