山添潤(やまぞえ・じゅん/京都生まれ・1971~)は、京都市内の高校を卒業後に関東に渡って私塾にて彫刻を学び、90年代半ばより本格的に彫刻に取り組んで以降、これまで一貫して石彫による作品制作を続けています。
制作・発表のベースを関東に構える山添は、2015年のトキ・アートスペース(東京)での個展をはじめ、2001年から茨城県筑波山麓にてほぼ隔年で開催されている野外彫刻展「雨引の里と彫刻」にも積極的に参加しています。同時に2009年の「Art⦆Court⦆Frontier⦆#7」(Art Court Gallery・大阪)への参加、アートスペース虹(京都)での個展をはじめ、2011年にギャラリー揺(京都)、2013年にGallery PARCで個展を開催。2013年-15年には「OAP彫刻の小径」(大阪市北区天満橋OAP公開緑地内)での長期間にわたる野外彫刻展示など、関西圏での発表にも精力的に取り組んでいます。
大きな石の塊を前に山添は、目指す完成系や具体的なフォルムを決めず、「よくは分からないけど、でも確かにそこにカタチがある」といった予感を頼りに、ノミやタガネによって石を刻んでいきます。機械をなるべく用いず、肉体による単純な行為をひたすら繰り返すその過程は、自身の予感への自問自答であり、石という素材と山添との対話ともとれます。
また、そこに現れてくる抽象とも具象とも呼べない曖昧なカタチは、山添の身体と思考の狭間にカタチを与えたかのようであり、また山添を媒介に石より発せられた不定形な声のようにも思えます。
本展は山添の新作となる「5本の黒御影による石柱」を空間に配するものです。朧げでありながら確かな量塊を感じさせるその「存在」は、まさしく山添の言う「よくは分からないけど、でも確かにそこにカタチがある」ものの姿であると言えるものです。
鑑賞者の皆様には、無数のノミ跡に山添と石との対話の密度を、1mを超える黒御影には空間を律する緊張感を垣間見るなど、思い思いの方法や時間で、ここにある存在を確かめていただけば幸いです。