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[m@p] Artists Interview
《右手と左手のドローイング》 顔料、ケント紙 練り込みテンペラ 272×394mm
─ [m@p]について  (取材日:2020.9.)

パルクがギャラリーを一旦閉じて、これからどうされるのかなと楽しみにしていました。今まではギャラリーにお客さんが行くという構造だったのを反転させて、作品自らがお客さんのもとに届くかたちになるのがすごく面白いなと思いました。
1stをみていて、「私も声かけてもらえたらいいな」と思ってました。ですので、声かかった時は「ぜひ、やりたい」と思いました。

初回お届け作品参考画像|《右手と左手のドローイング》210×297㎜(A4)、顔料・ケント紙、練りこみテンペラ
─ サイズなどの制限について

今までやっていた平面作品でも両手のサイズという起源があるので、それほど変わりはないかなと思いました。A4サイズというのは今までやったことがなかったのですが、それに近いB5サイズだったら試作品を作る時に使っていたので、A4でも十分できそうだなと。

初回お届け作品参考画像|《右手と左手のドローイング》210×297㎜(A4)、顔料・ケント紙、練りこみテンペラ
─ スタンダードについて

初回は私が指定した2色の作品をお送りします。そこに1枚のハガキを同封します。そこには「あなたの好きな色を教えてください」という質問を書いています。色といっても、単純な青や赤、緑といったような色名だけではなく、どのような青か、どのような緑か、例えば新緑の緑なのか、ビビッドな緑なのか、できるだけ事細かに、購入者の方の思い描く色というのをお聞きして、その1色を私自身が顔料を調合してつくります。その1色に私自身が最も合うと思う色をプラスして、混ぜた状態でお届けする。
それが3回続きます。3回好きな色を聞く機会があり、かつ「青」といった単語だけではなく、どのような色かを伺うので、その方のパーソナルな部分が見えてくるのではと想像しています。例えば青が好きな人でも、青系・赤系といってもいいし、青だけで違うイメージのものを3回送ってくださるかもしれないし、なかなかお客さんとそんなに密に関わることってないので、面白そうだし、難しそうでもありますね。色をつくることを2回3回と繰り返す上で、その人自身を想像しながら、もう1色をあわせていくという感じになると思います。
ですので、ハガキもできれば直筆で書いていただきたいなと思っています。その筆跡などもその方を彷彿させるというか、少ない手がかりかもしれないけれど、そこにヒントを見つけていけたらと思っています。

《 右手と左手のドローイング プルシャンブルー/イエローオーカー 》 2017 紙、顔料、練りこみテンペラ 272 x 394 mm
─ 作品自体はどのぐらいの日数をかけてつくるんですか?

作品自体は瞬発的にできるので、実際の制作時間としては短いのですが、乾くのに1日かかり、乾いてから若干の色味が変わったりします。それですぐ納得いくものができたらいいのですが、なかなか納得いくものができなかったら何枚か試作するので、それだけの時間がかかります。

《 右手と左手のドローイング カーマイン/エメラルド 》 2017 紙、顔料、練りこみテンペラ 272×394 mm
─ 勢いよく、右手・左手と描くんですか?

そうですね。今回は当初、A4サイズは両手がちょうどおさまるからいい具合になるなと思っていたのですが、実際に初回発送の作品を作っている中で、今までは両手の手首の運動を取り入れて描いていたところ、A4だとかなりせせこましくなるということに気づきました。ですので、今までと違って、指を動かすという行為に重きを置きました。描くという行為が強くなっています。片手で5本、両手で10本ある指を動かすので、今までやっていた右手・左手とはやっているかんじが全然違いました。それが面白かったですね。「どこにどの線がきたらいいか」と考えたり、「描く」要素が強くなりました。現れるイメージは一見はそこまで変わらないのですが、よく見ると今までになかった指の動きの筆跡であったり、例えば「ここに線を自ら入れている」というようなところがあります。今までは偶然的なものが多かったのですが、今回の指を動かして描くことに関しては意図したイメージというものが強く出ているように思います。

「retrace a pair 一対をなぞる」展示風景〔2018, Gallery PARC / 京都〕
─ プレミアムについて

スタンダードと構造は同じなのですが、質問がもうひとつ加わります。色に加え、生活の中での好きな時間を教えていただこうと思っています。私としては、好きな色に近い質問かなと思っています。今、自分が何に魅力を感じるか、何を人生において大切にしているか、ということが見えるのではないかと。購入者の方にも少し自分を掘り下げていただくことになると思います。どんな言葉が返ってくるかで購入者の方に対する印象が変わるので、私も緊張します。

「retrace a pair 一対をなぞる」展示風景〔2018, Gallery PARC / 京都〕
─ 4回目はそれまでのやりとりから作品をつくるのですね。

そうです。4回目は色の指定はできません。少ないやりとりではあるのですが、その中から購入者の方のことを想像してつくります。右手と左手のシリーズは2色の異なる色が混ざるものですが、市販の絵の具だと2色が混ざった3色目は綺麗な混色になってしまいます。例えば青と赤を混ぜると紫になるように。けれど、古典技法で顔料を自分で練っていると、2色の色は完全に3色目に変化するのではなく、細かな粒子で見た時に、それぞれの色の中に入りこんだ状態で、それぞれがまだある状態で混ざりあいます。そこから、肖像画を描いたりすることもできるのではないかと考えているんです。多くの人が二面性を持っていて、単純に言えば優しい面もあるけれど自分に厳しい面もあるとか、そういう表に出ている部分と見えない部分があると思うんです。それを色に変換した時にその2色が同時に存在するというのが、その人の肖像画にマッチするのではと思っていて、4回目の作品では、私が少ないヒントの中から想像してその人自身を抽象的に描くことを考えています。

「retrace a pair 一対をなぞる」展示風景〔2018, Gallery PARC / 京都〕
─ 今回やりとりが生じるプランを考えたのは?

[m@p]の枠組みを生かしたプランにしたいなと思ったので。小品を送るシンプルなプランも考えたんですが、作品が出向くというコンセプトや4回送るというシステムがあって、お客様と何度かメッセージを送りあうことができるのだからそれを活用たいなと。
それと、一度親しい友人に作品をプレゼントする機会があり、今回と同じように好きな色を聞いたりして作品をつくったのですが、私だったら使わない色が結構あったので、今回を経て、私自身の色彩の幅が増えたらいいなと思います。

─ 他の作家で気になる人は?

ドローイングを持っているからなのですが、山添さんですね。やはり好きな作家さんのプランは気になります。