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Exhibition info

VANISHING POINT / 消滅点
藤永覚耶
前谷康太郎
宮崎雄樹

キュレーター
宮下忠也

2014.12.2. 〜 12.28.

Exhibition View

13 images

Statement

アルコール染料インクを用いた平面図像(絵画)を表現手段とし、作品と空間と見る者の関係を探っている。
自分の制作は、写真から得た図像を元に自分の手を通して綿布の上に色彩のインクの点を置いてゆく。最後に、時間をかけて溶かしインクを動かすことで、色彩の点は混ざり合い、移動の痕跡や滲みを綿布に残す。そのようにして、作品の図像を制作する。
アルコールの浸透圧に委ねられたイメージは、綿布の染みになると同時に、個人の主観を離れ、他者と共有しうるイメージへと昇華していくように感じる。
それらを壁面展示のオーソドックスな絵画形式のシリーズと、自然光を図像に反映させ空間と作品をダイレクトに結びつけたシリーズの2つの展示形式で作品展開している。

作品は、部分である色彩性と、それらの集合としてある全体像、この両者のゆらぎによって成立している。あるときは、作品に近付くことで色彩同士の緊張関係や美しさを見いだすかもしれない。また、あるときは、全体の像に自らの経験から何かのイメージを見出すかもしれない。それらはすべて、同一の単なる綿布の色彩の染みが引き起こすことだ。
何ものでもない色彩と何かであることとの緊張関係の中で、作品・空間・見る者、それぞれが相対的な関係となり相互作用するような絵画を目指している。

藤永 覚耶

 

 

 

 

「より(more)見る」のではなく、「一歩退いて(less)見る」こと。

動画/静止画を問わず、現代の諸々のイメージは「より見たい」という欲求のベクトルに従った暁の到達点として存在する。しかし、それとは逆方向のベクトルに従ってみたとき、予測不可能かつ純粋な光の形態が存在する。この一歩退いた領域において我々が見るのは、目前の世界の別のありようであり、「見る」ことを為す我々自身の後ろ姿でもある。

前谷 康太郎

 

 

 

 

周りとの距離をテーマに制作しています。
日常の風景や情景を観察すると、一歩引いて観てしまう事があります。それと同時に、自分の存在価値や自分が立っている位置を考えてしまいます。鑑賞者が作品を観て、以前どこかで感じた記憶とのリンク・共有、または私が想像もしない感覚を与えられたらと思っています。
また素材として蜜蝋を使用しています。アクリル絵具で描いた画面に蜜蝋を流し込み、その上に油彩で描画。蜜蝋によって下層と微妙な距離感が生まれます。そして通常の絵具とは違う何とも言えない独特な表情を見せてくれます。

自分がみた光景を絵のモチーフにしていますが、カメラを使うことで無意識にいい構図やアングルを切り取っているように思います。それは自分の意識だけでなく外部からの刺激によって成り立ちます。またその背景には、気づかないうちに現代社会の膨大な情報によって支配されていることがあると思います。
カメラのシャッターが下りる(幕が下りる)ことが、作品画面で言うと蜜蝋がフィルター代わりとなっていると同時に、蜜蝋特有の乳白層は、どこかで見た光景などと想像する、曖昧な記憶とも結びつきます。蜜蝋によって感じるのは記憶の曖昧だけでなく、その光景との微妙な距離感でもあるのではないでしょうか。

宮崎 雄樹

About

 本展は、藤永覚耶、前谷康太郎、宮崎雄樹の3名の作家と展覧会キュレーター・宮下忠也から成り、その会期を2週間ごとの[シークエンスA]・[シークエンスB]と分けて連続で開催するものです。


 絵画における一般的な遠近法である「 Vanishing Point/消失点 」の存在は、画面上に奥行きを与えることで三次元的空間を構築するだけではなく、鑑賞者の視線を意識的に引き込む効果により、その作品の主題や描き手の意図を示唆する役割をも担います。本展のキュレーターである宮下忠也は、この視点を展開させ、今日的な絵画表現の中に消失点ではなく「消滅点」という特異点を見出し、そこから作家・作品へのひとつの読み解きを構築しています。本展の出展作家である藤永覚耶、前谷康太郎、宮崎雄樹の作品には、いずれも明白な「消失点」は不在のままに、独自の技法による「Vanishing Point」=「消滅点」が導入されているといえます。


 染料インクの点描による図像をアルコールにより溶かし、図像が消滅する寸前に現れる「イメージが個人の主観から開放され、広く共有される瞬間」を画面に定着させようと試みる藤永覚耶。構造上の特性により明確な像を結ばない自作の撮影機によって、世界を抽象化されたフォルムと色彩や光の明滅にまで還元する作品を発表する前谷康太郎。アクリル絵具による風景画を蜜蝋でコーティングし、その上から油絵具で加筆するという手法を用いた絵画制作を続ける宮崎雄樹。


 ここに見られるそれぞれの「消滅点」は、いずれも異なる意識・要求や技法によって作品に内包されたものですが、個々の表現にとって大きな役割を果たしているのは間違いありません。宮下はそれぞれの作品をへの理解を深めるための共通項として、ここに「消滅点」というテーマを挙げるとともに、それらを「今日の私たちの体感覚に則した、広く共有しうる世界観なのではないでしょうか」として、鑑賞者に作品を通じた世界への読み解きを促します。


*本展覧会では、そのテーマや個々の作品の魅力に触れていただけるように、会期を[シークエンスA]・[シークエンスB]の2期に分け、3名の作家がそれぞれ作品・構成を変化させた展示をおこなわれます。

【sequence:A】2014.12.2.[火] ─ 12.14.[日]

【sequence:B】2014.12.16.[火] ─ 12.28.[日]