1995年に東京造形大学を卒業した山岡敏明(やまおか・としあき/大阪・1972~)は、2003年より「GUTIC STUDY(グチック考)」とするプロジェクトに取り組んでいます。2013年で10年目を迎えたこのプロジェクトは、山岡により「GUTIC(グチック)」と名付けられた「普段は目にする事は出来ないが確かに実在するという謎の量塊」を巡り、その「あるべきカタチ」をドローイングやインスタレーション、映像などの様々な方法論により探求するものです。当初は不明瞭であやふやな姿をしていたGUTICは、現在では明確な輪郭・強いリアリティを持つまでに変化しながらも、尚も奇妙な抽象形態をあわせ持つ独自の存在へと展開しています。それはまるで山岡の身体・思考を触媒に現われる独立した生物のようであり、現在に至るその変遷には、生物が進化する先を探して様々にカタチを変化させたかのような、あるいは強靭な生命力みなぎる原始の生物へと還るかのような、パラレルな分化の系譜を見るようでもあります。
本展タイトルにある「MERISTEM/メリステム」は、植物の茎や根の先端に存在する、肉眼では見るのが難しいほど小さな組織の名称であり、未分化の細胞から成るこの組織が、活発に細胞分裂を繰り返しながら様々に分化することで植物は形成・成長していきます。
10年目という一つの区切りを迎えて開催する「GUTIC MERISTEM」展は、最新のGUTICの姿をお見せする結節点としての機会であるとともに、その原点に立ち返って「カタチの探求」というプロジェクトの核心を掘り下げた、純度の高い作品をご高覧いただくものです。また、これからの10年間でますます活発に増殖・展開していくだろうGUTIC:山岡敏明にとっての新たな始点となる機会であるともいえます。