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[m@p] Artists Interview
林葵衣Artist Info
初回〜4回お届けイメージ
─ [m@p]について

最初にお話をいただいた時に「やります」と即答したのはいいんですけれど、1stグループの方々が思いつく限りのことをされていたので、ものすごく考えました。「ポストに作品を届ける」というコンセプトについては、私は文字を作品にしたりするので、手紙を書くという方法が一番自然かなと最初は思いました。ただ、一方通行で送るだけなのは面白くないなと考えて、往復書簡にしようと思ったんですけれど、お金払ってやってもらうべきことかと考えると違うなと思って。そこで、特に3月から6月にかけて自分の感じたことをまず入れ込めたらいいなと思いました。たまたま、5月頃に手紙を人に送ったり、手紙をもらうこともあったんですが、家から出られない時に手紙をもらうのは、それを読んで旅するような気持ちにもなるし、別の空間に連れて行ってくれるという気持ちがして、いいなと思ったんです。送る時も、例えば切手をどれにしようかなとか、ちょっと1枚絵を入れてみようかなとか、色々なことをたくさん考えながら送ることができますし。家から出られない時だけど「こういう景色見たよ」というものが1枚あるだけで、そこからの広がりが変わってくるのかなと。なにより相手のことを思いながら書いたり、つくったりが楽しいなというのがあって、それが今回の[m@p]のプランの元になっています。

《How are you?》[ オリーブグリーン×ボルドー ]  キャンバスに口紅・18×18cm 
─ スタンダードはどのような内容に?

「音沙汰をききあう」というタイトルをつけたんですけど、英語のタイトルが「Sound Trip Letter」といって、音を聴いて、手紙を読みながら旅をするようなやり取りができたらと考えました。こちらからの1通目は決まっていて、私が唇拓の作品(口紅を塗った唇を支持体に押しあて、言葉を発することでそのカタチを描く作品)により「調子はどうですか?」という投げかけをします。受け取った方は同封した返信用の封筒を使って、その投げかけに返事を書くこともできますし、その内容によって、私が送る2通目の作品を考えることができるというものです。お返事をタイトルに組み込んだり、応答を文字と作品に展開していきます。返事がない場合も考えてはいますが、返事によって想定から外れていくことができるのが面白いなと思っています。作品を送るだけではなく、私も返事を出してやりとりが1年間に渡ってできるので、一人でつくっているというのと違うし、「続けなければ」という気がするのがいいなと思っています。

参考作品《とおくとどくおと おと》キャンバスに口紅・45.4×15.8cm
─ 手紙でのやり取りというのがポイントですね。

私は一人暮らしなので、自粛期間、人と話す機会が減っていて、その中でコンビニなどに行ってお釣りをもらう時に「ありがとうございます」と発話すると、「あ、声が出ないわ」と思うこともあって。声の出し方を忘れている、と思ったんです。ボリュームや音程も、おかしくなったりして、不自由というか不器用なかんじになっていて。そんな長く続くことじゃないと思っていたけれど、「ずっとこの状態が続いたらどうしよう」と思っている中で、手紙でやり取りできることが救いというか、電話すればいいのですけれど、用事がないとしないですし、相手の時間を拘束してしまうということも気になるし。オンラインでのミーティングも苦手で、家の中が家じゃなくなる感じがして、だから手紙ぐらいの距離がちょうど良かったです。今後の状況がどのようなものになっても、ある程度継続していけますし。

制作風景
─ 3ヶ月に1回というのも適度な距離感かもしれませんね。

すごく親しい友達も1シーズンに1回会えたら、という距離感の方が楽やったりするので。仕事とかで毎日会わないといけない関係だと、逆に距離を取るんですよね。あまり近づきすぎるとしんどいというのもあるし。1年に1回でも、いい話ができればそれで満足できると思います。

─ 2通目以降は購入する人によって変わっていく

お返事がない場合は、2通目以降「私は元気です」とか、自分の状況を伝えるという感じになるかもしれません。もちろん、出来ればそこから外れていったほうがいいなと思いますが。ただ、2通目を出すときに自分が元気でなかったり、調子が悪いかもしれないので、結局は状況によって変わります。往復書簡は過去にやったことあるんですけど、会ったことない人とやり取りするのは初めてです。その人が触ったものが届くって、ドキドキするんですよね。zoomとかでもその人の部屋が見えたりとかするんですけど、それは全部がずっと「向こう」という感じがして。誰かが触れた物を送る・もらうと、その「向こう」が「こっち」に来る感じで。実際に空間というか、実感が繋がる感じがします。

プレミアム 初回お届け内容|《 phonation -声明- 》 (FAX用感熱紙ロールに口紅、サイズ可変、 2020年)
─ プレミアムについては?

スタンダードの「音沙汰」は一言のやり取りであったり、ある程度の自由度や距離感がありますが、プレミアムはより関係性が密になっていて、毎回やり取りをしあう交換日記のような感じです。最初の2通は私が作品をつくっていく上でのステートメントを日本語と英語で送るというもので考えています。それって私が今までやってきたことを濃縮して、言葉にして書きとめているものだから、送られた方も重いかもしれませんが、そういうものを送った時にどんな応答があるのだろうというのも気になります。3・4通目は購入者の方と実際に電話やオンラインで話して、その人のことを私にいっぱいインストールして、その人のことを唇拓で描く、つまり取材によりその人を記録に残すというやり方をします。2017年ぐらいから建物や土地を取材するという制作をしていて。たとえば名古屋のビルの一角で展示するということになった時にはそのビルがもともとどういう歴史だったり使われ方をしていたのかを取材して、そのビルで暮らしている人たちに話を聞いて、壁にその場所で響いていた声を再現(唇拓)するという作品を制作したりしました。その取材対象を人にしたバージョンをやってみようと、こういうプランを考えました。

個展「「Playing body / 遊動躰」展示風景(2020, Gallery PARC / 京都)
─ プレミアムでのやり取りは?

手紙のやり取りというのはスタンダードと同じですが、一回のターンの重さが全然違うと思うので、ライトな方がいい人はスタンダードで、重いのが好きという方はプレミアムで、そういった区別もできると思います。プレミアムの方は送った物で最終的に展覧会が一つできるのではないかとも思います。このことは今後の自分の制作・展示にも応用できるだろうし、人を取材して言葉を作っていくということができると気づけたのは自分にとってプラスになりました。私のステートメントと、相手の方の特徴や言葉がリレーして、ひとつながりになっていく。これって交換日記も同じだと思っていて。ページは違うけれど、二人の人の記録が一つの本にまとまっているような。巻物に何かを書いてもらってもいいですし、もし買ってくれた人さえよかったら取材した時の印象や「こういう言葉を話した」ということを記述するのもいいなと思っていて、そのあたりは話し合えたらなと思っています。

個展「「Playing body / 遊動躰」展示風景(2020, Gallery PARC / 京都)
─ こうした状況を受けて、今後についてはどのように考える?

観にいくのがもともと好きなのですが、コロナ以降、「観に行く」ということのハードルがあがって、その分、好きな作家や作品は何があっても絶対に観に行きたい、となっています。そういう意味では、そこが極端に分けられてしまったような気がしていて。それがいいのか悪いのかわからないですが、熱量みたいなものが変わったなというのがあります。展示する側としては、展示ができることは嬉しいんです。もちろんコロナの影響もあるので、それを考えた上で「展示しませんか」という話をもらえたらめっちゃ嬉しいんです。それで続けてきたし、続けていけるなというのがあるから。パフォーマンスもちゃんとお客さんとの距離を保った上でならできるということもありますし。疑問や不安はあるんですけれど、やはり嬉しいです。映像配信なども必要だったらやればいいと思います。

─ 他の作家のプランについて

来田広大さんのプランのプレミアムが興味あります。「出かけられない人の代わりに来田さんが行ってきます」であるとか、「来田さんにあそこに行ってほしい」という構造が面白い。その人の身代わりになるというのもあるし、購入者の方が来田さんを対象に考えたりすることになるのが面白いと思います。それに、そういうアーティストの在り方ってあるんだとも思いました。田中奈津子さんも異国の香りを届けてもらえるというのがいいなと。ウェブにアップされた写真を見ていて、そこに写った布が現地の色だと感じて。それが日本の自分の家に届くというのが、旅行していないのに旅行した気分に慣れるのがいいなと。いずれも「現在」という状況下で、場所とか特性を活かしているのが面白いです。1st(7月)の時期では、コロナの真っ只中だけど、できることがこんなにあるんだ、という感じでしたが、2nd(9月)では、やり取りやコミュニケーションというの要素が含まれていて、この数ヶ月であっても、時期によって異なるのかなと。3rdも変わるんだろうなと思うと、それもまた楽しみです。