金 サジ(1981~・京都)は、この世界にある様々な「ものごと」に立ちどまり、確認し、向き合い、とどめるための手法の一つとして写真表現による作品を制作しています。
金 サジにとって写真を撮る行為は「会いに行く」という言葉に集約されています。自然や景色、人間や生き物・その営みなどを真正面から捉えた作品は、出会った対象に心と身体が動いた痕跡であるとともに、その記憶を対象から離れた後に呼び起こし、より深く対話をするためのアンカーであるともいえます。
本展では、これまでに金 サジが「会いに行った」様々な対象を、まっすぐに見据えた作品およそ15点とともに、自身の日々や周辺に目線を向けた200枚以上ものスナップ写真・テキスト・印刷物などによる構成をあわせて展示いたします。畏怖や厳粛さの中で息をひそめてシャッターを切ったかのような作品とは対照的に、ピントすら合わない距離感や身体の一部のようにブレたスナップは、偶然に「出会った」情景の中からまるで呼吸をするかのように切り取られたもののようです。金 サジによって切り取られた「あまりに遠くて大きなもの・あまりに近くて気づかなかったもの」に目を向けるなかで、鑑賞者それぞれにとっての様々な出会いと対話が生まれるのではないでしょうか。