菅かおる(かん・かおる/1976年・大分生まれ)は、2000年に京都造形芸術大学日本画コースを卒業、2004年~2005年8月に京都造形芸術大学国際藝術研究センターフェロープログラム研究員を経て、これまでおもに「水」をモチーフに伝統的な日本画の技法を用いながら作品制作を続けています。
本展で菅かおるは襖サイズのパネルに描いた日本画を「16曲の屏風」に見立て、ギャラリー・パルクの会場内を横断させています。会場を大胆に横切るその「屏風」は全長14メートルを超えて、表裏32もの画面を持つもので、複数の画面に一連の、時に異なるイメージが隣り合いながら連なり、画面ごとに様々な関係性をつくり出します。また、会場内の場所や時間帯による外光の影響を取り込んで配置された作品は、光によって様々に表情を変化させる日本画・日本画材の魅力を最大限に活かしたもので、空間と密接に関わりあったひとつのインスタレーションとも呼べるものです。
ひとつの小さな世界には、巨大な世界が含まれている。(中略)私の庭は小さいが、ここには全てがあり、そこはどの世界にも繋がるし、あなたの庭になるかもしれないのだ。
ビートルズのアルバム『レット・イット・ビー』に収録されている曲名と同様の本展タイトル「アクロス ザ ユニバース」は、『世界の向こう側』あるいは『世界を超えて』とも訳されるものですが、ここで「ユニバース」は『人間、西洋:東洋、地球、宇宙、森羅万象、全』などの様々な概念を含み、現在でも様々な解釈がなされているものです。
本展の菅かおるの作品も、ひとつの画面・ひとつの絵画・ひとつの空間として多様な見立てが出来るとともに、それらは画面内へと、あるいは画面を超えてミクロ・コスモスからマクロ・コスモスへとその視点やイメージを自由に行き来する鑑賞体験をもたらすのではないでしょうか。