自分史を編むというのはある面でとても恐ろしい行為だと思います。自分が生きてきた年月を懐かしみながら書き起こしていく楽しさの反面、便宜的に書きつけたそれぞれのエピソードの行間に記せていない膨大な日々があり(50年間では約1万8千日!)、それらのほとんどを忘れて今生活していることに気付かされるからです。また自分史において、今日この瞬間まではどうあれ埋めることができるのに対して、明日以降は原理的に空白とするしかありません。そして「明日死なないとは限らない」という、いわゆる〝縁起でもない〟発想がチラリとよぎります。
それでも今日までの歩みを俯瞰すれば、数々の偶然が結び合い、おかげさまで面白い人生が続いていると感じることができます。そして明日以降のことは何も分からないとしても、また予期せぬ偶然が繋がって真っ白だった空欄が埋まっていく期待に賭ける勇気がわいてきます。
今回、個展と銘打って自分自身を素材にした〝研〟究をおこないます。極私的な年表をお見せするという野暮を、どうか数え年50の誕生日とクリスマスに免じてお許しください。
谷本研