2014年のお盆にギャラリー・パルクで開催した展覧会「タイルとホコラとツーリズム」は、谷本研と中村裕太の二人の美術家が、街で目にする地蔵菩薩や大日如来などのホコラ(路傍祠)の生態系に着目したもので、「ホコラ三十三所巡礼案内所」をイメージした会場には谷本研による《三十三所ミニホコラ》や、中村裕太による《納涼盆棚観光》などが展示されたほか、ホコラをめぐる『ホコラ三十三所巡礼ツアー』や『信仰を観光する』をテーマにトークセッションを開催しました。
この展覧会をきっかけに、本プロジェクトを5年間に渡って展開することを決めた 二人は、翌2015年には“地蔵本”の出版を目標に掲げ、様々な資料・文献を集めた「タイルとホコラとツーリズム season2《こちら地蔵本準備室》」を開催。会場はタイルとホコラにまつわる様々な資料や文献が集められた「ホコラテーク」に変貌。その他にも夜のホコラを巡る『タイルとホコラ・ナイトツアー』やトークセッション『屋根裏談義』などのイベントも開催しました。
そして、この資料収集の中で二人が出会った書籍に1959年に出版された『北白川こども風土記』があります。これは、京都・北白川小学校の当時の児童たちが3年間かけて調べた郷土の文化・風俗・歴史をまとめたもので、当時においても全国的に注目され、1960年には短編劇映画としても公開されたものです。とりわけ谷本・中村は本書の「白川街道を歩いて」において、当時の織田少年が京都~大津を繋ぐ白川街道を実際に歩き、「蛇石」「蛇が壺」「重ね石」などと呼ばれているスポットを巡った取材記事に強い興味を持ちました。
タイルとホコラとツーリズムのseason3となる本展は、谷本・中村の二人が仔馬とともに、当時の織田少年の歩いた道のりをたどり、道中に出会うホコラに花を手向けながら、実際に白川街道を大津まで歩いた旅に端を発するものです。「重ね石」に見立てたスクリーンには旅の前半(左側:約10分)と後半(右側:約10分)の様子が映し出され、当日に使用された旅の行程表や、重ね石の前で食した昼食の弁当箱、仔馬の鞍などの「旅の記録」が展示されています。また、大津に到ってこの旅を終えた二人は、仔馬の鞍に残ったたくさんの栗毛を見て、ひとつの着想を得ました。それは中村が仔馬の栗毛で筆をつくり、谷本が大津絵にならった絵を描き、この「旅の記憶」を残す(うつす)ものをつくることでした。
本展は谷本・中村の「キャラヴァン」である《白川道中膝栗毛》の「記録と記憶」をご覧いただくものです。また会期中にはイベントやワークショップが開催されました。
【制作協力】麥生田兵吾(写真撮影)
【会場】Gallery PARC(ギャラリー・パルク)
【主催】「タイルとホコラとツーリズム」実行委員会
【協力】Gallery PARC / HAPS
【謝辞】五十嵐源三、橋元靖彦、谷本美貴子、中村和子、studio 森森(敬称略)関わってくださった全ての方々