本展『Self-Dual』では、2019年に制作した新作を発表します。ひとつは2015年より取り組んでいる「pLastic_fLowers」シリーズの延長線上にあたり、その最新作となる「pLastic_fLowers Ⅲ」。もうひとつはまったく新しいシリーズとなる「PP」からの作品です。
「pLastic_fLowers Ⅲ」は、机上に置いた花瓶に活けられた花とカメラとの間に透明な板を立て、そこに花の様々な角度からの「見た目」をドローイング(あるいはペインティング)し、最後にペイントされた透明な板越しに花を重ねて撮影する手法によるものです。花は視界に入った瞬間に、それが花であると認識されますが、ここでは、花の像と絵画(ドローイングやペインティング)を同一の写真表面上に提示することによって、その反射的な認識のプロセスを意識的に引き延ばすことを試みています。
「PP」は、カンバスに描いたアブストラクトなペインティングの上に、様々な色に露光された写真(印画紙)を貼ったものです。抽象絵画の歴史を視野に、色彩や構図を直感的に決定しながら描く絵画制作は、まるで即興的なスナップショット写真の撮影のような感覚を持つものでした。一方、その上に貼り付けられた写真は、暗室での手作業により一枚一枚の色彩や露光時間を注意深く調整したもので、それはまるでカラーフィールドペインティングを描くような感覚を持つものでした。 色面となったそれらの写真は(しばしばカッティングされ)ペインティングによる像に呼応したり、抵抗したりしながら、慎重かつ意図的に配置していきます。この作品では、「絵画」「写真」というメディウムを維持しながら同一の作品上に共存することで、それらが逆転と回復を繰り返すことで、同時に互いを解体していくことを試みています。
本展『Self-Dual』では、絵画と写真の二重性を探求する「pLastic_-fLowers Ⅲ」と「PP」シリーズをあわせて展示することで、それぞれの視点・視野の違いを検証する機会であるとともに、この二つのシリーズ自体が時に重なり合い、時にズレることで、そこに「二重性」という構造の構築を目論むものです。
田中 和人