『絵具や木、紙や道具に至るまで、その土地の気候や環境と密接に関わる木版画はその風土を映し出す』。
ふるさかは1999年武蔵野美術大学油絵学科卒業後、2002年よりフィンランド、ノルウェーなどでのレジデンス・発表をはじめ、様々な土地を訪れるなかでその地の暮らしや風土を知り、そこを端緒に木版画を制作しています。
木や土など、その土地の自然素材を得て制作するふるさかの版画はまた、そのプロセスにおいて素材から自然や暮らしを汲み取る行為でもあるといえ、近年では「自然と共に生きる人びとの言葉や手仕事」を眼差し、自身の手仕事(版画制作)や他者の手仕事を通じて「人が自然から何を読み取り、協調しているのか」について知り・確かめる行為として、取材から木版画制作に取り組んでいます。
2017年よりふるさかは津軽・南部地方で、山の人びととその手仕事を取材し、彼らの何気ない言葉を題材に作品を制作しています。また2023年にはこれまでの取材・作品をまとめた『本』の出版を計画し、現在も精力的に取材・制作を続けています。この一連の取材においてふるさかは、彼らの「山の命との向き合い方」に眼差しを向け、彼らが自然とどのように向き合い、何を読み取り、それが手仕事にどのように表れているのかについて、伝承されてきた創意工夫、人と自然の関係性への洞察が含まれる言葉を取り上げます。そして、それらの言葉をもとに、彼らの手仕事を自らの手で理解しようと、土を拾い藍を育てて絵具を作り、木片の形に導かれながら自然の色・形と呼応するように版木を彫り、作品をつくります。
本展「積層の器 ことづての声」は、ふるさかがこれまでの取材の中で触れてきた・得てきた言葉やものとともに、土と藍の絵具で描いたドローイングや木版画作品、ピンホール写真、作品未満の素材などをあわせて展示いたします。ここでは、取材を通して得てきた「自然と人間との関わりのあり様」について、知識や言葉における理解から、自らの手を動かすことによる「共感」へと転換する、ふるさかの「手を動かし、知る」の手つきを体感いただけるのではないでしょうか。
会期中には、本展や展示作品・資料などについて、作家が簡単に解説する【ギャラリーツアー】、津軽・南部地方での取材の様子をスライドを交えながらお話しいただく【アーティストトーク】、2023年に出版予定の『本』づくりに向けた試作作業をご覧いただける【公開制作】を開催いたします。
作家情報について詳細はこちらよりご覧ください。 >Artist info
[ 助 成 ]公益財団法人小笠原敏晶記念財団
[ 協 力 ]有限会社修美社