本展は、藤永覚耶、前谷康太郎、宮崎雄樹の3名の作家と展覧会キュレーター・宮下忠也から成り、その会期を2週間ごとの[シークエンスA]・[シークエンスB]と分けて連続で開催するものです。
絵画における一般的な遠近法である「 Vanishing Point/消失点 」の存在は、画面上に奥行きを与えることで三次元的空間を構築するだけではなく、鑑賞者の視線を意識的に引き込む効果により、その作品の主題や描き手の意図を示唆する役割をも担います。本展のキュレーターである宮下忠也は、この視点を展開させ、今日的な絵画表現の中に消失点ではなく「消滅点」という特異点を見出し、そこから作家・作品へのひとつの読み解きを構築しています。本展の出展作家である藤永覚耶、前谷康太郎、宮崎雄樹の作品には、いずれも明白な「消失点」は不在のままに、独自の技法による「Vanishing Point」=「消滅点」が導入されているといえます。
染料インクの点描による図像をアルコールにより溶かし、図像が消滅する寸前に現れる「イメージが個人の主観から開放され、広く共有される瞬間」を画面に定着させようと試みる藤永覚耶。構造上の特性により明確な像を結ばない自作の撮影機によって、世界を抽象化されたフォルムと色彩や光の明滅にまで還元する作品を発表する前谷康太郎。アクリル絵具による風景画を蜜蝋でコーティングし、その上から油絵具で加筆するという手法を用いた絵画制作を続ける宮崎雄樹。
ここに見られるそれぞれの「消滅点」は、いずれも異なる意識・要求や技法によって作品に内包されたものですが、個々の表現にとって大きな役割を果たしているのは間違いありません。宮下はそれぞれの作品をへの理解を深めるための共通項として、ここに「消滅点」というテーマを挙げるとともに、それらを「今日の私たちの体感覚に則した、広く共有しうる世界観なのではないでしょうか」として、鑑賞者に作品を通じた世界への読み解きを促します。
*本展覧会では、そのテーマや個々の作品の魅力に触れていただけるように、会期を[シークエンスA]・[シークエンスB]の2期に分け、3名の作家がそれぞれ作品・構成を変化させた展示をおこなわれます。
【sequence:A】2014.12.2.[火] ─ 12.14.[日]
【sequence:B】2014.12.16.[火] ─ 12.28.[日]