牛島光太郎(1978年・福岡県生まれ)は、一見すると無関係のようにも思える「もの と ことば」を組み合わせることで、そこに「ものがたりの気配や予感 “のようなもの”」をつくりだす作品展開を続けてきました。
牛島の代表作ともいえる『scene』シリーズ(2003〜)では、日常生活の中でとりとめもなく浮かんでくる場面や風景、出来事などを切り取り、それらを「もの と ことば」でつなげることで、展開や結末などが一切ない「シーン」をつくりだすことに取り組んでいます。また、刺繍された文字によるボリュームのある「ことば」と「もの」の組み合わせによる『意図的な偶然 / intentional accident』シリーズ(2008〜)は、一見すると無関係な距離にも見えるそれらが、いつしか関係するような予感を鑑賞者に抱かせます。
ギャラリー・パルクでは2014年以来、8年ぶりの個展となる本展では、この『意図的な偶然』シリーズや『組み合わせの方法』シリーズの過去作品とあわせて、「もの と ことば」を組み合わせる方法を展開させた新作『同意のない出会い』のインスタレーションを展示いたします。
また、牛島によって 「え と ことば」 をクロッキー帳の上に組み合わせた作品『一枚物語』シリーズをあわせて展示いたします。
『一枚物語』は牛島が日常で気になっていた絵と言葉を用い、それらを組み合わせることで画面に絶妙な関係をつくりだすもので、一日一枚、6年以上に渡って描き溜められたこの作品は、書籍『一枚物語』(アリエスブックス刊/2020年/192頁)に纏められて出版されています。
このシリーズについて牛島は、
"「イメージ」と「テキスト」が説明し合わないような作品を描き始めました。描き始めると、「イメージ」と「テキスト」が適切に説明し合わない関係をつくるのが、簡単ではないことが分かりました。相性の悪い2人の人間に、居心地の良い親密な空間を見繕うような繊細な作業です。制作にあたり、新聞や雑誌、映画やニュースなどで見聞きした場面や、日常生活で居合わせた場面をベースにしました。"(牛島光太郎 *『一枚物語』あとがきより)
と語ります。なるほど、牛島によって描かれた「え と ことば」は、一見すると噛み合っているようでどこかズレているような関係にあり、鑑賞者はそのチグハグを結んだり、解きほぐしたりするように想像をもって画面に物語を探します。しかし、目の前のその画面をフィルムの一コマ(小さな物語)とするならば、ではそのコマの“前後”を想像してみようとすると、なぜか全体(大きな物語)を掴まえることができなくなってしまうのではないでしょうか。「一枚物語」は、確かにその一枚のクロッキー帳の上にのみ物語を発見(想像)させているといえます。
本展は書籍『一枚物語』に所収された作品の原画とともに、牛島が日々に描き溜めた「たくさん」の「一枚一枚」を一堂に展示するものです。また『意図的な偶然』や『組み合わせの方法』、『同意のない出会い』などの牛島作品をあわせて体験することにより、ひとつの固定した物語をつくるのではなく、「なにか と なにか」の関係によって物語の生じる状況をつくり出す、牛島作品に通底する魅力をお楽しみください。
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