京都の街角を歩いた際、不意に地蔵菩薩や大日如来などを奉ったホコラ(路傍祠)を目にすることがあります。
その多くはコンクリートや石積みの基礎の上に木造の社を持ち、今も街角に残るホコラには、それらが地域に受け継がれ、奉られてきた信仰の対象である事を伺い知る事が出来るとともに、しばしば目にするタイルづくりのホコラには、それらが今日的な都市の様相を取り入れてきた「転用」の歴史や変遷に思いを馳せる事ができるものです。
ギャラリー・パルクでは、2014年のお盆の時期に、この「タイル」と「ホコラ」に着目した谷本 研(たにもと・けん/1973年・神戸市生まれ)と中村裕太(なかむら・ゆうた/ 1983年・東京都生まれ)の2名の美術家による展覧会「タイルとホコラとツーリズム」を開催しました。これは京都市内で目にするホコラの生態系に着目し、それぞれ「タイル」と「ホコラ」をポイントとして捉え、それらを地域における「ツーリズム(観光)」といった視野で考察する試みであり、谷本はフィールドワークにより市内中心部のホコラから三十三所を厳選した《三十三所ミニホコラ》を、中村は建築・工芸・民俗の観点からのリサーチをもとに、路傍で採取したタイル片を集積し、会場内に盆棚を組み上げた《納涼盆棚観光》を出現させました。その他、ペナントや法被などの関連グッズで埋め尽くされた会場は、まるでタイルとホコラをめぐる観光案内所となりました。
本展「タイルとホコラとツーリズム」はサブタイトルを「season2《こちら地蔵本準備室》」として、谷本・中村の2人が「地蔵本」の出版を目標に掲げ、そのための準備室としてギャラリー空間を活用します。
多くの皆様よりお寄せいただいた写真をもとに編まれた新たな《三十三所ミニホコラ》が見守る会場には、谷本・中村が収集したタイルとホコラにまつわる様々な文献資料や多治見市モザイクタイルミュージアムのコレクション、中村の作品などが物品資料として蓄積・陳列される書庫〝 ホコラテーク 〟が出現しています。
ここには昨年の展覧会をきっかけに懇意となった方々を含め、各地でお地蔵さまにまつわる活動をする皆様から提供された文献や物品資料が含まれ、タイルとホコラに向けられたより多様な視点が収集されているとも言えます。加えて畳の間は「地蔵本」の出版に向けた資料整理や執筆などをおこなう書斎となるなど、ギャラリーはさながら谷本・中村の〝 アチック(屋根裏部屋)〟となります。
また会期中には、ギャラリーを出発して夜のホコラを巡るナイトツアーや、「地蔵本」のアイデアを語り合うトークイベントも開催するなど、地蔵盆の季節、ギャラリーはひととき彼ら(みなさん)の屋根裏部屋としても開かれました。
【制作協力】studio 森森
【主 催】「タイルとホコラとツーリズム」実行委員会
【協 力】 Gallery PARC / 多治見市モザイクタイルミュージアム / 東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)/ みずのき美術館
【資料提供】 岡本絵麻、加藤賢治、野口さとこ、福島幸宏、松井正春、村上紀夫、森 篤、師 茂樹、京都市文化市民局文化芸術都市推進室文化財保護課、地蔵プロジェクト、ほか(敬称略)