-本公募に応募した理由について
大学院を卒業して社会人となるタイミングで展示をやりたいと思って応募した。大学院でいろんな展示に参加したのと自分の中で何が作りたいかがはっきりしてきたので、今の時期に個展をやって展覧会として一度形に起こしてみたかったから。パルクは空間が特殊で一癖あるけどそこがいいなと直感的に思った。
-今回の展覧会について簡単に説明ください
物に刻まれた時間に興味がある。道端に落ちている潰れた花びらやゴミ、使われてほつれている布や糸、壁の傷やテープの跡、、、そういったものに興味を持ち、今まで描いてきた。これらのモチーフのどこに興味があるのか考えた結果、私は物から感じる人の痕跡、そして使われている時間から現在私が物を見ている瞬間までに流れている時間なのだと気付いた。痕跡というものが私の目線を通してどういう風に見えているのか、と鑑賞者が私の作品を見たときの感覚が重なった時に何が起こるのかを見て見たい、と考えている。
-今回の展覧会(作品)について、目論見・挑戦・希望など自身にとってのポイントを教えてください
描かれているモチーフの特性を考えて展示をしたい。物には物が存るべき場所が必ずあると最近気づいた。在るべき場所に展示することで、作品の周りに空間が生まれるのだとこの間大学の先生の展覧会を観に行った時に気づいた。展示の固定概念とか平面だからとか考えず、物と場所のことを考えて展示をしたい。学生の時は空間を埋めるという考えにどうしてもなってしまっていたけど、今回は展示スペースに空間を生むようにしたい。
-現在のメディア(素材や技法、表現方法など)はどのような理由で選択したものか
版画専攻を選んだ理由は特になく、高校生の時そこまでやりたいことがなかった。精華大学の版画コースはブックアートや紙造形、デジタルなどができるから入学してからやりたいことを探せそうだと思ったから。リトグラフを選んだ理由はインクの質感が油性なのでこってりしていて、刷られている紙の質感との差が感覚的に好きだったから。リトグラフを現在まで用いて制作している理由は自分と作品とモチーフの距離感が取りやすいから。リトグラフはイメージを起こす過程と描画、製版、刷りと作業的に制作していく課程と作品として完成する時が分かれている。制作を作業的にこなすことで自分の思考が絵の中に入り込まない、自分自身と作品が分離しているところが制作しやすい。
-現在までの作品に通底する問題意識や興味など
興味は、物の痕跡というのが大きなキーワードで、痕跡の中に流れている時間や人の跡。私は知らないことや人が物には刻まれていて、見えないけどストーリーが見えるような感覚になること。問題意識は日常の中で気づく時間が減っていること。私自身大学院を卒業して働くようになってから学生の時のように道を歩いてる時にこれは面白い物が落ちているとかあの看板は面白いとかこの花は綺麗だとか気づきづらくなってしまった。私の作品はみんな見ている物だし知っている物だけれども見ていることに気付いていないような物をモチーフにしている。ある意味今の時代に良くも悪くも合っているなと自分でも感じている。
-今後の活動の中で目指したい、取り組みたいポイントなど
版画の枠組みを超えるということがどういうことなのか、何をしたら超えれるのかがまだ良くわかっていない。私は作品の周りに空気が生まれるようなものがリトグラフで作りたい。版画の枠組みを超えることと自分がやりたいことは直結していると思うので、制作しながら考えていきたい。公募展には積極的に出したい。
-作品をつくることはどういうことか
社会に対して問いかけること。
-作品を見せることはどういうことか
私個人のものではなくなること。作品を目に通したら鑑賞者のものにもなる。