応募総数
80プラン
審査員
平田剛志(美術批評)、勝冶真美(京都芸術センタープログラム・ディレクター)
採択プラン
■「足跡を追いかけながら現在地を思い出す」 出展作家:宮原野乃実 形式:個展(インスタレーション)
【 展覧会実施期間: A│2020年7月24日[金・祝]~8月9日[日]】延期
【採択プランのコンセプトやテーマ】
自分が直接経験していない過去の出来事について考えることは、誰かの足跡を辿りその後を追いかけて行くような感覚と似ています。私は過去の出来事や歴史を自分なりに捉えようと試みながら、同時に自分の立ち位置や現在とのつながりを見つけようとしてきました。
今回の展覧会では、 今から約100年前に「シュガーアイランド」と呼ばれていた2つの島を重ねて、史実と妄想をごちゃ混ぜにしながら島での追体験を試みた、最新作の「砂糖王国旅行記」を中心に、3フロアを構成します。近年の制作を振り返りながら、これまで一貫して取り組んできた「自分が経験していない過去の歴史や出来事についてどうアプローチすることができるのか」を軸にして、私のいる現在地と過去のつながりについて再度見つめ直します。
【プラン採択・実施にあたってのコメント】
今回の選出結果について、大変嬉しく思っています。
PARCの3フロア全体を使って、最新作に至るまでの思考や作品同士の繋がりについてもお見せできる展示に仕上げていくつもりです。
大学時代に過ごした京都で、自身のこれまでの制作を振り返りながら作品をさらに先へと進めるための展示に出来ればと思います。是非、一人でも多くの方々にご覧いただきたいです。
■「Body temperture 38℃の記憶から」 出展作家:鯨虎じょう 形式:個展(彫刻・インスタレーション)
【 展覧会実施期間: B│2020年 7月3日(金)~7月19日(日)】 延期
【採択プランのコンセプトやテーマ】
・「Body temperature 38℃の記憶から」という展覧会タイトルについて
Body temperatureは体温
38℃ は猫の平熱の体温です。
生物が記憶から 何を得てきたのか
生物の記憶は 何に変わっていくのか
記憶から進化へ発展させるということがこの展覧会のテーマです。
愛猫が急病にこの世を去った1月、私は今年2年ぶりに個展を開催したいと思いました。
日常的に窯で焼く行為をしている私にとって、1番大切な者の身体全てを焼く火葬の体験はとても衝撃的なことでした。
まだ生きている者にとって、本当の死の実感とは心臓が止まった時ではなく、焼かれて身体という入れ物がなくなった時に湧いてくると私は感じました。
愛しい何かの喪失、それは毎日世界のどこかで繰り返されるありふれたことかもしれません。しかし、自分が当事者になった時、特別なことに感じられることに気がつきます。
死の実感を境にして、その者に関する全ての記憶が過去のものになっていきます。
忘れたくないと思っていても、過去を忘れるという作用からは完全には抗えません。
忘れる ということは生きている者がこれからを生きる為に必要なことでもあるからです。
ですが、忘れられていく記憶という概念はその先どうなっていくのでしょう。
記憶のその後のゆくえとして、私は唯一残った愛猫の骨を使用して、進化の為の作品を死後の時間から作り始めます。
死後から始まる制作 それは過去生きていた時に記録した写真や映像や音声よりも、ある面でリアリティのあるものになると思います。
また、この制作と作品は、過去の記憶や過去の時間が消えて無くなり去っていくのではなく、新しい何かへと進化するための糧になるということの証明でもあります。
【プラン採択・実施にあたってのコメント】
2年ぶりの個展を開催させていただくことになりました。愛猫が急病にこの世を去り、遺骨を今後どうするかというきっかけから今回の展覧会プランを考えました。まず、ペットには戸籍がないので飼い主が忘れてしまったら彼らが生きていた痕跡が消えてしまうということ。それから、賃貸マンション1人暮らしで遺骨をどう供養するかの問題。それらを解決する生き方を考え練った展覧会にしたいと思います。
■「さぁ、とりつくろう。」 出展作家:粟坂萌子 形式:個展(彫刻・インスタレーション)
【 展覧会実施期間: B│2020年 7月3日(金)~7月19日(日)】 延期
【採択プランのコンセプトやテーマ】
今展は、フォルムを意識して「つくる」ということを「取り繕う」ことと仮定してフロアごとに展示を展開していく。「取り繕う」という言葉はポジティブな意味とネガティブな意味が存在する。①破れたところをちょっと直す。修繕をする。②外見だけ飾って,体裁をよくする。「人前を-・う」 ③身なりを整える。 この言葉の中には、私以外の人に見られているという意識が存在している。人は見られているから体を鍛え、美しい衣類を着用し、化粧をする。見せるために、私たちが元々持っているフォルムから変容すること。
理想的な見た目や人格が人にはそれぞれに違う形であると思うが、私は自分自身の理想の形が日々変化していくその速度についていけていない。今日いい感じと思っていたものが明日には全くいい感じではなかったりする。感覚と認識のスピードにはズレが生じている。
このズレの誤差を今回の展示では上階に登って行くにつれて、大きくしていく。私の無意識から生まれる形から、意識が加わり、つくろう=取り繕うとする行為を視覚化する。私たちが存在しているこの世界を私の身体を使ってストレートに映し出し、自分自身の理想のフォルムとはどんな形であるのか、付け加えたり、削ったり、離れたり、近づいたりしながら多面的に捉えてみる。生き生きと、とりつくろわれた作品を展示する。
【プラン採択・実施にあたってのコメント】
全フロアを使うつもりで出したプランですが、1フロアでの展示となってしまい、誠に悔しく思います。でも、採択していただいたことで作品や展覧会への実現に向け、多くの成長ができそうで、ワクワクが止まりません。 またこれまでは、大学で用意されてきた展覧会でしか出したことがなかったため、自由度が上がることへの期待と同時に不安を感じますが、恐れずに全てを出し切りたいです。展覧会の際は、是非見に来てください。