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[m@p] Artists Interview
谷本研+中村裕太Artist Info
season5 《 山へ、川へ。 》 (2018, Gallery PARC)
─ [m@p]に参加するにあたって、どのようにお考えでしたか。

谷本:もともと、僕は2020年にPARCで開催する予定だった個展が中止になった経緯があるのですが、[m@p]はその後に活動内容を変更したパルクの新しいプロジェクトだったので、ぜひ関わりたいなという思いがありました。ただ、関わり方としては「個人(谷本研)」か「タイルとホコラとツーリズム(谷本+中村)」の2択があった中で、今回は2人で参加することにしました。

中村:僕も[m@p]の話を聞いて面白さを感じていて、実際にお声がけいただいたのは2020年の秋ぐらいの頃だと思いますが、その段階では僕たちの準備も間に合わず遅れてしまいました。ただ、プランを考える上で思っていたのは、この[m@p]の構造に沿って、ただ単に作品を4回に分けて送るということでなく、そのシステムを自分たちの作品としてどのように消化していくことができるのか、ということでした。
これまでの僕たちの展示の在り方は、鑑賞者を自分たちの作品の中に取り込みながら展開していくものがありました。だから今回、郵便物というものを媒介に作家と購入者との関係性がある中で、その関係をただ送り手:受け手に固定したものとしてではなく、より共犯関係的なものに組み込んでいける方法って何だろうと考えたのがスタートです。その具体的な方法としてみなさんの代わりに僕らが行動に移す、旅をするというのがアイデアとして生まれてきました。

スタンダード 初回お届けイメージ
─ そうした意味で今回の[m@p]でおこなうプロジェクトを「タイルとホコラとツーリズム」(以下、THT)のシーズン9として正式にクレジットされ、お二人のこれまでの活動上に位置づけてもらえるのは、こちらとしても嬉しいです。では、現状でのプランの概要について教えてください。

中村:今回は「玉手箱」というアイデアが最初に出てきたことが大きいです。本来、玉手箱は開けることができないので、僕ら自身もそこに何が入っているか分からないというのを前提に出来ますし。僕らのプロジェクトは、いつも初めから何か決まったものをつくっていくのではなく、実際に旅の道中に話したりする中で見つかっていくものなので。ただ、今回のハードルとしては、先にある程度の内容を言わないといけないという悩みがあったのですが、そこに「玉手箱」という未知の箱を提示し、それを含めて乗ってくれる人を募るというのがいいなと思っています。

谷本:あと、今回のプランを考えていた時期に、ちょうどJAXAのはやぶさ2号が、リュウグウという小惑星で採取した砂をカプセルに入れて地球へ帰還させたということがありました。それはおそらく成功しただろうと言われながらも、本当にそこに砂が入っているかどうかは、地球に帰ってきたカプセルを実際に開けてみないと分からないという構造があって。その関係性が面白いなと思っていました。

中村:そして、一番面白かったのは、実際にカプセルが日本に帰還した時に、JAXAの代表の方が「ただいま!はやぶさ2は帰ってきました」と言ったんですよね。「おかえり」じゃなくて「ただいま」という言い方をしてたんですね。その人ははやぶさ2ではないのに。なので、今回の僕たちのプロジェクトタイトルは『ただいま!玉手箱』となっています。パルクのバナーで使っている谷本さんの絵にも、よく見ていただくと飛んでるはやぶさ2が描かれています。[m@p]というのもおそらくアーティストから購入者の方への一つの贈り物ではあるけど、そのあとの在り方も含めて行ったり来たりであるとか、主客が反転したりもありそうですね。とはいえ、僕たちは今から宇宙に放たれようとしています。今回の目的(地)は竜宮伝説の発祥で知られる鹿児島県の岬・長崎鼻(鹿児島県指宿市)です。近くに砂風呂がある場所で、そこはもちろん竜宮と関わっています。とはいえ、僕たちはまだ出発もしてないのでどんな旅になるか分からないですし、玉手箱の中には何も入ってないということも有り得ますが、それ自体を楽しんでほしいです。

谷本:まぁ経緯としては、シーズン8(七条河原じゃり風流)で砂場を素材のひとつとして作品をつくっていて、そこから「今度、砂風呂にでも入ろうか」「指宿(いぶすき)へ行ってみたいね」なんて冗談を言っていた矢先に、はやぶさ2号のニュースがあったんです。そして、竜宮伝説って面白いよねと話していて、「あれ?待てよ」と気になって調べてみたら、竜宮伝説の発祥はいくつかあるんですけど、龍宮神社というのが鹿児島にあるということが分かり、鹿児島といえば…と確認したらまさに指宿にあったと。それらが結びついて、僕たちならではだと思うのですが、偶然の符合というのがすごく好きなので、「これは行くしかない!」となった流れがあります。

参考画像
─ つまり、基本的には〝講〟という仕組みを下敷きに、みなさんから出資を募って旅にいくというのはなんとなく決まっていて、その目的として砂場つながりでなんとなく指宿というのが見つかり、調べてみるといろいろ重なる部分もあって、では「何かあるかもしれないのでそこに旅しよう」ってことですね。

中村:種子島のロケット発射場も近いしね。笑

タイルとホコラとツーリズム (2014, Gallery PARC)
「ホコラ三十三所巡礼案内所」をイメージした会場では谷本《三十三所ミニホコラ》、中村《納涼盆棚観光》などを展示。関連イベントに「ホコラ三十三所巡礼ツアー」やトークセッション「信仰を観光する」を開催。
撮影:表恒匡
─ もともと[m@p]自体がプロジェクト型として、アーティストと購入者が「未知」にどのような価値を見出してもらえるか、という要素が大きいと思っていて、これまでにあったアーティストの提案にも、どのような作品が出来るのか、どのような作品を届けられるのかはまだ分かりません、というものも多くあります。ただ、今回は未知性を前提にそのプロセス自体を楽しんでもらう方向に大きく比重があるのが特徴的です。もちろん、本当に「空っぽの玉手箱」を渡される可能性もあるんですが。ただ、プロセスとして「旅を楽しむ」といっても、何も同行するだけが旅ではなく、送り出したり、出迎えたりも「旅の楽しみ」って思ってもらえれば、とてもTHTらしいというか。

谷本:そのための小道具として、発送内容に「見送り用小旗」なども設定しています。まぁ、お見送りに来られなかった場合には、ただの布切れになってしまうのですが。購入者の方にはぜひお見送りに来てもらいたいですね。

中村:そうそう。

谷本:当初、お客さんは京都周辺の人くらいかな…となんとなくイメージしていたので、遠方の方にはご負担をおかけするかもしれませんが、ぜひ多くの人から見送られたいですね。

中村:参加者が増えた方が面白いですし。

谷本:それでこそ〝講〟だしね。

season2 《こちら地蔵本準備室》 (ギャラリー・パルク、2015)
タイルとホコラにまつわる様々な資料や文献を集めた「ホコラテーク」が出現。イベントには「タイルとホコラ・ナイトツアー」やトークセッション「屋根裏談義」を開催。
撮影:表恒匡
─ 今回の〝講〟って本来の在り方からすれば変な〝講〟ですよね。普通は目的(願掛けとか祈願とか)がまず共有されて、その目的のための〝講〟がありますよね。各地の神社や山などに参拝を目的として講があって、いつしか数人が代表して代わりにお参りをする「代参」といった講ができるなど。それが今回はその目的が「THTに旅をさせる」というプロセスにあってしまうという。まぁ、プレミアムでは「一緒に旅する」というプランもありますが。

中村:楽しめますよ。なんたって僕たちの話をずっと聞いていられます。ちょうど20万円分の接待をしますし、僕たちの旅も豊かになります。笑

season3 《白川道中膝栗毛》 (2016, Gallery PARC)
『北白川こども風土記』に導かれ、ポニーとともに白川街道を歩き、道中に出会う石仏に花を手向けるキャラヴァンの記録を展示。「こどもと郷土 『北白川こども風土記』を読む2」や「山中町・重ね石を訪ねる路線バスツアー」を開催。
─ 今までは谷本さんと中村さんの2人で旅するというのが基本だったところ、今回、もしプレミアムが購入されたら、谷本と中村と「誰か」という構造が出来上がりますよね。

谷本:作品の内容は絶対に変わりますよね。

中村:僕たちは10歳離れた歳の差継承制ゆるやかユニットですが、単純に年上か年下か、でも全く違いますよね。

谷本:もしかしたら僕の代わりの候補になる人かも。

中村:僕が抜けて、谷本さんが組む、年上の方かも。

season5 《 山へ、川へ。 》 (2018, Gallery PARC)
─ 逆に仲良し3人組でプレミアムを購入されたら、THTが少数になってしまう。

中村:もう、それなら3人で行ってください、という話ですけどね。

谷本:それは冗談としても、これまで以上に作品づくりにどうしたって関わってくるというところですよね。ある意味、パトロンでもあるけれど。僕らのやろうとしていることの面白みに投資できるという、そういう価値を出したいなと思っています。

中村:改めて今日話していて思ったのは、制作のプロセスを共有できるということだと思うんですよね。旅を共有しながら、もしくは介入しながら、一緒につくっていくことができる、それ自体も作品の中に取り込んでいくという在り方が見所かなと思います。

season5 《 山へ、川へ。 》 (2018, Gallery PARC)
─ 今まで通り、出たとこ勝負ではあるけど、違う展開につながる可能性があるという点では面白いですね。初期には「タイルとホコラとツーリズム」というタイトルが当初ネックだったじゃないですか。途中からはタイルもホコラも主題のような直接的な関係は無かったり、けれど、まったく無関係ではなくて。結局は毎回「タイルとホコラ」はきっかけや目的ではあるけど、いずれもその変容やプロセスそのものが作品として提示されていて。いわば中村(タイル)と谷本(ホコラ)の旅の土産話を聞いているうち、自分も行ってみたい(ツーリズム)と思うことが通底した面白さですよね。でもいつかの節目には何かにまとめたいですね。

中村:造本ですね。10年目ぐらいでしょうか。代替わりもありですよね。僕が消えて、谷本さんが残って、新たに10歳ほど年上の人と旅してたりすれば面白いなとさっき思いました。笑

season5 《 山へ、川へ。 》 (2018, Gallery PARC)
─ お二人ともアーティストとしてはリサーチをベースにしていて、その迫り方や出し方には違いがあるのですが、その狭間にあるTHTがお二人の折衷的なものではなく、ゆるさや面白さに独自の魅力があると思います。

中村:最近、自分のやってるプロジェクトはだいたい連動させているんですが、THTだけは連動させないようにしていて、それがいいなと思っているんです。

谷本:分けてるってこと?

中村:そう。というか、連動しきらない感じ。個人的な関心とは、全然つながらないなって。笑。僕1人でやってるものじゃないから。

─ ひとりの作家のワークに落とし込むにはあまりにも一貫してないですよね。一貫していないという一貫性はありますが。ただ、いずれパルクでも「ただいま!」展をやりたいですね。