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Phantom Edge
田中 真吾

2017.6.2. 〜 6.18.

Exhibition View

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Statement

Phantom Edge

 

やっていることはシンプルだと思う。矩形の中でベニアと角材を張り重ねていき、ある程度のボリュームを持ってきたら燃やす。

そこで生まれる黒のバランスを見ながら新しい木材を重ね、更に燃やす。その行為をただただ繰り返す。当然だが、燃えきった木材は脆くなり、焼け落ちる。その瞬間に黒は空白へと転じ、面は縁(edge)へと変化する。

 

制作を続けるうち、ふと、いま自分が何をしているのか分からなくなる。

この作業は「壊している」のか「作っている」のか、それとも「描いている」のか「削っている」のか、分からなくなる。

 

何かしら形として積み上がっていく以上、大局的に見れば「作っている」という言葉に集約されていくとしても、そこに至るまでの一手一手は、常に二極を等値として含み続けている。「壊す」だけでもなく「作る」だけでもない、「描いてから削る」でもなく「削ってから描く」でもない。その同時発生性。

それは、「壊しながら作る」であり、「作りながら壊す」でもあるという矛盾を抱えながら、自らの選択をどこで行うのかと問い続けることである。

 

何も明確ではない。何か一つでは言い切れない。その曖昧さを肯定すること。

行為が積み上がった果てに立ち現れてくるも のが何なのか、いまだ私は適切な言葉を持たないが、そのような結果にも人の想像力は働きかけ、視覚は何かを見つけ出そうとする。穿たれた空白に失われた面の広がりを想像し、露になった重なりに新しい奥行きを感じ取る。そうした作品とのやり取りの中から、表現と言葉の可能性を探していきたいと思う。  

田中 真吾

About

 2006年に京都精華大学芸術学部造形 学科洋画専攻卒業、2008年に京都精華 大学大学院芸術研究科博士前期過程洋画 専攻修了した田中真吾(たなか・しんご/ 1983年・大阪生まれ)は、在学中から現在に 至るまで、その制作の中心に「火」を据えて います。

 

 「焼失(破壊)」という不可逆的な事象から、『消失』の側面で捉えられることの多い「火」について、田中はその本質をひとつとするのではなく、多様でいて未だ正体を捉えることのできないものとして、様々な観点から「火」を見つめ、作品に取り込んでいます。

 

 漆喰パネルの上で画用紙を燃やし、煤や焦げといった火の痕跡によって描画を 重ねた最初期の平面作品をはじめ、積層 した紙の塊を燃やし、花弁のように開いた灰を見せる立体作品《trans》。1枚の紙 片が燃え尽きる経過を長時間露光により 撮影した《trace》などの写真作品。無数 のビニルやフィルムなどを画面上で融解 させ、それらをまるで絵具のように扱いな がらひとつのオブジェクトへと変貌させる 近年の《meltrans》などは、田中が火を 『消失』のみならず『変化』や『融合』、『生成』の現象として捉えている視点を見て取れます。

 

 田中は、「火とはなにか?」という問いの 答えを作品として提示するのではなく、火を意味や観念、物語や比喩、文学や科学に結びつけることなく、まず目の前の現象と して見つめることで、「火とはなにか?」という曖昧で根源的な「問い」そのものを存 在させようとしているようです。

 

 本展において田中は、角材による矩形のベースに貼り重ねたベニア板を燃やす (消失)ことで、そこに現れた(生成)された 黒のエッジや、煤によるグラデーション、露 わになった奥の構造を手がかりに、さらに行為(構成・再配置)を繰り返した作品 《 re:trans(P.E.) 》を発表します。これは「必然・偶然」、あるいは「行為と現 象」の曖昧なやりとりの痕跡であり、その折り重なり(プロセス)を追いかけようと、作品の部分・全体を見ることは、田中と火 による無言の対話を想像で手繰るような感覚を覚えます。

 

 田中の作品は火をプロセスに持ちますが、私たちが目にすることができるものは いわばその痕跡としての焦げ・炭・灰でしかありません。しかし、だからこそ鑑賞者 は、かつてそこにあった火を、自身の経験や体験によって想うことで、見えない火を 見ることができるのではないでしょうか。 また、それは田中と火の対話を想うことで もあり、あるいは鑑賞者と火の対話をもそ こに見ることができるのではないでしょうか。

 

 本展では大作となる新作をはじめ、紙を 燃やして出た灰を用いたドローイング作 品《 UNTITLED 》、廃棄物や自身の過去作 などを解体し、組み直し、火を与えることで、かつての用や意味を崩し、新たな存在へと 変換する《 re:trans 》シリーズの作品をあわせて展示いたします。 必然と偶然、意味と無意味の狭間に揺らめく炎を、私たちがいつまでも眺めていられるように、田中の作品の鑑賞が、鑑賞者の中に「火とはなにか?」という曖昧で終 わりのない問いを巡らせる時間となれば 幸いです。