2015年に京都市立芸術大学大学院生美術研究科彫刻専攻を修了した迎 英里子(むかい・えりこ・1990年・兵庫県生まれ)は、身の周りにある自然や社会の事象(仕組み)などをシステム(装置)に変換します。それは分かりにくい現象や可視化出来ない事象を簡潔に表すことが目的ではなく、その過程にある「理解へのアプローチ」に主眼があるものといえます。
京都市立芸術大学在学中の制作に見られる、DNA螺旋構造をモチーフとした鉄の彫刻《 DNAが開くモデル 》(2012)や、植物の開花のメカニズムから発想された《 細胞の数の増加による開花 》(2013)などは、ある現象や仕組みをモチーフとして、それを異なる素材と手によって再構築されたものです。
そして、この「手による制作を通じてモチーフをより身体的に理解しようとする」行為は、その後にさらに積極的に身体を介入させた「実践(パフォーマンス)」へと進められています。
迎は自身にとって情報や知識に偏って理解しているものの、現実感を伴わないような「事象」を取り上げ、その構造を多くの人が手に触れたことのある身近な「材」によるシステムに置き換え、現象を日常的な「動作」として取り出し、それらを用いて自身の身体によって関わるパフォーマンスをおこないます。
これは「無関係と思われた現象に直接的に関わる状況をつくる」もので、これによって現象を身体的にトレースすることで、それらを「実感」を伴った理解に近づくことができるのではないかとするものです。過去の取り組みに見られる《 食肉の流通経路 》(2014)や《 水蒸気のための舞台 》(2015)などの「実践(パフォーマンス)」は、いずれも同様の思考から
取り組まれたものです。
これら迎のアプローチは、「わかっている」として停止していたこと、あるいは「わからない」としていたことを、「完全にわかる状態」・「完全にわからない状態」ではないものとすることで、そこに「理解に近づく」ためのより能動的な「アプローチ」を発生させます。
「アプローチ2[石油]」とする本展では、会期中の土曜・日曜・火曜日と合計20回の実践(パフォーマンス)がおこなわれます。また、それ以外の時間には、実践のおこなわれた装置とともに、その記録映像を展示するものです。