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Exhibition info

Gallery PARC Art Competition 2019 #01_2F

部屋と外 / a room and outside
加藤舞衣

2019.7.5. ~ 7.21.

Exhibition View

9 images

Statement

私の作品に描かれているモチーフは、道端に落ちていた踏み潰された花びらや誰かが捨てた空き箱やビニール袋、壁に貼られたままになって長年放置されていたテープ、使われた後のガーゼやほつれた糸などである。自作の中で一番表現したいことは、物の在り様であり、支持体の中に時間が流れている様な景色と空間である。物本来を見ることに焦点を当てて制作を進めていく中で、「物は時間の経過や自然の力や人間の力で形や色が変化していっている」ということに興味を持った。自作が目指しているのは、物そのものを主役とし、自分自身の感情や想いよりも、物の存在をダイレクトに見せることである。そのため、「インク=物」「紙=空気」に見立てて、物と空気の溶け合いを「 紙とインクの対話」で表現している。

加藤 舞衣

Q&A

-本公募に応募した理由について

 大学院を卒業して社会人となるタイミングで展示をやりたいと思って応募した。大学院でいろんな展示に参加したのと自分の中で何が作りたいかがはっきりしてきたので、今の時期に個展をやって展覧会として一度形に起こしてみたかったから。パルクは空間が特殊で一癖あるけどそこがいいなと直感的に思った。

 

-今回の展覧会について簡単に説明ください

 物に刻まれた時間に興味がある。道端に落ちている潰れた花びらやゴミ、使われてほつれている布や糸、壁の傷やテープの跡、、、そういったものに興味を持ち、今まで描いてきた。これらのモチーフのどこに興味があるのか考えた結果、私は物から感じる人の痕跡、そして使われている時間から現在私が物を見ている瞬間までに流れている時間なのだと気付いた。痕跡というものが私の目線を通してどういう風に見えているのか、と鑑賞者が私の作品を見たときの感覚が重なった時に何が起こるのかを見て見たい、と考えている。

 

-今回の展覧会(作品)について、目論見・挑戦・希望など自身にとってのポイントを教えてください

 描かれているモチーフの特性を考えて展示をしたい。物には物が存るべき場所が必ずあると最近気づいた。在るべき場所に展示することで、作品の周りに空間が生まれるのだとこの間大学の先生の展覧会を観に行った時に気づいた。展示の固定概念とか平面だからとか考えず、物と場所のことを考えて展示をしたい。学生の時は空間を埋めるという考えにどうしてもなってしまっていたけど、今回は展示スペースに空間を生むようにしたい。

 

-現在のメディア(素材や技法、表現方法など)はどのような理由で選択したものか

 版画専攻を選んだ理由は特になく、高校生の時そこまでやりたいことがなかった。精華大学の版画コースはブックアートや紙造形、デジタルなどができるから入学してからやりたいことを探せそうだと思ったから。リトグラフを選んだ理由はインクの質感が油性なのでこってりしていて、刷られている紙の質感との差が感覚的に好きだったから。リトグラフを現在まで用いて制作している理由は自分と作品とモチーフの距離感が取りやすいから。リトグラフはイメージを起こす過程と描画、製版、刷りと作業的に制作していく課程と作品として完成する時が分かれている。制作を作業的にこなすことで自分の思考が絵の中に入り込まない、自分自身と作品が分離しているところが制作しやすい。

 

-現在までの作品に通底する問題意識や興味など

 興味は、物の痕跡というのが大きなキーワードで、痕跡の中に流れている時間や人の跡。私は知らないことや人が物には刻まれていて、見えないけどストーリーが見えるような感覚になること。問題意識は日常の中で気づく時間が減っていること。私自身大学院を卒業して働くようになってから学生の時のように道を歩いてる時にこれは面白い物が落ちているとかあの看板は面白いとかこの花は綺麗だとか気づきづらくなってしまった。私の作品はみんな見ている物だし知っている物だけれども見ていることに気付いていないような物をモチーフにしている。ある意味今の時代に良くも悪くも合っているなと自分でも感じている。

 

-今後の活動の中で目指したい、取り組みたいポイントなど

 版画の枠組みを超えるということがどういうことなのか、何をしたら超えれるのかがまだ良くわかっていない。私は作品の周りに空気が生まれるようなものがリトグラフで作りたい。版画の枠組みを超えることと自分がやりたいことは直結していると思うので、制作しながら考えていきたい。公募展には積極的に出したい。

 

-作品をつくることはどういうことか

 社会に対して問いかけること。

 

-作品を見せることはどういうことか

 私個人のものではなくなること。作品を目に通したら鑑賞者のものにもなる。

About

 本展は広く展覧会企画を公募し、厳正な審査により選出されたプランを展覧会として実施する、コンペティション「Gallery PARC Art Competition 2019」の採択プランによる展覧会です。2014年から毎年開催により6回目を迎える本年は、応募総数64プランから、平田剛志(美術批評)、勝冶真美(京都芸術センタープログラムディレクター)の2名の審査員を交えた厳正な審査により、採択された3つの展覧会を前期・後期に渡って開催いたします。

 

 3フロアに渡る展示室を持つPARCの空間を活かした展開として、本年は前期となる7月5日から7月21日までの[#01]では、2階展示室で加藤舞衣による個展「部屋と外」を、4階展示室で坂口佳奈・二木詩織による展覧会「キャンプができたらいいな。」を同時開催することで、2つの個展を構成します。また、後期となる7月26日から8月11日までの[#02]では、パルクの全フロアを会場に、洪亜沙による個展「アンバー・ランド」を開催いたします。

 

 

展覧会について:加藤舞衣

【 展覧会コンセプトやテーマ 】

自作の中で一番表現したいことは、物の在り様であり、支持体の中に時間が流れている様な景色と空間である。日常生活において、時間の経過が感じられるもの(朽ちた花びらや道端に捨てられたゴミや壁に貼られたテープ、ほつれたガーゼなど)をモチーフに制作してきた。 私の選択しているモチーフは、誰もが日常生活において目にはしているが、目にしていることに気づいてない、忘れ去られてしまっているものである。道端に落ちていたものシリーズでは、不特定多数の人や自然の力で朽ちていったものを描いている。私が見かけた場所から明日にはもうなくなっているかもしれないようなもの、そこにあることに気づいている人があまりいない。しかし、みんなどこかでみたことあるようなものである。そういったものを絵画にすることで鑑賞者は何を感じるのか。
私が使っていた場所を、共有して使っていた人たちの痕跡や性格、手癖が違う場所に貼られて、作品を見る人がいて、時間が生まれる。自作をきっかけに、新たなストーリーが生まれるような展示にしたい。

 

【 プラン採択、実施にあたってのコメント 】

今回大学院卒業後初めての個展をさせていただくこととなりました。大学学部卒業前~現在にかけて、私は支持体である紙の白を空気に見立て、その中に物が存在している様子、情景を版画のリトグラフを用いて描いています。私が選択しているモチーフは道端に落ちている花びらや潰れた空き箱、ほつれた糸や使い古されたガーゼ、壁に貼られたままのテープ跡などです。これらのモチーフに共通してみられるのは「そこにあるけどないもの」ということです。道を歩いていてそこに物が落ちていると気づかず、踏み潰していった人や、部屋を過去に使っていた人の痕跡がそれらのモチーフからみられます。人の痕跡、そこにあったという事実を丁寧に描き、「部屋と外」の空間を作り出します。