90年代半ばより石彫を手掛ける山添潤(やまぞえ・じゅん/京都府生まれ・1971〜)は、制作・発表のベースを関東に構えながら、近年では2009年の個展(アートスペース虹・京都)開催や「Art Court Frontier #7」(Art Court Gallery・大阪)への参加、2011年の個展(ギャラリー揺・京都)開催など、これまでに関西でも定期的な発表を続けています。
山添は御影石や大理石などの大きな塊を前に、具体的なカタチや完成形を目指すことなく、ノミやタガネによって石を打ちます。
その一打一打は山添の身体を介した素材(目前の石という存在)との対話であり、無数のノミ痕は積み重ねられた対話の長さと密度を物語るといえます。また、徐々に浮かび上がるそのカタチは、山添を介して石より発せられた不定形な声のようでもあります。
自身の身体と思考、無意識と自意識の狭間にとどまり(あるいはそれらを高速で反復しながら)、山添と石はいつしか然るべきカタチを見いだし、やがてそこに明確な量塊と朧げなカタチを持つ「存在」を結びだします。また、その表情は光や時間のうつろい、鑑賞者の視点の変化によって、より曖昧な存在として自立します。
本展は「6本の石柱」と「鑑賞者」と「空間」によって構成される、山添潤の新作を発表する機会となります。
無垢の石柱を含む大理石に見る六様態には、山添と石の対話の展開を見るとともに、然るべきカタチへの模索の可能性を感じる事が出来るのではないでしょうか。